君と、A列車で行こう。

旅行などで訪問した場所に関することを綴るブログ。鉄道などの交通に関することが多めです。主にX(旧twitter)では書きにくいような長文を書きます。当面は大阪・関西万博がメイン。

【大阪・関西万博】万博と誠実に向き合ったガンダム。GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION

GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION(2025年9月7日)

ガンダムパビリオン入場券付きレストランバスを使ってみた

等身大のガンダム像が展示されるということで開幕前から話題だった、バンダイナムコホールディングスが出展するGUNDUM NEXT FUTURE PAVILION(以下「ガンダムパビリオン」と書きます)。

予約が取りにくいし後回しにしていて、なんならまあ、ガンダムはそもそもよく知らないし行けなくてもいいかぐらいに思っていました。そんな中、ガンダムパビリオン入場券付きで、万博会場からなんば行きのレストランバス(JAL×ガンダム レストランバス)の企画があるということを目にして、レストランバスというのも初めてで面白そうだし、利用してみることにしました。

nanka-e-tabi.com

レストランバスについては機会があれば別途書くことにしますが、そんなわけで手に入れた入場券を手に握りしめ(握りしめたら潰れる)、9月7日にガンダムパビリオンへ向かいました。

大阪・関西万博の予約システムに影響を与えた「ガンダム方式」

パビリオンの内容に移る前に、大阪・関西万博の運営面にガンダムパビリオンが与えた影響について、聞き書き程度なのですが書き記しておきたいと思います。

この万博では、博覧会協会がパビリオンの予約システムを導入していて、シグネチャーパビリオン、民間パビリオンを中心に利用されていました。一方で、海外パビリオンは一部の利用にとどまりました。

その予約システムでは、会場への来場予約を行った後、その日のパビリオンの予約に複数回のチャンスがありました。具体的には

  • 2か月前抽選
  • 7日前抽選
  • 3日前先着予約
  • 当日予約

の4パターンの予約機会があり、早期に来場予約をするほど機会が増える、というものでした。

当日予約は基本的に、当日の朝から予約枠が開放されていました。

しかし、それでは完全に早い者勝ちで、朝9時の来場予約が取れて9時に入場した人しか予約を取れず、後の時間に来場した人には、キャンセル待ちしか当日予約のチャンスがない、という問題がありました。

そこでガンダムパビリオンが導入したのが、1日数回、時間を決めて予約枠を数時間ずつ開放するという方式でした。例えば、朝9時には9時から12時まで、12時には12時から15時までの予約枠を開放するといった具合です。この方法によって、遅い時間に入場した人も、開放時間を狙って当日予約を取ることができるようになりました。

この方式は「ガンダム方式」と呼ばれ、他のパビリオンでも採用する事例が増えていきました。

www.oricon.co.jp

「当日予約」は会場入場後、端末やアプリから可能。午前9時のゲートオープンにあわせ、端末には大行列ができる。

 こうした中で、ガンダムパビリオン「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」は、状況を踏まえ、複数の時間帯に当日予約枠を開放する方式をとっており、比較的観覧しやすかった。これが、SNSでは「ガンダム方式」と呼ばれている。

(上記オリコンの記事より引用)

物語の背景の説明付きで初心者にも安心

先にも書きましたが、そもそもアニメ等の「機動戦士ガンダム」シリーズを全く見たことがなく、ガンダムなどの巨大ロボットが未来の宇宙でなんだかんだと戦うアニメシリーズ、ぐらいの認識しかありません。そういうガンダム素人の目線として読んでいただければと思います。

パビリオンに入場すると、最初の部屋では入場者が5列に並んで待機。その間、室内の複数個所に設置されたディスプレイでは、物語の背景となる「GOIC(GUMDAM OPEN INNOVATION CONSORTIUM)」について説明がありました。

