
2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博も、10月13日の閉幕まで残り50日ほどとなりました。
過去の国際博覧会では、会期後半に来場者が急増するという傾向があるそうで、大阪・関西万博もそういう時期を迎えています。
そうした中、今から万博に行こうという人の中には、「開場時間である9:00の来場予約も、パビリオン予約も全く取れない」という方もいるようです。
この記事では、「予約を必死に頑張らなくても楽しめる方法」について考えてみたいと思います。
といっても、テクニック的なことは何一つありません。あくまで心持ちの部分についての個人的な考察です。

前提となる考え方
とはいえ、まずいくつかの留保があります。その点について書いておきたいと思います。
そもそも出遅れている。予約は当然ながら早い者勝ち
そもそも、予約できるということは早い者勝ちということです。
この万博では、最初から10月13日の閉幕日まで来場予約ができました。
そして、早く予約をすればするほど、2か月前抽選、7日前抽選、3日前先着予約といったように、パビリオン予約の機会が多く設けられているのです。
博覧会協会も、様々な形で早期の来場を促していました。全期間使える1日券が大人7,500円なのに対し、4月26日まで入場できる「開幕券」(大人4,000円)、7月18日まで入場できる「前期券」(大人5,000円)など、さまざまなインセンティブがありました。また、5月31日までは一度来場した後、通期パスを割引で買える特典もありました。
そういう中で、今から万博に行こうというのはかなり出遅れています。つまり、以前から予約していた人と同じスタートラインではありません。
また、来場者が増えれば予約の競争率が上がり、予約なしで並ぶにしても時間がかかるようになるのは当然のことです。なので、どう頑張ったところで、来場者が少なく空いていた4月や5月のようにはなりません。あくまで、現状でできる範囲で、ということにしかなりません。
他人との比較ではなく、自分なりに楽しめればそれでOK
5月に書かれて話題になった記事ですが、一度下記の記事を読んでいただきたいと思います。
パビリオンの予約を取って行かないと楽しめないと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
万博は、パビリオンに入った数の競争ではありません。また、人気があるパビリオンが、必ずしもあなたに合うパビリオンとは限りません。逆に、そこまで人気がなくても内容によっては刺さることもあり得ます。
また、パビリオン以外に目を向けるということも重要です。この後でもいくつかのイベントを紹介しますが、基本的には、イベントの方がパビリオンよりもガチで見応えがあるということが多いです。
他人と何かを比べようとするより、その日一日の体験をいかに高められるか、という視点で考える方がよいと思います。
万博は技術展ではない
「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマから、会場は未来的な雰囲気に溢れ、さまざまな最先端の技術を見ることができる、というようにイメージする人もいますが、必ずしもそうではありません。
そもそも、目を見張るような技術を出展できる国はそんなに多くないのです。国際博覧会として多くの国が出展しているのだから、その内容が最先端技術ばかりであるはずがありません。
むしろ、古今東西のさまざまな事物に触れられる、巨大な博物館のように思っておく方がよいでしょう。
公式テーマソングからして「未来見に行こう」と歌っていますが、未来とは現在や過去から切り離されたものではなく、これまでの歴史の延長線上にあるものであって、その延長線をどのように引いていくかという話なのだろうと思います。
振り返りをしよう
万博会場では、予約が取れたところ以外は見られるものを優先して見ていくことになると思います。当然、予備知識もないまま見るパビリオンなども出てくるでしょう。
「そういえばこの国の宗教ってなんだったっけ?」とか、「この料理の食材は何なんだろう?」とか、会場で経験したことについて疑問に思ったことがあれば、後で振り返りをして調べておくと知識として身に付き、より有意義な経験になると思います。
予習や振り返りには、パビリオンによってはバーチャル万博アプリが役に立つこともあります(内容の質はパビリオンによってピンキリで、まったく役に立たないところもあります)。
でも来場予約はとにかく急ごう
会場内は予約なしで並べば入れるパビリオンやイベントはいろいろありますが、入場するには予約が必須です。
手をこまねいているうちにどんどん来場予約の枠も埋まっていきます。予約が取れたとしても12時以降の予約となると、万博を楽しむ時間自体が短くなってしまいます。一番早い9:00の予約はすでに全日程で埋まってしまっていますが、来場予約だけは早めにしておき、遅くとも11:00までの予約は取っておきたいところです。
また、最終的には予約できないことを念頭に置いておくとしても、7日前抽選、3日前先着予約などの機会はできるだけ逃さない方がいいでしょう。
予約なしで、比較的短時間で入れたパビリオン、イベントなど
私がこれまで経験したものから、予約なしで、比較的短時間の待ち時間で入れ、満足感が高かったものを一例としてご紹介します。
全パビリオンを見たわけではないので、言及していないパビリオンやイベントについては、他のさまざまな情報も参考にされるとよいと思います。
ナショナルデー公式式典。国家を代表するガチの式典とガチのショー
万博を象徴するイベントとして、一度は見ることをお勧めしたいイベントです。
万博に参加した各国それぞれに一日、会期中にナショナルデーが割り当てられ、その日には公式式典が行われます。
なお、国家ではなく国際機関の場合は「スペシャルデー」となります。
基本的には予約不要で先着順です。所要時間は1時間(ただし超過することも多い)で、会場東側にある式典会場の「レイガーデン」で着席して観覧できます。

