君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

2024年3月16日 気仙沼線BRT・大船渡線BRTダイヤ改正について

陸前高田駅付近を走行する大船渡線BRT

12月15日、気仙沼線BRT・大船渡線BRTで実施されるダイヤ改正が発表されました。改正日はJRグループ全体と同じ2024年3月16日(土)になります。

JR東日本ニュース 大船渡線BRT・気仙沼線BRTダイヤ改正について
https://www.jreast.co.jp/press/2023/morioka/20231215_mr02.pdf

JRグループの毎年3月のダイヤ改正については、各社一斉に前年の12月中旬の金曜日に発表されるのに対し、BRTについては年を越してから1月後半に発表されるのが近年のパターンでしたが、今回は鉄道と同日の発表となっています。

これまで、BRT単独の組織である「気仙沼BRT営業所」が管轄していたのが、気仙沼駅の駅業務なども含めた気仙沼統括センターに統合されたあたりも、もしかしたら影響しているのかな? などと考えたりします。あくまで憶測ですが。

 

今回は、大船渡線BRTの支線的な区間となっている陸前矢作陸前高田間でのルート変更が主なトピックであり、次いで気仙沼線BRTにおける駅間所要時間の見直しが大きな変更点となっています。その他、ニュースリリースに記載された変更内容や、それ以外にも細かいダイヤ見直しが行われています。

また、利用者の利便性にかかわる部分ではありませんが、終点の1つ手前の駅で、車内に乗客がおらず、その駅から乗車する人もいない場合(つまり、終点まで誰も乗客がいなくなる場合)は運行を終了することができる「効率的な運行」を開始することについても言及されています。

以下、ニュースリリースの内容について触れつつ、後半では現行ダイヤとの比較をもとに今回のダイヤ改正について見ていきたいと思います。

気仙川橋梁再建が完了、そしてかつてのBRTルートへ

大船渡線BRTの陸前矢作陸前高田間では、2か所でルート変更が行われ、この区間の所要時間が合計2分短縮となります。

まずは、東日本大震災津波で流出した気仙川橋梁の再建が完了することによるルート変更です。

陸前矢作駅~竹駒間の専用道完成によるルート変更。左が現行ルート、右が2024年改正で変更となるルート

現在、気仙川を渡る部分は一般道へ迂回しています(上の画像の赤線)が、これが専用道に移行することにより、おそらく、一般道と専用道の出入り、T字路での右左折にかかる時間が不要となり、所要時間を短縮できるのではないかと思います。

気仙川橋梁は2023年11月上旬の時点では、橋脚・橋桁の再建は完了しており、上部の道路部分や、橋梁の両側の専用道の工事が行われていました。

橋脚・橋桁の再建が完了した気仙川橋梁(2023年11月)

もう1点は、栃ヶ沢公園駅~陸前高田駅間のルート変更です。

栃ヶ沢公園駅付近は周回するルートとなっていたのを、駅の南東にある、国道をまたぐ橋を渡る直進ルートとすることで所要時間を1分短縮するようです。

栃ヶ沢公園駅~陸前高田駅間のルート変更(左が現行ルート、右が2024年改正予定ルート)。栃ヶ沢公園駅付近での周回が解消される

ニュースリリースには「栃ヶ沢公園駅(下り)を現行場所から向かい側に移設します。それに伴い、竹駒~栃ヶ沢公園駅間および栃ヶ沢公園~陸前高田駅間のルートが変わります。」とありますが、駅の移設に伴ってルートが変わるのではなく、ルート見直しに伴って駅の配置を変更する、という方が妥当でしょう。何か正確を期しているのかもしれませんが、ちょっと不思議な表現だなと感じます。

新ルートはBRTでは初めてのルートというわけではなく、BRTのルートの変遷を記録しておられる不毛企画 乗り物館の「気仙沼線BRT・大船渡線BRT 乗り潰しガイド」によれば、大船渡線BRTの開業から2年ほど、まだ栃ヶ沢公園駅付近が陸前高田駅であった頃に、東の高田病院駅との間を結ぶルートとして使われたこともあったようです。

magame.jp

個人的には、陸前矢作陸前高田間はBRTでは支線的なルートであり、気仙沼陸前高田~盛間のように速達性が求められるルートではないので、もっと駅を増やして利便性重視に振り切ってもいいのではないかと思っています。

陸前矢作陸前高田間、もっと駅を増やしてもいいのでは?