GIOCについて説明する映像

かつて、地球に暮らす人たちと宇宙に移住した人たちの間で戦争が起こり、そして傷ついた地球と荒廃した宇宙空間が残りました。

この戦争で用いられた巨大な人型マシン、つまりガンダム等のモビルスーツを、戦後の復興や平和維持にために活用しようという組織がGOICです。

戦争で用いられたモビルスーツは、人が乗り込んで操作するものでした。しかし、戦後復興ではAIを搭載した無人モビルスーツが開発され、

  • 宇宙デブリの回収と再利用(修理して使用、部品や金属資源としての活用)
  • ビームサーベルから派生したプラズマ技術による窒素肥料の生成、農業の生産効率向上による宇宙での自給自足の実現
  • 宇宙に設けられたテキサス・コロニーの再生と環境改善

といったプロジェクトが進められています。また、地上と宇宙ステーション「スタージャブロー」の間に軌道エレベーターが設けられ、相互の往来が可能となっています。

また、戦後に横浜で発見されたガンダム*1は戦争の遺産として、スタージャブローに移送されて研究が進められています。

(左)パビリオン内の注意事項の説明 (右)GOICのロゴ

なお、パビリオンを訪ねた時点ではGOICはまったく空想上の組織だと思っていたのですが、後で調べると現実とかかわりがないかと言えばそうでもなく、バンダイナムコガンダムという知的財産を活用したSDGsへの取り組みとして「GOI(GUNDAM OPEN INNOVATION)」をスタートさせ、複数の企業等とパートナー契約を結んで活動しているようです。万博への出展もGOIの一環とされています。

www.bandainamco.co.jp

www.asahi.com

5つのグループに分散して軌道エレベーター

最初の部屋で5列に並んだ来場者は、GOICのサポーターとして、軌道エレベーターのステーションに入り、1列ずつ分散して5台のエレベータ-の前に移動します。

ここで、案内役を務めてくれるキャラクターの紹介があります。HARO-70POとHARO-25EX。「HARO」について細かく書いても仕方ないので、「70」と「25」という数字*2、そして2機の末尾を組み合わせると「EXPO」になることだけ覚えておいていただけたらと思います。

案内役のマスコットロボ、HARO-70POとHARO-25EX
宇宙ステーション「スタージャブロー」と軌道エレベーターの説明

夢洲ステーションで働くモビルスーツたち

宇宙ステーション「スタージャブロー」は地球から36,000kmの距離にあり、地球の赤道の上空を、地球の自転と同期する形で周回しているのだそうです。

また、夢洲ステーションでは多くのモビルスーツが、運搬や建設などの仕事を行っています。このあたり、原作をご存じの方だと「あの○○が!」という感じの発見があるのかもしれません。

「赤道の上空を周回するスタージャブローと、地球側のステーションの位置関係を同期させるには、赤道上でないとだめじゃないの?」

「………こ、今回は、特別に夢洲ステーションから発射するのさ!」

というような感じのオチがついて軌道エレベーターのスペースキャビンに乗り込みます。

軌道エレベーターの準備完了の案内

軌道エレベーターのスペースキャビンでスタージャブロー

乗り込んだスペースキャビンでは、宇宙に向かう映像が流れ、未来の大阪の街が眼下に見えたと思ったらあっという間に宇宙空間になります。

やがて、窓の外にはたくさんのモビルスーツが見え、そして宇宙デブリが高速で流れていきます。モビルスーツたちはデブリの回収作業にあたっているそうです。

(左)軌道エレベーターの搭乗口 (右)軌道エレベーターの室内
(左)GIOCの指示で、軌道エレベーターに掴まってスタージャブローに向かうモビルスーツ
(右)高度1000mから見下ろす大阪の街

デブリが飛び交う宇宙空間と、回収作業にあたるモビルスーツたち

やがてスタージャブローに到着。軌道エレベーターを出て、スタージャブローの展望スペースへ進みます。5つに分かれていたグループはここで1つにまとまります。

スタージャブローへ。そこへもたらされた危機

スタージャブローの展望スペースから外を見ると、様々な形でモビルスーツが仕事をしている他、軌道エレベーター周辺と同様に、デブリの除去にいそしんでいるモビルスーツたちもいます。

