4月13日に開幕した大阪・関西万博。
期間中いつでも入場できる「通期パス」を買ったので、こまめに訪ねていろいろと巡りたいと思っています。
10度目の訪問は5月14日の水曜日。仕事終わりに軽く訪ねたという日でした。
- ポーランドの国立民族合唱舞踊団「シロンスク」と中島みゆき「時代」
- フィリピンパビリオンのテイクアウトで夕食
- 通信の未来を提示するNTTパビリオン。侮れないIOWNの実力
- 5月14日のまとめ:「IOWN」はイベントの東京一極集中を変えられるのか
ポーランドの国立民族合唱舞踊団「シロンスク」と中島みゆき「時代」
この日は19:00から、ポーランド国立民族合唱舞踊団「シロンスク」のステージが予定されていました。
シロンスクのステージは、5月3日に見る予定を立てていたのですが、前のイベントが予想よりかなり長かった影響で断念していたのでした。
場所は東ゲートから大屋根リングをくぐったところにある「ポップアップステージ東内」。開始少し前に着いたら、すでにステージ周囲には人だかりができていましたが、どうにか見る場所を確保できました。






合唱や舞踊など華やかなパフォーマンスが繰り広げられた後、改めて全員がステージに並ぶと、合唱で歌われたのは中島みゆきさんの名曲「時代」でした。5月3日のステージでこの曲が歌われたという情報を見ていて、とても楽しみにしていました。
冒頭の「今はこんなに悲しくて」が歌われたところで、観客から拍手が起こっていました。
後で調べると、これまでもシロンスクの日本での公演ではたびたび披露されている「持ちネタ」なのだそうです。
日本語で歌われる名曲はいくつもあって、その中でなぜ「時代」なのだろう? ということを考えたりします。
検索してもその理由は見当たらず、ChatGPTに訊いてみても明確な回答はなかったのですが、私とAIの考えが一致したのは、数々の戦争で蹂躙され、戦後も東西冷戦に翻弄されたポーランドという国において、現状に対するある種の諦観のようなものと、先の時代への希望を描いた歌詞が共感を呼びやすかったのではないか、ということです。実際のところはよくわからないというしかないのですが。
後半はトリオ、ペア、あるいはソロという少数でのパフォーマンス。小さいポップアップステージで、30分という短い時間でしたが、多様なパフォーマンスを堪能できたステージでした。
シロンスクは5月3日のステージの後、ポーランドパビリオンでのシロンスク県ウィークでのパフォーマンスもあり、この日が万博での2週間の最後の日(本当の最後のステージはこの後に20:00から行われた)だったそうです。




フィリピンパビリオンのテイクアウトで夕食
シロンスクのステージの後、予約していたNTTパビリオンまでは少し時間があるので、近くで手早く夕食をいただきます。
東ゲートからリング内に入ったところで手早く食べられる選択肢としては、アメリカパビリオン、フィリピンパビリオン、マレーシアパビリオンといったあたりになります。フランスパビリオンは行ったことがないのだけど、なんとなくすごく行列ができているイメージ。とはいえ、一度試してみたいと思います。
今回はフィリピンのテイクアウトから、レレノン・タロン(RELLENONG TALONG)(1,600円)とルンピアン・ピノンド(LUMPIANG BINONDO)(1,200円)を選択。


写真は撮影の時に大きく感度を上げ、現像の時にもかなり明るくしていますが、屋外の真っ暗なベンチで食べたので、実際には何が何だかさっぱり見えない状態で食べてます。
レレノン・タロンは「ナスの豚ひき肉詰め」という説明があり、だからおかず系かと思っていたのですが、メニュー写真の見た目以上にご飯が多めで、食事として充分成り立つ量がありました。
ご飯は、フィリピンではおなじみのウベと呼ばれる紫芋を使った炊き込みご飯のようです。少し甘めの味で、ナスや付け合わせのピクルスともマッチしていたと思います。
ナスのひき肉詰めは、肉を詰めて焼いたもので、瑞々しいナスの中にしっかりひき肉の食感や味が感じられました。単品だと若干淡白な味に思えたのですが、ケチャップをつけて食べるとちょうどいいバランスでした。
これは予想以上の当たりだと思います。今度は明るい時にちゃんと料理を見ながら食べたいです。
ルンピアン・ビノンドは、メニューの説明によれば「ミンチしたエビと豚肉のエッグロール」とのこと。細い春巻きといった感じでしたが、皮の中に具がぎっしり目に詰まっていて、1本1本しっかりと満足感がありました。
通信の未来を提示するNTTパビリオン。侮れないIOWNの実力
夕食の後は、20:15に予約していたNTTパビリオンへ。NTTは「PARALLEL TRAVEL」と題し、同社が推進している次世代通信基盤「IOWN」をメインに出展しています。
パビリオンは3つのゾーンに分かれています。
最初の「ZONE 1」はテーマの提示となる映像。手紙、電報、電話、スマートフォンと、テクノロジーの発達により、人々のコミュニケーションの手段が進化してきたこと、それでも未だに超えられない隔たりがあるということが提示されます。