公式式典の流れは以下の通りです。
また、公式式典の他に、大屋根リングの下の通路でのパレード、その他のイベントが催される場合もあります。

この式典の特徴は、1つ目は日本と参加国の大臣等が参加する「ガチの式典」であること。万博を通した日本の外交の一端を垣間見ることができます。会場に座っていて、そのすぐ目の前に何も遮られることなく外国の元首や大臣がいる。こういう経験はめったにありません。

2つ目は、各国それぞれのショーです。どの国も自国の伝統文化に立脚したショーが多く、複数回参加しても多彩なショーが楽しめます。これも参加国が国の代表として用意したもので、それだけにハイレベルなパフォーマンスを見ることができます。


(左=2025年5月18日、ブルガリア共和国 右=2025年6月15日、ブルンジ共和国)
注意事項として、各国の意向により一般参加者は全く参加できないか、立ち見となる場合があります。また、国によっては来場者間の競争率が高くなる場合があります。これは会場に行ってみないとなかなかわかりませんが、以下のような傾向が言えると思います。
- 日本でよく知られた先進国は人気があり、早くから並ばないと入れない可能性が高い
- 日本との関係が深い国は招待者を多く募ることがあり、招待者だけで会場が埋まるので立ち見になってしまう
観覧したい場合は、開始時刻(日によって11:00か16:30のどちらか)の1時間前にレイガーデンへ行くことをお勧めします。11:00開始の場合、来場予約は遅くとも10:00の枠を確保する必要があります。
各国ごとのナショナルデーは下記のページで確認することができます。
なお、ナショナルデーについてはバーチャル万博アプリで、公式のライブ配信を見ることもできます。

大屋根リングの上を歩く。万博会場ならではの風景

この万博のシンボルである大屋根リング。その上段に上がり、少しでも歩いてみるとよいと思います。
高さ12mの周回する回廊からは、会場の風景を一望できます。また、会場には高い建物が少ないため、円周の反対側を歩いている人の姿まで見ることができます。

さらに高さ20mの最上段まで上がると、会場の外の風景を見ることができます。東側の最上段からは大阪の港湾地帯の風景、西側から南側にかけての最上段からは、大阪湾や神戸方面の風景が見えます。

また、後に紹介する「アオと夜の虹のパレード」や、「One World, One Planet.」のドローンショーを見る場所としても適しています。
なお、大屋根リングの上段に上がれるのは21:00まで、最上段へのスロープに入れるのは20:45までです。イベントの開催に伴って、大屋根リングの上に多くの人が集まることが予想される場合は別途規制が行われることがあります。
その他、荒天の時や、雷雲が接近している時は大屋根リングの上段は立ち入り禁止になります。
フィリピンパビリオン。圧巻の18枚のタペストリー