(左)スタージャブローの展望室 (右)窓の外で働くモビルスーツたち

そんな中、除去にてこずる大きなデブリが出てきました。モビルスーツたちが破壊しようとしても破壊できず、スタージャブローに迫ってきます。

やがて、デブリから現れたのはなんとジオング。それも腕が4本ある超強化型。モビルスーツたちが交戦するもののかなわず撃退されてしまいます。

スタージャブローに迫りくるデブリから姿を現した強化型ジオング

ジオングモビルスーツたちが立ち向かうが撃退されてしまう

そこで登場したのが、先の大戦の遺産としてスタージャブローに運ばれ、調査が行われていたモビルスーツ。そう、ガンダムでした。

激闘が発生するため危険だということで、いつでも脱出できるよう避難ポッドへ移動します。

緊急避難ポッドへの移動

ガンダムの復活と激闘

避難ポッドの窓の外では、ガンダムジオングの激闘が繰り広げられます。

ジオング(左)に立ち向かうガンダム(右)

緊急プログラムで起動したばかりのため、性能を発揮できず防戦一方のガンダム。やがて、翼の形をした最新の強化パーツを装着し、かつてのパイロットの人格を学習したAIの起動が完了し、再びジオングに戦いを挑みます。

それでも苦戦するものの、周囲のモビルスーツたちの協力も得て、ジオングの破壊に成功します。

復活したガンダムジオングの激闘

破壊したジオングの爆発から、身を挺して避難ポッドを守るガンダム

地球への帰還をエスコートしよう、と申し出てくれるガンダム

安心したのもつかの間。ガンダムエスコートで地球へ帰還しようとすると、破壊されたジオングが変形して再度攻撃を仕掛けてきます。それを撃退し、ようやく安全を取り戻したガンダム

(左)再び出現したジオング (右)ガンダムとの激闘再び

ついにジオングを撃退したガンダム

避難ポッドとともに地球に向かうガンダムは、最後に次のメッセージを語りかけます。

未来はすべての人々に開かれたものだ。そこには無限の可能性がある。

そして、人は地球というゆりかごで可能性をはぐくんでいく。

宇宙から地球を見たキミたちは、きっとそのことに気づくだろう。

空を見上げた時、そこにはいつでも星がある。

その輝きは、キミたちを導く希望の道しるべとなる。

どうかそれを、忘れないでくれ。

そして地球の大気圏へ突入し、夢洲ステーションに到着して旅は終了となります。

(左)見えてきた地球、語り掛けるガンダム (右)大気圏への突入

パビリオンから外に出ると、そこは等身大ガンダムの裏側。普段は見ることができない角度から、ガンダムを心ゆくまで見ることができました。

ガンダムの後ろ姿
(左)横から見上げたガンダム (右)脚の部分に描かれたミャクミャク

万博のテーマに誠実に向き合ったガンダム

機動戦士ガンダム自体が、様々な形で世界の課題や地球環境、宇宙開発の問題を扱っていたとしても、おそらくモビルスーツの産業利用、スペースデブリに擬態したジオングのような設定まではなかったのではないかと思います。

正直なところ、ここまでわかりやすくSDGsに寄せなくてもよかったのではないか、と考えたりもします。ですが、万博にガンダムを出展するにあたり、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマと誠実に向き合った上で、ガンダムとして何が表現できるのか、考え抜かれたシナリオだったのだろうなと思いました。

また、建屋内をツアー形式で巡るタイプのパビリオンなのですが、それが夢洲ステーション入口→軌道エレベーター搭乗口→スペースキャビンの室内→スタージャブロー→緊急避難ポッド→地球への帰還と、ストーリーと無理なく結びついて、「移動させられている」感がない構成が素晴らしいと感じました。

万博会場のガンダムの雄姿

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*1:万博会場で展示された等身大ガンダム像が、最初に「動くガンダム」として横浜で展示されたことを指しているのだと思います。

*2:詳しい説明はありませんが、1970年の大阪万博と、2025年の大阪・関西万博にちなむ数字だということは容易に想像がつくと思います。