今回、JR東日本のBRT路線(気仙沼線BRT・大船渡線BRT)での運行管理のキモともいえる、信号・待避所の配置図を作成してみました。
BRT路線は、大別すると鉄道が走っていたところを転換した専用道の区間と、国道などを走る一般道の区間に分かれますが、専用道はもとの鉄道が単線だったので、一車線分の幅しかありません。
したがって、正面衝突しないようどこかで交換できる場所が必要になりますが、鉄道と同様に駅(停留所)で交換できるところがあるほか、駅間にも待避所が数多く設けられ、柔軟に交換ができるようになりました。
鉄道のように、どの駅や信号場で交換するかも含めて綿密にダイヤが組まれているわけではなく、数分程度の遅れは発生する前提で大まかにダイヤが組まれており、その中で状況に応じて適宜交換を行っていく形になります。
あくまで一乗客として観察する限りで書きますが、以下のような仕組みになっているものと思われます。
- すべてのバスの位置はバスロケーションシステムで把握されていて、対向するバスが接近するとチャイム*1が鳴り、運転士に知らせる。どれぐらい接近したら鳴るのかは不明。
- 数百m~1km程度の間隔で待避所がある区間では、信号による制御はなく、チャイムを聞いた運転士は最寄りの待避所で交換を行う。どちらの便が一旦停止しどちらが通過するかは、状況に応じて目視で判断する(これを仮に「無閉塞区間」と呼ぶことにします)。
- 橋梁やトンネル、盛土などにより、長い区間待避所を設けることができない場合は、その両側に感知式信号を設ける。基本は赤で、手前の感知ポイントにバスが停車すると、バスロケーションシステムと連動して進入可能なら青に変わる。鉄道の閉塞信号と同様の考え方で、信号の先の区間に対向バスがいる場合は、それが通過するまで赤のままとなる(これを仮に「閉塞区間」と呼ぶことにします)。
- 閉塞区間から無閉塞区間に進入する場合は信号は存在しない。また、閉塞が必要な区間が長い場合、複数の閉塞区間が連続するケースがある。
それでは、気仙沼線BRTの柳津駅から大船渡線BRTの盛駅へ、南から北へと見ていくことにしましょう。
なお、マップ画像作成にはGoogleマイマップを利用しています。
図の見方
簡単に図の凡例を紹介します。
路線
- 黄色:鉄道線
- 水色:BRT専用道
- 赤色:BRTが通る一般道
- グレー:BRTが通らない旧鉄道ルート
駅
- 橙色:鉄道駅
- 水色:鉄道で存在していたBRTの駅
- 赤色:BRTで新設された駅
待避所
- 青の信号機マーク:信号機付き待避所
- グレーの駐車スペースマーク:信号機のない待避所
駅のマークに隣接して、もしくは重なって待避所のマークがある場合は、駅が待避所を兼ねていることを示します。
気仙沼線BRT
柳津~志津川間
川沿いの地上を通る部分は信号のない待避所が連続する無閉塞区間、トンネルや海沿いの高架は閉塞区間となっています。
柳津~陸前横山
柳津~陸前横山間は、柳津側にトンネルや橋梁がある閉塞区間があり、陸前横山側は無閉塞区間となっています。
現在、バス自動運転の実験区間になっていますが、この両者が混在していることと、比較的平坦で直線的であることから、実験に適した条件なのだと思います。
陸前横山~陸前戸倉
陸前横山~陸前戸倉間は、間に3km以上の横山トンネルがあり、その部分が閉塞区間となっています。
陸前戸倉~志津川
陸前戸倉~志津川手前までの専用道は、トンネルや海沿いの高架などで形成される区間の為、全区間が閉塞区間となっています。
志津川中央団地~小金沢間
複雑な海岸線を避け、トンネルでショートカットする区間が多く、全区間が基本的に閉塞区間となっています。
一部、信号なしの待避所が見えますが、詳しくは各駅間のところで紹介します。
志津川中央団地~清水浜
トンネルや橋梁が連続し、閉塞区間で構成される駅間。清水浜駅も信号機付き待避所の機能があります。
清水浜駅の西側に見えるグレーの駅マークは、鉄道駅が存在した箇所。今はやや東側に移設され、この部分は単純な専用道となっています。
清水浜~歌津
同じく全区間で閉塞区間となっています。清水浜駅、歌津駅とも信号付き待避所として機能しています。
歌津駅のすぐ南側(トンネルを出たところ)に信号のない待避所がありますが、閉塞区間の中にあるため、基本的にここで待避が行われることはないはずです。
おそらく、信号をここに置くことも想定して待避所を設けたのだと思いますが、ダイヤ的に、そこまで閉塞区間を切り詰める必要もないという判断だったのではないか、と想像しています。
歌津~陸前港
陸前港駅の南側に2つ待避所が並んでいますが、この2つの待避所の間だけは無閉塞です。
具体的に言えば、南側の待避所は南向きの歌津駅方面のみ信号があり、北側の待避所は北向きの陸前港駅・蔵内駅方面のみに信号があります。
