君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

2020年3月14日 気仙沼線BRT・大船渡線BRTダイヤ改正が発表

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工事中の気仙沼線BRT・赤岩港駅。2020年3月14日開業予定

1月22日、気仙沼線BRT・大船渡線BRTのダイヤ改正が発表されました。改正日はJRグループ全体と同じ3月14日です。

JR東日本ニュース 気仙沼線BRT・大船渡線BRTダイヤ改正について
https://www.jr-morioka.com/cgi-bin/pdf/press/pdf_1579670434_1.pdf

JRグループで一斉に発表されたのが昨年12月13日ですので、それからは1ヶ月以上遅れての発表となりました。

気仙沼線BRT・大船渡線BRTでは、実はダイヤ改正は年中行事なのですが、新駅設置などのBRT以外にも波及するような大きめの改正は、やはり3月になるようです。

内容について言及する前に、今回のダイヤ改正で注目していた点について触れておこうと思います。

「鉄道事業廃止」の影響はなかった

昨年秋ごろから、気仙沼線BRT・大船渡線BRTに関する様々な動きがありました。

  1. 2020年春に気仙沼線BRT松岩~不動の沢間の専用道供用開始、赤岩港駅開業予定*1
  2. 2020年春に大船渡線BRTで新駅が4駅開業予定*2
  3. 2020年春、気仙沼市立病院駅で減便予定*3
  4. 気仙沼線(柳津~気仙沼)、大船渡線気仙沼~盛)鉄道事業廃止届提出*4
  5. JRが鉄道事業廃止日の繰り上げ(2020年4月1日)を提示、沿線自治体から異論なし*5

世間的に注目を集めたのは、何といっても4.の鉄道事業廃止届のニュースでした。しかし、5.の脚注に挙げた東海新報の記事で、下記引用の通り大船渡市・陸前高田市の担当者が述べているように、沿線自治体にとっては以前にBRTでの本復旧を受け入れた時点で話は終わっていて、今回の鉄道事業廃止はただの手続き論に過ぎないはずです。

大船渡、陸前高田両市は欠席。その理由について、大船渡市商工港湾部は「BRT本復旧方針を受け入れる際に、JRに対する要望書を提出し、持続的な運行確保の確約があったほか、サービス水準維持、さらなる利便性の向上などについても前向きな回答があった」、陸前高田市市民協働部は「BRTの運行継続、鉄道に基づく運賃算定、BRTの駅をJRの駅として位置づける、という3項目を要望し、すでに確約されていることから、改めて公の場で意見を述べる必要はないと判断した」などとする。

なので普通に考えれば、現状のダイヤをベースに1.2.3.を反映したダイヤが出てくるということになるのですが、鉄道事業廃止ということがどう影響するのかは、正直想像がつかない部分がありました。

一部で懸念されていたように、鉄道事業廃止によってサービス内容が大きく変わるのであれば、新駅開業や減便がある「2020年春」とは3月14日ではなく4月1日(2日?)であり、その時期に鉄道事業を廃止することを逆算して昨年11月に廃止届を提出したのではないか、というようにも考えられるためです。

2019年12月13日のJRグループダイヤ改正リリースに気仙沼線BRT・大船渡線BRTが含まれていなかったのは、5.の河北新報の記事にある「国は聴取内容を踏まえ、29日(注:1月29日)までに繰り上げの可否をJR東に通知する。」という部分、これを待って1月30日に発表するためではないか、ということも考えていました。

しかし、ふたを開けてみれば改正日はJRグループと同じ3月14日、改正内容は1.2.3.を反映したもの+αということで、それらはまったくの杞憂なのでした。

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国道45号と並走する気仙沼線BRT。不動の沢~気仙沼

ダイヤ改正内容を見る

以下、ニュースリリースをもとに今回のダイヤ改正について見ていきたいと思います。

大船渡線BRTから気仙沼線BRTへの直通運転開始

平日ダイヤの上り1便のみですが、通学の利便性向上のため、大船渡線BRTの鹿折唐桑駅から気仙沼駅を経由し、気仙沼線BRTの本吉駅まで直通運転を開始することになりました。

今回、ひとつこれまでの殻を破ったのがこの点になります。

これまで、気仙沼線BRTと大船渡線BRTの直通運転は行われておらず、気仙沼駅での乗り継ぎが必要でした。

しかし、気仙沼市の市内交通としてみれば、気仙沼線BRT・陸前階上~大船渡線BRT・八幡大橋(東陵高校)ぐらいは直通できれば便利になるし、広域的にみれば、登米市南三陸町から大船渡市までをつなぐ縦軸のルートとしても利便性が向上します。