フィリピンパビリオンは、大人気のアメリカパビリオンの隣にあります。
「よりよい未来をともに織りなす」をテーマに織物に特化したパビリオンで、織物をイメージさせる手編みのラタンパネルを用いた外観となっています。
内部で圧倒されるのは、フィリピンの各地域の特徴を表現した18枚の巨大なタペストリーです。中には、一部に映像を組み合わせて表現しているものもあり、見応えがある展示となっています。

出口付近にテイクアウトのコーナーがあり、パビリオンに入らなくても購入できます。万博会場内の外国パビリオンでは比較的安価な方です。
カナダパビリオン。AR(拡張現実)による自由な探索が楽しい

カナダパビリオンは氷河をイメージした外観。内部に入るとタブレット端末を渡されます。グループの場合は3人に1台程度です。
AR(拡張現実)を用いた探索が特徴で、まずは海中でさまざまな魚が泳ぐ姿を、タブレットに描かれるARで見ることができます。
次に進む広い氷山の世界では、室内を自由に歩き回りながら、農耕、山岳地帯、都市、そして花火やオーロラといったカナダのさまざまな風景を見つけていきます。


ARを活かした「探索する楽しさ」を味わえるパビリオンです。
パビリオンの屋外にはステージが設けられ、バンド演奏などがよく行われています。
なお、テイクアウトのコーナーがありますがこちらは未経験です。
ネパールパビリオン。「芸術の源泉としての宗教」を感じる

万博会場の中で最後にオープンしたネパールパビリオン。1階は飲食や物販のスペースが並び、2階には銅像、彫刻、絵画、織物などさまざまな工芸品が多数展示されています。
宗教に基づく信仰が芸術の源泉になる、ということを強く印象付けられました。
1階も賑やかなショッピングモールのようで、他のパビリオンにはない独特の雰囲気を楽しめます。


シンガポールパビリオン。「夢」をテーマにした没入感の高い構成

「夢」をテーマにしたシンガポールパビリオン。球状のパビリオンの内部を上へと登っていきますが、途中で夢を手書きで書くと、それが最上階の美しい映像の中に表示されるという演出もあります。
最後の物販フロアに至るまで、統一されたインテリアデザインが素晴らしく、パビリオン全体としてまさに夢の世界にいるような、没入感が得られる構成でした。

バングラデシュパビリオン。生々しい政治の動きを知る

バングラデシュパビリオンで注目すべきは、現在の暫定政権が発足するきっかけとなった、昨年(2024年)7月の政変についての展示が多いことです。
若者に決起や政治参加を呼び掛けるポスターの一部に日本の漫画のキャラが使われていることが注目されますが、もしこのパビリオンを見る機会があれば、その後に振り返りとしてこの政変について調べてみることをお勧めします。日本でもよく論じられる「若者の政治参加」について考える、ひとつの材料になると思います。

ハンガリーパビリオン。歌と光のショーを楽しむ

ハンガリーパビリオンは予約が可能ですが、予約なしで並んで入ることもできます。
内部は白と黒のトーンで統一されたインスタレーション(空間全体で表現された芸術)で、メインシアターでのハンガリー民謡と光の演出がとても印象的でした。

ハンガリー料理が楽しめるレストランもありますが、こちらは未経験です。
アンゴラパビリオン。「健康教育」を掲げた地に足がついた展示

未来に向けた展示として、「海洋や山林の大切さ」「資源の再利用」みたいな概念を掲げるパビリオンが多い中(それが悪いわけではないのですが)、「伝統医療と現代医療を適切にミックスさせた医療知識の普及」という、地に足がついたテーマを掲げるアンゴラパビリオン。外観にも「健康教育」という文字が掲げられています。
メインコンテンツは、地方の村に住む少女がマラリアに罹り、適切な治療を受けて一命を取り留めた後、自らも医療を志し医者となった……という実話をもとにしたアニメーションですが、このアニメーションが短いながらも出来が良かったです。