陸前港~蔵内
陸前港駅のすぐ南側の信号から、蔵内駅(信号付き待避所)までが1閉塞区間となっています。
蔵内~陸前小泉
蔵内駅、陸前小泉駅とも信号機付き待避所であり、全区間が閉塞区間となっています。
陸前小泉~本吉
間に信号なしの待避所がたくさんあるのですが、実は陸前小泉駅、本吉駅にある信号間で1閉塞となっている区間。
津谷川を渡る区間と、その北のトンネル越えの区間以外は無閉塞とすることもできると思いますが、これまでと同様、駅間がまるごと1閉塞で問題ないとしているのだと思います。
本吉~小金沢
本吉~小金沢間にある専用道も、周囲の起伏が大きく盛土・掘割・トンネルなどで構成されるため、全区間で閉塞区間となっています。
陸前階上~気仙沼間
この区間は比較的平らな場所が多く、無閉塞の場所が多いのですが、橋梁やトンネルがある区間では閉塞が設けられています。
陸前階上~最知
陸前階上駅のすぐ南側から専用道になります。
最知駅までは無閉塞となっていますが、最知駅自体は1車線で待避機能はなく、そのすぐ北側に待避所が設けられています。
最知~岩月
最知~岩月間も無閉塞です。最知駅、岩月駅とも駅自体はいわゆる棒線駅で、駅では待避できず、前後の待避所で待避する形になっています。
岩月~松岩
岩月~松岩間は、面瀬川を渡る部分が閉塞区間となっています。
松岩~赤岩港
この駅間にはトンネルがあり、その部分が閉塞区間となっています。
また、松岩駅と北側の信号の間は短い無閉塞区間となっています。この部分で気仙沼市立病院経由の便が出入りする(赤線の経路)ので、閉塞扱いにすると何かと面倒そうな感じがしますね。
赤岩港~南気仙沼
赤岩港駅自体は無閉塞区間ですが、すぐ北側に信号があり、大川を渡り南気仙沼駅までが1閉塞となっています。
南気仙沼駅では、気仙沼市立病院経由便は待避所部分に出入りする(赤線の経路)形となっています。
南気仙沼~不動の沢
この駅間はすべて無閉塞区間です。大川から西側の盛土の区間には、途中に待避所を設ける幅が確保されています。
不動の沢~気仙沼
不動の沢駅を出ると、気仙沼駅に向けてひたすら待避所が連続します。
大船渡線BRTの転回場付近に信号があり、やがて大船渡線の鉄道と並行して気仙沼駅までが閉塞区間となっています。
大船渡線BRT
気仙沼~鹿折唐桑間
ここからは大船渡線BRTへ入ります。
気仙沼駅から東側、気仙沼線BRTの転回場までの短い区間は無閉塞なので、気仙沼を出発する時に信号による制御はありません。その先の鹿折唐桑駅までは、安波山の山麓を進み、トンネルや掘割、盛土が連続する閉塞区間となっています。
竹駒~陸前矢作間
間に復旧途上の気仙川橋梁があるため分断されている専用道区間。竹駒駅側、陸前矢作駅側とも無閉塞となっています。
西下~盛間
小友駅付近と大船渡駅から北側は無閉塞区間、その他は閉塞区間です。
西下~小友
両駅の中間から専用道に移行します。小友駅までは田園の中の平坦な直線を進む無閉塞区間となっています。
小友~碁石海岸口
小友駅の東側、田園地帯を抜けるところから周囲の起伏が大きくなり、トンネル・盛土・掘割が連続する閉塞区間に入っていきます。
碁石海岸口~細浦
碁石海岸口駅のすぐ北にある信号から、細浦駅までが1閉塞となっています。
細浦~大船渡丸森
引き続き、同様に閉塞区間が続きます。
大船渡丸森~下船渡
大船渡丸森駅の南側にある信号から、下船渡駅までが1閉塞となっています。
下船渡~大船渡魚市場前
大船渡市街地に入りますが、海沿いのわずかな平地と国道45号が通る高台の間の斜面に沿って専用道が延びているので待避所を作るスペースがなく、引き続き閉塞区間となっています。
なお、大船渡魚市場前駅付近には待避所はなく、この先の大船渡駅との中間地点が次の待避所となっています。
大船渡魚市場前~大船渡
駅間にある待避所(DCMホーマック付近)から北側は平坦になってくるため、途中に待避所を1~2か所設けられそうな気がしますが、逆に市街地ゆえに拡幅が難しかったのかもしれません。
大船渡~地ノ森
大船渡から北側、終点の盛までは無閉塞区間です。
地ノ森~田茂山
引き続き無閉塞区間ですが、駅間には待避所がありません。
田茂山駅は、もともと交差点の両側に信号なし待避所があり、その待避所部分に片面ずつ乗降場を置く形で駅が設けられました。
田茂山~盛
田茂山駅付近から三陸鉄道と並走しますが、1か所だけ、待避所を設ける幅を確保できたようです。
おわりに
本記事は、今後専用道の延伸などに合わせ適宜更新する予定です。
なお、本記事では専用道部分を抜粋していますが、気仙沼線BRT・大船渡線BRT全体のルート図は下記をご覧ください。
*1:「ピピピ…ピピピ…ピピピ…」という電子音のチャイム。乗っているとたまに聞こえます。