1月28日、気仙沼線BRT・大船渡線BRTのダイヤ改正が発表されました。改正日はJRグループ全体と同じ2021年3月13日(土)になります。
JR東日本ニュース 気仙沼線BRT・大船渡線BRTダイヤ改正について
https://www.jreast.co.jp/press/2020/sendai/20210128_s05.pdf
JRグループで一斉に発表されたのが昨年12月18日で、それからは1ヶ月以上遅れての発表です。これは前年も同様でした。
今回は、震災から10年を迎え、沿線の復興事業が年度末をメドに進められているものが多いことから、その影響を受けた改正となりました。
以下、ニュースリリースをもとに今回のダイヤ改正について見ていきたいと思います。
(2021/2/4追記:2月3日にニュースリリースが差し替えられたので、それにあわせて記事を一部更新しました。三陸自動車道に関する部分を更新しています)
気仙沼線BRT関係
大谷海岸駅を「道の駅 大谷海岸」敷地内に移設
大谷海岸駅付近で再建が進められてきた「道の駅 大谷海岸」がグランドオープンする(これまでは仮設で営業)ことから、国道上にあった駅が道の駅に移設されます。
オープン日は3月28日?というような情報もちらっと見ましたが、移設する日程は調整中のようです。
これに伴い、前後の駅との所要時間(小金沢~大谷海岸、大谷海岸~陸前階上)がそれぞれ1分長くなります。所要時間変更は3月13日から実施なので、移設までの間は早発しないよう、それぞれの駅で時間を持て余すことになりそうです。
施設内に駅を置いた場合、施設を利用する分には便利になるのですが、どうしても施設内を転回する分だけ時間がかかってしまう面があります*1。これはトレードオフの関係なのでやむを得ないですね。
早朝の利用に便利な快速便を設定
気仙沼線BRTに「快速」が登場します。
陸前小泉6:13発→志津川6:40着という短距離の設定ですが、途中、高台移転した地区にある志津川中央団地、南三陸町役場・病院前を通過します。
志津川地区のルートは図の青線(専用道)・赤線(一般道)の通りですが、両駅を通過するのであれば、東からやってきて専用道から一般道に出た後、すぐに国道45号に入って一直線に志津川に向かうことができます。
以前に、早朝に歌津駅付近で撮影していた時に気づいたのですが、気仙沼線BRTでは朝に志津川始発の気仙沼行きの便が多く、その回送がバンバン通っていきます。おそらく本吉駅付近のミヤコーバス津谷営業所から回送されているものと思います。
後に志津川6:50発(気仙沼行き)の始発便があることから、その送り込みとして回送していたのを営業運転するのではないかと思います。
上の写真のように、専用道の出入口は本吉駅の志津川寄りにあるため、本吉駅には停車せずに向かう形となったのでしょう。
なお、この快速便は、志津川駅で23分の待ち合わせでミヤコーバス仙台気仙沼線の仙台行きに乗り継ぐことができます。
乗降場所はBRTと同じで、プレハブながらJRの出札窓口を兼ねた待合室もあり、しかも隣はセブンイレブンなので、快適に乗り継ぎができそうです。
乗り継ぎ先の仙台行きは、本吉までは気仙沼線BRTの近く、もしくは同じ場所(南気仙沼、大谷海岸、小金沢)に停車するので、それをうまく補完するような設定になっています。
気仙沼線BRT・大船渡線BRTは、鉄道や都市間バスといった長距離輸送と、地域内バス路線との間を取り持つ中距離の地域間輸送を担いますが、それぞれとの連携強化というところが目下の課題になっています。それに対して一つの答えを出した形になるのでしょう*2。
なお、これと対になる形で、現行ダイヤでの気仙沼16:40発志津川行きは、本吉~志津川間が削減され本吉行きとなります。この便がなくなっても、本吉~志津川間の前後の便の間隔は45分であり、利便性の大幅な低下にはつながらなさそうです。