ZONE 2は、その超えられない隔たりを少しでも近づけるための、様々な技術を用いたパフォーマンスが披露されます。
Perfumeの新曲「ネビュラロマンス」を中心としたパフォーマンスは、上記サイトのアーカイブでも見ることができますが、ここでは3Dグラスを装着し、迫力ある3D映像で楽しむことができます。
もともとは、4月2日に行われたパフォーマンスで、この時、Perfumeの3人は1970年の万博で「電気通信館」があった場所に設けられたスタジオにいて、そのパフォーマンスがこの夢洲のNTTパビリオンにリアルタイムで届けられていたそうです。
映像が凄すぎてかえって全然リアルタイム感がないくらいなのですが、要は、Perfumeのパフォーマンスを周囲のカメラやレーダーなどで3Dデジタルデータ化し、床の振動もデータとして記録。IOWNで夢洲の会場に高速伝送し、加工されたデジタル映像として表現するとともに、振動データもリアルタイムで夢洲で再現するといったことをやっていたようです。
途中で衣装が変わったりするとか意味不明でしたが、デジタルデータ化されたアバターで着せ替えしていたということですね。


次のZONE 3では、Perfumeでやっていた3Dデジタルデータのアバター化を、自分自身で見ることができるというもの。最初に来場者が一人一人全身をスキャンされ(希望しない場合は避けることもできます)、やがてそれがアバターとしてスクリーンに表示されます。人によって未来の自分として表示されたり、過去の自分として表示されたり。たぶんスキャンした画像から年齢を推定しているのでしょう。
そして、そのアバターが歌を歌いだしたり、一部の人の全身アバターが踊り出したりします。
この場所では他の来場者の顔写真が盛大に映像に映されているので、それがないメッセージ部分だけ写真に撮りました。


あくまでこれまで見たパビリオンの中では、ということになりますが、テクノロジーによる未来の可能性を、一番体感できたパビリオンだったように思います。
完全予約制なので難易度は高いですが、特にZONE 2の映像は凄いので必見でしょう。
5月14日のまとめ:「IOWN」はイベントの東京一極集中を変えられるのか
2年前に千葉から大阪に引っ越した時、「東京と大阪どっちがいい?」ということを何人かから訊かれたことがあります。
そのたびに「東京はすごくいい」ということを答えていました。何がすごくいいかというと、日本で1回だけイベントをやるとしたら、その場所はほぼ必ず東京になるのです。
上皇陛下が天皇であられた頃の一般参賀や、今上陛下が即位された際のパレード「祝賀御列の儀」も見に行ったことがありますが、それも最寄り駅まで電車1本、30分ほどで行ける距離だったからでした。
ポーランドのシロンスクが、2週間の万博での公演の最後の日だと知った時、まず思ったのは、「大阪でそんなロングランの公演が行われることってあるだろうか」ということでした。
大阪に来てから、初めて演劇というものを見に行きましたが、その公演は東京で17日、22回にわたって行われたのに対し、大阪では4日間でたった5回だったのです。いや、大阪は公演が行われた分まだマシだったというべきでしょう。
なのでその時は、毎日のように万博会場で国内外の様々なパフォーマンスが行われ、通期パスがあればいつでも見放題というのはなんてすばらしい環境なんだ、ということを思ったのですが、NTTパビリオンを見てからはまた別のことを考えるようになりました。
つまり、イベントが行われるのが東京だとしても、IOWNによるリアルタイム伝送が実現すれば、別の地方にいる人たちもほとんど同じようにそのイベントを見ることができるのではないか、ということです。
IOWNが普及して当たり前の存在になっていくと、いろんなイベントのあり方も変わっていき、東京への一極集中というのも変化していくのかもしれません。
なんなら天皇陛下のリアルタイム3Dアバターが全国各地で表現され、そこからおことばを述べられるようになったりするかもしれません。
万博会場では、開幕日に行われた「一万人の第九」の実現を支えていたり、5/24・25に行われた日本と台湾を結ぶ超歌舞伎を実現していたり、いろんな形でIOWNが活躍しています。2030年には普及を目指しているというIOWNがどんな変化をもたらすのか、期待したいなと思います。