一方で、気仙沼線BRTはミヤコーバス、大船渡線BRTは岩手県交通に運行業務を委託していたり、車内の運賃取り扱いも気仙沼線大船渡線で分かれていたりと、単に専用道が繋がっているからといってそう簡単に実現できるものではなかったのも確かです。

そのあたりをどう乗り越えたのかは気になりますが、ともかく若干ながら気仙沼の壁を越えたということで、今後、直通運転が拡大すればさらに便利になるのではないか、と期待したくなります。

松岩~不動の沢駅間をBRT専用道で運転

これに関しては、工事状況を1月中旬に見てきました。

a-train.hateblo.jp

リリースには

 松岩~南気仙沼駅間に赤岩港駅を新設し、上家を整備します。

とあります。

後で紹介する大船渡線BRTの陸前今泉駅で、「待合室と上家を整備します。」と書かれているのとは明確に差があり、待合室、それとおそらくトイレは設けられないものと思います。

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工事状況を見た時に、待合室を置くスペースがなさそうと思っていたのですが、予想した通りでした。

専用道に開業した駅でいえば、気仙沼線の岩月駅、大船渡線の大船渡魚市場駅がこのパターンになります。各駅の設備等は下記記事をご参照ください。

www.jreast.co.jp

柳津~気仙沼駅間の到達時分を 2 分短縮

これは上記の専用道供用開始によるもので、松岩~気仙沼間の現状が16分(日中の気仙沼市立病院を経由しない便)のところ、14分に短縮されている効果がそのまま出ています。

また、現状は平日朝の気仙沼行きで、岩月~気仙沼間は休日ダイヤよりも3分長い所要時間が設定されていますが、完全に専用道に移行する効果でこれもなくなります。

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気仙沼線BRTの現行ダイヤの一部。土曜・休日ダイヤで時刻変更がある。

(出典:https://www.jreast.co.jp/railway/train/brt/pdf/data_kesennuma.pdf <2019年11月1日改正ダイヤ>)

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同時間帯の改正後のダイヤ(ニュースリリースより)。土曜・休日ダイヤの時刻変更がなくなっている。
気仙沼駅方面への日中帯のダイヤを分かりやすく

リリースにある通り、本吉~松岩間で概ね30分間隔での運転になるとのこと。気仙沼市立病院経由を減らすことで、よりパターンに近いダイヤを組めるようになったということでしょう。

本当は完全にパターンダイヤになるのが望ましいと思うのですが、前谷地での石巻線との乗り継ぎ、柳津での気仙沼線列車との乗り継ぎ、気仙沼での大船渡線列車や大船渡線BRTとの乗り継ぎなど、考慮すべき要素が多く、なかなか難しいのでしょうね。

ただ、昨年10月ごろは、本吉駅で見ると柳津方面から来る気仙沼行きの5分後に、本吉始発で病院経由の気仙沼行きが発車するようなダイヤになっていて、しかも台風19号の影響で柳津方面からのバスが遅れがちで2台が続行運転になったりして、これはさすがに意味がないのでは……などと思っていました。

そこから見ると、よくここまで整理したものだ、と思えるダイヤになっています。

気仙沼市立病院駅へ乗り入れる本数を見直し

内容は既報通りで、上下各7本から上下各3本になります。当然、その分は赤岩港経由に振り向けられるはずと思っていて、実際その通りになるのですが、鉄道事業廃止との絡みで、実は病院経由の減便はそのまま本数の削減になるのではないか、という危惧もないわけではありませんでした。

なお、乗り入れを取り止める便はBRT専用道を運転(赤岩港駅を経由)し、本吉~気仙沼駅間の速達性が向上します。

この辺は、どんなネガティブな内容でも、別のポジティブな面を見つけて強調する、いかにもダイヤ改正文学という感じがしますね。 

長部~奇跡の一本松駅間に陸前今泉駅を新設

既報通りですが、以前は「ルート調整中」となっていたのが、今回は具体的なルート図が出てきています。

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大船渡線BRT・陸前今泉駅の予定地付近

以前に、たまたまこの駅付近を何気なく撮影していました。右上の電柱の先あたりが駅の場所になりそうです。右側は住宅や小学校などが移転した高台になります。

左に並走するのは三陸自動車道。その先の大きく切り開かれたことを示す斜面がとても印象的でした。

また、以前は運行形態について情報がありませんでしたが、今回は、この駅を経由するのは一部の便ということが明らかになっています。

陸前高田市内のルート図がまたややこしくなる、という感もありますが、この辺は後述します。

大船渡市内のBRT専用道上に大船渡丸森駅・地ノ森駅・田茂山駅を新設

これも既報なのですが、気になったのは以下の部分です。

なお、駅設備の詳細については、決まり次第改めてお知らせします。

赤岩港は上屋、陸前今泉は上屋と待合室、と明記されているので、そのあたりの設備が決まっていないということなのでしょう。おそらく、待合室とトイレを設けるかどうか、というあたりでしょうか。