物販や飲食のスペースもあります。飲食の方は未経験です。
水上ショー「アオと夜の虹のパレード」
毎日2回、夜に実施されるイベントです。
ウォータープラザの中央にあるウォータースクリーンで、主人公の「アオ」と、途中で出会う不思議な生き物たちの物語が展開され、迫力ある噴水、一部では炎を用いた表現が物語を彩ります。

スクリーンを見るためには予約席を確保する必要がありますが、スクリーンは見えなくても音楽やセリフは聞こえるので、噴水を見るのをメインにして周囲から見るのも一つの手です。

なお、昼間の11:00、12:00、13:00、14:00、15:00、16:00には、同じ場所でピアノのBGMに乗せた軽やかな噴水ショー「水と空気のシンフォニー」が5分ほど行われます。
こちらは、たまたま近くにいて時間があるなら、見ておけば万博での体験が増える、というぐらいで考えておけばよいと思います。

地球共感覚セレモニー「One World, One Planet.」
万博の一日の最後を彩るのが、「One World, One Planet.」と題されたセレモニーで、特に見どころは会場南側で行われるドローンショーです。

個人的な経験で言えば、開幕日に会場内を歩いていてたまたまこのドローンショーを見て、「万博に来てよかった」と思えました。
建物に阻まれなければ会場のどこからでも見ることができますが、お勧めはウォータープラザ付近か、大屋根リングの上段です。
なお、ドローンショーの他に、東側のホール「シャインハット」では外壁を利用したプロジェクションマッピングによるアニメーションもあります。ドローンショーは天候などの理由で行われない日もありますので、その場合はシャインハットのアニメーションを見るのが良いと思います。

その他のイベントもチェックしよう
万博会場では数多くのイベントが連日行われています。科学技術に関する展示、日本の各地域や企業が主催するイベント、参加国が主催する音楽や舞踊のライブなどさまざまです。
イベントは下記のページから、日別に見ることができます。
www.expovisitors.expo2025.or.jp


(右)ポーランド国立民族合唱舞踊団「シロンスク」のステージ(2025年5月14日)


また、これ以外にも各パビリオンのステージで適宜パフォーマンスが行われています。事前に把握するのはなかなか難しいですが、たまたま出くわしたらラッキーぐらいのつもりで思っておくとよいかもしれません。
まとめ:万博の経験は一人一人違って当たり前。他人と比べる必要はありません
「通期パスのせいで、新しく行く人が全く予約が取れなくなっている」などと通期パスを目の敵にする人もいます。大阪・関西万博の通期パスは累計で40万枚ほど売れているそうですが、当然、40万人全員がひたすら万博に通い続けているわけではありません。
予約困難な人気パビリオンに何度も入れている人というのは、通期パスを何枚も買って予約機会を増やし、朝はできる限り早く会場に到達できる方法を調べ、6時前後には会場に到着して開場まで3時間ほど待ち続けるということを繰り返している人です。それくらい金銭も時間も費やしているのだから、普通の人が太刀打ちできるはずもありません。
周囲の人々の手助けを受けながら、毎日万博に通い続けられる万博おばあちゃんのような人もいるし、私は近所のおでかけ感覚で万博に行けるといっても、平日は仕事をしているし毎日行けるわけでもない。距離が遠い人はそれだけ万博に行く難易度が上がる。そもそもの前提条件が一人一人違うのだから、他の人と同じ体験ができないからといって、うらやましがったりひがんだりする必要はないと思います。
個人的には、回数多く訪ねられる立場ではあるので、できるだけ見聞をして、そのことを多くの人に少しでも還元できれば、という思いはあります。だから、単に見てきたという報告だけではなく、どういった学びがあるのかとか、万博そのものの意義だとか、そういうことを考えて書いていければと思っています。