この、一本増やすと同じ区間で一本減らす、という考え方は大船渡線BRTとも共通なのですが、最後に考察をまとめておきたいと思います。
気仙沼駅での乗り換え利便性向上
ニュースリリースでは、気仙沼線BRT、大船渡線BRTのそれぞれ(3)となっている内容です。
両線のダイヤの調整により、朝の8時台の大船渡線BRT→気仙沼線BRT、夜20時台の気仙沼線BRT→大船渡線BRTの乗り継ぎ利便性が向上します。
この内容で示されている時刻が本吉-気仙沼-八幡大橋(東陵高校)であることから、気仙沼市内の南北を結ぶ交通としての連携強化を意図したものと言えそうです。
昨年には、大船渡線BRTの鹿折唐桑から、気仙沼線BRTへ直通する便が設定されましたが、それに続く施策ということになるのでしょうか。
どうせなら夜20時台は、本吉発気仙沼行き(20:16着)に接続するのではなく、柳津発気仙沼行き(20:31着)に接続する方が、長距離利用にも対応できそうな気がしますが、そういうのは重視していないということなのでしょう。
大船渡線BRT関係
八幡大橋(東陵高校)~唐桑大沢駅間のルートを変更
今回もっとも注目だったのがこの点になります。
概要としては、現状、八幡大橋(東陵高校)(以下、「八幡大橋」と略します)から青線の国道45号を進み、唐桑半島ICとして開通する部分からは三陸自動車道で先行供用されていた霧立トンネルを通り、唐桑小原木ICで国道45号へ抜けています。なお、この区間、岩手県交通の一関大船渡線は霧立トンネルを通らず、海沿いの国道45号を通っていきます。
ところが、三陸自動車道の気仙沼湾をまたぐ区間が開通し、唐桑半島ICが完成すると仙台方面にしか向かえないハーフインターチェンジとなることから、このルートで運行を継続することは不可能でした。
そこで噂されていた案としては、
- 実際の変更ルートのように、大船渡方面のハーフインターチェンジとなる気仙沼鹿折ICから三陸自動車道に入る
- 岩手県交通のように霧立トンネルを通らず国道45号を迂回する
の主に2つでした。
気仙沼鹿折IC経由の案は他にも問題があり、八幡大橋を通るのであれば遠回りになり、所要時間の増加は避けられないので、もしかしたら駅自体を南側に移設する可能性があるのではないかということと、三陸自動車道は最高速度80km/hであり、路線バスは法規上60km/hまでしか出せないので、三陸自動車道を避ける方がいいのではないか、ということです。
最高速度の問題については、昨年から布石が打たれていました。
大船渡線BRTのバスの前面・背面に、「運行速度60キロメートル毎時以下」の表示がつけられていたのです。この表示は気仙沼線BRTのバスにはありません。
その意図は明らかではありませんでしたが、最高速度に制限があることを前後のドライバーに明示する形で、引き続き三陸自動車道を走行することを視野に入れているのだろうと推測していました。
実際にその通りになるわけですが、気仙沼鹿折ICへ迂回することによる所要時間の増加についてはなかなか微妙です。
例えば、鹿折唐桑~唐桑大沢間の所要時間は、現行の12分から3分増えて15分で設定されています。一方、三陸自動車道を通らない岩手県交通の一関大船渡線で、これにほぼ対応する唐桑駅前~大沢間の所要時間も15分です*3。
それであれば、無理に三陸自動車道を通る必要はなかったんじゃないか、という気もしますが、JRはこういう選択をしたということですね。
BRTで新設された八幡大橋駅がなければ、鹿折唐桑から最短距離で気仙沼鹿折ICに向かえるのですが、この辺、どうもちぐはぐな印象が拭えないところはあったりします。
なお、三陸自動車道の気仙沼湾を跨ぐ区間の開通は3月6日(土)15:30と発表されています。
宮城県内の復興道路が完成へ!仙台市と宮古市が直結!
