君と、A列車で行こう。

旅行などで訪問した場所に関することを綴るブログ。鉄道などの交通に関することが多めです。主にX(旧twitter)では書きにくいような長文を書きます。当面は大阪・関西万博がメイン。かつてはシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」のことをメインに書いていました。

【大阪・関西万博】大屋根リングは「朽ちていくレガシー」にしたらどうだろう

放置された大屋根リングのイメージ(現実の写真をもとにGrokにて生成)

この記事は、下記の読売新聞の報道記事を踏まえて考えてみたものです。

www.yomiuri.co.jp

大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」を、閉幕後もレガシーとして残せないかという話です。

現在、吉村大阪府知事が提唱しているのが、全周2kmのリングのうち、水面上にある部分を中心に600m*1を残せないか、という案です。

これは夢洲の開発計画とも関係があって、夢洲は、東側がすでにコンテナヤードとして使われていますが、中央部は3つのエリアに分かれ、それぞれ開発を進めていくこととなっています。

その3つのエリアは北から第1期区域、そして第2期・第3期区域となっており、第1期区域は現在、IR(統合型リゾート)の開業に向けて整備が進められています。

参考として下記のページをご覧ください。

www.pref.osaka.lg.jp

夢洲の開発区域の区分(上記大阪府Webサイトより引用)

万博会場の主なエリアは第2期区域に属しており、また、西ゲートやその周辺のエリアは「グリーンテラスゾーン」に属しています。

一方、会場南側にある、水上ショーが行われるウォータープラザや、リングの南側に広がる「繋がりの海」は第3期区域となり、この水上部分のリングは第3期区域にあるということになります。

吉村知事の提案は、第2期区域にあるリングは跡地開発のために撤去せざるを得ないが、第3期区域にあるリングは、第3期のまちづくりが始まるまで、当面10年程度は残置させてはどうか、というものです*2

ただし、その維持費用は10年間で17億円という試算を万博協会が行っており、残すとしたら費用を誰がどう負担するかが問題となっています。

「万博のレガシー」については、2度目に万博を訪ねた経験から、本当のレガシーは形として残るものではないのでは? ということを以前に書きました。

a-train.hateblo.jp

その考えは今も変わっていませんが、一方で、

  • リングがあることで跡地開発に付加価値が生まれる
  • その付加価値に対して跡地を訪れる人から料金を徴収できる
  • 徴収した料金で維持費が賄える

ということであれば残してもよいのでは、と思います。

具体的な例を1つ挙げれば、第2期区域の開発について、一部をサーキットにする案があります。それが実現するようであれば、リングの上を俯瞰的な観覧席として使用することで付加価値を生み出せるかもしれません。

 

以前からそんなことを考えていたのですが、最初の読売の記事を読んで別の形でふと思いついたのは、どのみち10年程度という期限付きなのであれば、「朽ちていくレガシー」としてもよいのではないか、ということです。

そのイメージを、実際の大屋根リングの写真をもとにX社のAI「Grok」に作成してもらったのがタイトルの画像です。

Grokが生成した2枚の画像

安全のために周囲30mほどは立ち入り禁止として、基本的に維持費をかけず、水上部分のリングは放置して朽ちるに任せます。

やがて柱や梁に植物が絡まり、周囲を鳥が飛び交うような風景になるかもしれません。それは、「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマを体現する、新たな姿となるのではないでしょうか。

 

このアイデアの下敷きになった過去の見聞がいくつかあるので、それを挙げておきたいと思います。

宮城県女川町で、東日本大震災を伝承するための震災遺構として保存されている交番施設があります。鉄筋コンクリートの建物が横倒しで流されるという津波の威力を示すものですが、町としては経年劣化を許容し、100年程度の保存を目指す「見守り保存」の考え方を打ち出しています。

遺構の周囲には植物が生い茂っていて、私が現地で見てから4年ほどたった現在では、また異なった姿になっているのではないかと思います。

宮城県女川町の震災遺構「旧女川交番」(2021年5月撮影)
震災遺構の周囲に生い茂る植物(2021年5月撮影)

同じ宮城県気仙沼市にあるリアス・アーク美術館には、屋外の一角に無造作に積み上げられたような多数のブロックが置かれています。

これは、風雨に晒されて崩れていくことを前提とした作品で、ただ積み上げられてそして崩れたブロックですが、しばらく見ていると古代都市の廃墟のような感じでいろんな表情が見えてきて、こんな表現もあるんだと感じ入った記憶があります。

宮城県気仙沼市のリアス・アーク美術館で屋外に展示されている作品(2022年3月撮影)

3つ目は、この大阪・関西万博に出展している「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」の展示で、未来の住宅デザインについて、「不要な部分は風化させて家を再構築する」という大阪公立大学の学生のアイデアが示されていたことです。そんなに都合よく風化するのかと実現性に疑問は感じるものの、なるほどそういうアイデアもあるのか、と感心しました。

「風化によって再構築される家」のアイデア(大阪・関西万博「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」より)

課題としては、高さ20mもある木造構造物の強度が、手入れをせずにいつまで保てるのか、ということがあります。

柱や梁がもろくなり、一部は崩れるのを許容するとしても、それで全体の強度が落ちた場合、台風などの強風でまるごと飛ばされてしまうような危険性もあるかもしれません。

安全性をどこまで保てるのか検討する必要はありますが、費用の問題をクリアする案としては、なかなかありなのではないかと思っています。

*1:この記事を公開したのとほぼ同じタイミングで、350m保存の案に変更すると報じられました。

www.yomiuri.co.jp

*2:詳しくは下記のYouTubeの動画をご覧ください。

www.youtube.com