特に、今回予定しているルート変更で市役所に近くなることもあり、さらに変更して市役所経由にしてもいいのではないかと思います。

以前であれば、岩手県交通の路線バスとの競合のようなことも気にしないといけなかったかもしれませんが、県交通が2024年3月で陸前高田住田線を廃止*1すると、県交通の陸前高田市内の路線は一関大船渡線の1日1往復だけになってしまうので(これも風前の灯火といった感がありますが)、競合を気にする必要はなくなります。

JR九州日田彦山線BRTが、沿線のコミュニティバスや福祉バスの停留所を引き継ぐ形で駅数を大幅に増やしましたが、この試みが成功するかどうかはまだわからないとしても、同じような考え方を取り入れてもいいのではないでしょうか。

気仙沼線BRTの所要時間見直し 前谷地~気仙沼間は143分→140分に

気仙沼線BRTでは、駅間の運転時分見直しに伴う所要時間短縮が大きな変更点となっています。

その理由としてニュースリリースでは「国道45号線などの交通量減少」を挙げており、復興事業の需要がほとんどなくなったことや、三陸沿岸道路の開通によって国道45号などの下道の交通量が減るのは自然なことのように思います。

具体的には以下の3か所で変更が行われます。いずれも一般道区間での変更となります。

これらの3か所、確かに時間を持て余して駅で待機するシーンを見ていたりするので、多くの便で同じような傾向があるなら妥当な短縮だと思います。

運転時分見直しにより、前谷地~気仙沼間は143分から140分に3分短縮となります。また、気仙沼市立病院~本吉間は下り便で37分から35分に、上り便で38分から35分にいずれも短縮となります。

気仙沼線BRT上り便の改正ダイヤと現行ダイヤの比較

乗客のいない運行を削減する「効率的な運行」の開始

これは状況によって、乗客がいない場合は運行を打ち切るというもので、ニュースリリースでは以下のように説明されています。

終点駅の1つ前の駅で、BRTをお待ちのお客さまと車内に乗車中のお客さまがいないことを確認した上で、運行を終了することができる。

確かにこの状況であれば、運行を打ち切っても困る人は誰もいないわけで(あえて言えば、その先で写真を撮ろうと待ち構えている人が肩透かしを食らうぐらい)、それくらいはどうぞどうぞ、どんどんやってくださいという感じです。

ただ、終点まで行って、折り返しも営業運転する場合はとりあえず終点駅まで行かないといけないので、「効率的な運行」はできません。適用できるのは、終点まで行った後は回送となる便に限られます。

この「効率的な運用」という言葉は国土交通省が定めているもので、国交省が認めた条件に沿って実施するという形になります*2

実際にどの区間で導入されるのかは記載されていませんが(別に書く必要もないですが)、どこで設定されそうかを興味本位で考えてみました。

気仙沼線BRTはミヤコーバス、大船渡線BRTは岩手県交通に運行業務が委託されており、バスの運行拠点もそれぞれの営業所になりますので、営業所への回送という観点も考慮する必要があるかと思います。

  • 気仙沼線BRT 上り:柳津→前谷地
    気仙沼線BRTではこれが大本命だと思います。前谷地駅では、到着した上り便がそのまま下り便として折り返すようなダイヤにはなっておらず、ミヤコーバス佐沼営業所(BRTの営業拠点の1つ)への回送も多々あるものと思われます。柳津駅でその先の乗客がおらず、前谷地から営業所へ回送する運用になっているなら、片道32分(往復で約1時間)も無駄な運行をするよりも、さっさと佐沼営業所に引き揚げる方がいいでしょう。
  • 気仙沼線BRT 上り:陸前横山→柳津
    これはないと思います。陸前横山駅は専用道上にあり、専用道を出るには柳津駅まで行かないといけないので、陸前横山で運行を打ち切ったところで意味がありません。

気仙沼線BRT 前谷地駅柳津駅陸前横山駅とミヤコーバス佐沼営業所の位置関係
  • 気仙沼線BRT 上り:南三陸町役場・病院前→志津川
    朝に設定されている志津川行きは、そのまま気仙沼行きとして折り返す運用ではないかと思われます。「効率的な運行」を実施するとしたら、夜の20時以降の志津川行きでしょう。
  • 気仙沼線BRT 上り:小金沢→本吉
    回送するとしても、回送先は本吉駅のそばにあるミヤコーバス津谷営業所なので、運行を打ち切る必要はないと思います。小金沢の先で専用道に入らずに回送することもできますが、それをしたところで時間短縮にもつながらないでしょう。

気仙沼線BRT 本吉駅・小金沢駅とミヤコーバス津谷営業所の位置関係
  • 気仙沼線BRT 下り:陸前小泉→本吉
    下りの本吉行きは最終便だけですが、これは結構あり得そうです。
    といっても、陸前小泉駅の先、専用道の出口は本吉駅の直前にしかないので、本吉駅手前まで来ることには変わりないはずです。
    ただ、本吉駅の乗降場に到着した場合、バックしない限りはそのまま小金沢との途中の専用道出口まで進むしかなく、結構回送距離が長くなるので、その手前で専用道を出られれば効率的になります。
  • 気仙沼線BRT 下り:東新城→気仙沼
    確かに、乗客は南気仙沼不動の沢で降りてしまい、気仙沼へは誰も乗っていないというケースもありますが、基本的にはやらないと思います。
    途中の交差点で出れなくはないでしょうが、普通に専用道を気仙沼駅まで進み、駅の東側の出口から駅前に出て、ミヤコーバス気仙沼営業所に回送する形になると思います。