今年元旦の時点で、まだ工事をしている形跡がないのが気になっていたのですが、設備が決まっていないとしたら、それが理由か、ということで納得です。

なお、ダイヤ改正文学の嗜みとして、これによる所要時間増には言及されていませんが、3駅が追加される細浦~盛間で1~2分の所要時間増となります。

気仙沼駅における乗り換えの待ち時間を改善

大船渡線BRTの気仙沼発盛行き最終を、22:20発から22:10発に繰り上げることで、大船渡線列車からの乗り継ぎ時間を17分から7分に短縮するというもの。

これはもうダイヤ改正文学の典型ですね。普通はこれを「終発の繰り上げ」と言い、サービスダウンのはずなのですが、それを「乗り継ぎ時間短縮」という別の面に着目して強調する手法です。

ただ、終電に敏感な都市部と違って、終発を少し繰り上げたから困る人がいるのかというと、実はそんなにいない気もするので、これはこれでいいのかもしれません。

新たに種別を表記し、系統を分かりやすく

大船渡線BRTで、陸前今泉(新駅)、高田高校前、高田病院の3駅を経由しない便に「快速」という種別を表記。

今まで、駅や車両には種別表記はなかったのですが、JR東日本の主要線区以外の情報を提供する「どこトレ」では種別表記が行われていました。

doko-train.jp

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JR東日本の「どこトレ」での大船渡線BRTの時刻表。「快速」「普通」の種別表示がある。

この中途半端な状態でずっとやっていくのかなと思っていたのです。

ただ、下の写真を見れば、なぜこのタイミングで「快速」表記を導入するのかも推測が付きます。

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気仙沼駅へ入線する大船渡線BRT。「高田高校前」「高田病院」の表示がある。

これまで、高田高校前・高田病院を経由する便は、上のように駅名を表示していました。

これに今回、陸前今泉駅が加わることになるので、もうスペースが足りない。仮にあっても3駅も表示するとかえって見にくい。なので、これを「普通」、経由しない便を「快速」と表示することで区別しよう、ということなのだと思います。

主要駅間の運賃

気仙沼市立病院駅で、外方駅(気仙沼側からは松岩、柳津側からは南気仙沼)の運賃を適用していたのを、駅として独自に運賃を設定するようになったこと以外は大きな変化はありません。

鉄道事業廃止によって、もし変わるとすればまずはここかと思っていました。

以前に下記記事で書いた通り、特に大船渡線BRTの運賃は、実際の経路が鉄道時代と大きく乖離しているにもかかわらず、「鉄道の経路上にすべての駅がある」という想定で計算されるため、だいぶいびつな設定になっている部分があります。

a-train.hateblo.jp

仮に賃率は同じとしても、これをバスの経路にのっとった運賃に見直すということはあり得るのかなと考えていたのです。

運賃がそのままということは、青春18きっぷなどの企画きっぷの適用も、当面はそのままということになるのでしょう。

 

いずれにしても、鉄道事業廃止の影響はないということで、とりあえず安心しました。

新しい駅や、「快速」表示のBRT。新しくなったBRTの姿もまた見に行きたいと思います。

ダイヤ改正後のBRTルート図(2020/3/3追記)

このダイヤ改正を反映したルート図を作成したので、あわせてご覧ください。

a-train.hateblo.jp

a-train.hateblo.jp

 

*1:2019年10月9日:JR東日本ニュース 気仙沼線 BRT 新駅の設置について(https://www.jr-morioka.com/cgi-bin/pdf/press/pdf_1570598238_1.pdf)、気仙沼線 BRT「南気仙沼駅」の専用道上への移設に向けた駅舎の工事について(https://www.jr-morioka.com/cgi-bin/pdf/press/pdf_1570598385_1.pdf)

*2:2019年10月9日:JR東日本ニュース 大船渡線 BRT 新駅の設置について(https://www.jr-morioka.com/cgi-bin/pdf/press/pdf_1570598533_1.pdf)

*3:2019年11月8日:河北新報 気仙沼線BRT「病院駅」経由減便へ 来春からJR東

*4:2019年11月12日:JR東日本 気仙沼線(柳津~気仙沼間)及び大船渡線気仙沼~盛間)における鉄道事業廃止の届出について(https://www.jreast.co.jp/press/2019/20191112_ho01.pdf)

*5:2020年1月9日:東海新報 予定日繰り上げも提示 BRT区間の鉄道事業廃止 JRが運輸局の意見聴取で(https://tohkaishimpo.com/2020/01/10/277238/)、河北新報 気仙沼、大船渡両線の沿線自治体 BRTをおおむね評価 東北運輸局、鉄道廃止で意見聴取)