三陸沿岸道路「気仙沼港IC~唐桑半島IC」間が令和3年3月6日(土)15時30分に開通
http://www.thr.mlit.go.jp/Bumon/kisya/kisyah/images//85171_1.pdf
ダイヤ改正日の3月13日よりも前に道路切り替えが発生することになりますが、3月6日の道路切り替え後から、3月12日までのダイヤがどうなるかは明示されていません。
おそらく、上下便ともこの区間より先は3分遅れ程度で運行することになるのではないかと思います。
ところで、この部分の記述や、別紙の3月13日以降の運行時刻表も含めて、ニュースリリースには「八幡大橋(東陵高校)」という駅名は一切記載されておらず、すべて「八幡大橋」となっていて、それが駅名を一部省略している旨の注釈もありません。
単に注釈なしで省略しているだけだとは思うのですが、何か意図があったりするんだろうか、ということも気になっていたりします。
早朝の利用に便利な快速便を設定
陸前高田から気仙沼に向かう初発便は現行では6:06(盛5:27発)ですが、陸前高田始発で5:10発の快速便(現行通り、陸前今泉を通過)が設定され、気仙沼には5:48に到着します。
これによって、大船渡線一ノ関行きの一本早い列車に乗り継げることがアピールされています。
これも、気仙沼線で新設される快速便と同様、回送便の有効活用ではないかと思います。
気仙沼から盛に向かう初発便に乗ると、途中で気仙沼に向かう回送とすれ違います。
岩手県交通の営業所は気仙沼にはなく、竹駒駅付近の高田支所が最寄りになりますので、そこから回送されてくるのだと思います。
帰宅時間帯の運行間隔を分かりやすく
高田高校前から盛方面、盛から陸前高田方面の夕方の運行間隔を揃える、という内容。盛も大船渡高校の学生さんが多く利用するので、主に高校生をターゲットにした改正ですね。
そのほかの改正内容
長部~陸前今泉間の1分短縮はともかく、次の一文はダイヤ改正文学としてはかなり気になるフレーズです。
「ご利用実績を踏まえ、一部の便をほかの時間帯に移動すると共に運行日を見直します。」
だいたい、こういう文章、特に「ご利用実績を踏まえ」「見直します」の文言がある時は減便方向の変更であり、ここで言えば毎日運転のものを平日のみ運転にするとか、そういう変更が想定されるのです。
大船渡線BRTは、上に挙げたような改正に伴い、全体のダイヤがかなり変わっています。日中にも、現行ダイヤで存在しない陸前高田始発の気仙沼行きが設定されたり、陸前矢作~盛間の便で、土曜・休日は陸前高田~盛間を運休するといった、現行ダイヤにはない設定もあります。
ところが、全体を
の3つに分け、それぞれの区間の本数をよく数えてみると、平日、土曜・休日とも、トータルの運転本数は全く変わっていませんでした(陸前今泉、および高田高校前・高田病院を経由する本数についても同様です)。
気仙沼線BRTでは、早朝に1本増やして夕方にその分を削る設定でしたが、大船渡線BRTの場合は、ダイヤ全体を通してボリュームを維持したまま組み替えている形になっているのでした。
もちろん、時間帯別に見れば不便になっているところもあり、例えば大船渡線BRTの気仙沼発着でいえば、5時台に到着便、20時台に出発便が増える分、日中が手薄になる面があるので、そうしたことに配慮した文面ではあるのでしょうが、そこから想像されるものと比べると、意外な内容となっていました。
運行ボリュームを維持する理由についての考察
世の中、コロナ禍もあって鉄道は減便の発表が相次いでいます。
BRT営業所が所属するJR東日本の盛岡支社管内でも、3月13日のダイヤ改正ではいくつかのローカル線で減便があるようです。
それだけに、気仙沼線BRT・大船渡線BRTとも、いろいろ変えつつもボリュームは全く同じというのはむしろ奇異にすら映ります。
あくまで推測ですが、運行業務はミヤコーバス・岩手県交通といったバス会社に委託しているので、本数を減らすと委託費用を減らすことになる。それをバス会社の側が避けたいということなのではないかと思っています。
バス会社からすれば、バスを運転すればそれだけ収入があるはずで、営業はJRがやるわけですから、乗客が少なくても採算を気にする必要がないのです。
一方でJRとしても、仮に過剰に運行していたとしても、鉄道よりコストは安く、積極的にコストダウンを図る動機が乏しいということがあるのではないかと思います。それならば、一定の赤字は容認しつつ、バス会社との関係や、沿線利用者へのサービスを維持する方が得策という考え方もできます。
あくまで推測ですが(大事なことなので2回言いました)、そういった一面も垣間見えたのが、今回のダイヤ改正発表のようにも思います。