南気仙沼駅~気仙沼駅とミヤコーバス気仙沼営業所の位置関係
  • 大船渡線BRT 上り:内湾入口(八日町)→気仙沼
    これはまずないと思います。大船渡線BRTの気仙沼側では、気仙沼駅の西側にある大船渡線BRTの転回場まで進んで折り返すしかルートがないので、途中で打ち切る意味がありません。
  • 大船渡線BRT 下り:奇跡の一本松→陸前高田
    1日に1便だけ、気仙沼陸前高田行き(改正ダイヤで陸前高田着15:47)の設定がありますが、まあこれもやらないでしょう。陸前高田から別の便の運用に入るかもしれないし、回送するとしてもそんなに効率的になるわけじゃないので。
  • 大船渡線BRT 上り:高田高校前→陸前高田
    これも1日に1便だけ、盛発陸前高田行き(改正ダイヤで陸前高田着 20:33)の設定がありますが、おそらくその後、陸前高田20:47発の盛行きとして折り返すのではないかと思います。
  • 大船渡線BRT 下り:栃ヶ沢公園→陸前高田
    これは、陸前高田でそのまま別の営業運転に入る運用でなければあり得ると思います。竹駒駅付近にある岩手県交通の拠点(大船渡営業所高田支所)に回送するなら、栃ヶ沢公園から回送する方がはるかに近いので。ただ、なんとなくですが、陸前高田のような運行上の拠点となる駅に向かう便ではやらないのではないかという気もしています。
  • 大船渡線BRT 上り:竹駒→陸前矢作
    大船渡線BRTでは、ここでの適用が一番あり得ると思います。陸前矢作では、到着した上り便がそのまま折り返すとは限らないダイヤ設定であり、実際に竹駒駅や陸前矢作駅の付近ではバスを回送しているのをよく見かけます。竹駒駅で回送できれば営業所はすぐそばにあります。

陸前矢作駅~陸前高田駅と、岩手県交通大船渡営業所高田支所の位置関係
  • 大船渡線BRT 下り:田茂山→盛
    田茂山駅の下り乗降場からは、盛駅まで専用道を出られる場所がないのでやらないと思います。

田茂山駅・盛駅岩手県交通大船渡営業所の位置関係

そういえばバス運転士不足と「2024年問題」の件

最近のバス事業に関する発表としては珍しく、バス運転士不足にも、いわゆる「2024年問題」にも全く触れられなかった今回のBRTのダイヤ改正

実際、さまざまな見直しは行われるものの、トータルの便数としては、この後で細かく見ていきますが減便は一切ありません。

もちろん、JR東日本や運行業務を受託しているミヤコーバス、岩手県交通が運転士不足と無縁であるということではなく、JR東日本宮城交通(ミヤコーバスの親会社)は、宮城県内のBRTの駅に運転士募集のポスターを掲出しているし*3岩手県交通は各地で路線廃止や減便を余儀なくされています。

BRTの運転士を募集するJR東日本宮城交通のポスター(2023年11月、気仙沼駅にて)

そういった状況から、さすがにBRTの減便もあり得るのではないかと思っていたのですが、今のところは三社の企業努力でなんとか維持できているということなのでしょう。

宮城交通やミヤコーバスは、まだ表立って大規模な減便を行うような動きにはなっていないと思うのですが、岩手県交通の方は、周辺の路線バスを次々と削っている中でBRTの運行を維持し続けているので、相当厳しいのだろうと思います。まあ、バス13台分(岩手県バス協会のWebサイトに記載されているJR東日本のバス台数)の受託事業となると相当大規模で、それだけの一定の収入がある事業は手放せない、ということもあるかもしれませんが。

ちなみに、現在、陸前高田市が素案として提示している地域公共交通計画*4によると、「交通事業者からみた問題点・課題」として、JR大船渡線BRTについて「JRの継続姿勢があれば運行していく。」と記載されています。

陸前高田市地域公共交通計画(素案) P.63より

文脈を補完しないとかなり謎な文章ですが、おそらく、ヒアリングした相手はJR東日本ではなく岩手県交通の営業所ではないかと思います。そして、岩手県交通の回答者が、「JRの継続姿勢があれば(つまり、JRがBRTの運行を継続するというのであれば)運行していく」と言っているのだろう、と解釈できます。というかそれ以外にまともに解釈のしようがありません。

その上に書かれている市内路線(市が運行するコミュニティバス)でいろいろな問題点が挙げられているのと比べると、岩手県交通ももちろん同じような問題は抱えているのでしょうが、それでもJRが運行するというのであればちゃんと協力するので、問題点として挙げる必要はない、ということかもしれません。

いずれにしても、この辺はバス業界全体の動きも含めて、今後の動向を見守るしかありません。

現行ダイヤとの比較

ここからは、昨年と同様、現行ダイヤと改正予定ダイヤ(ニュースリリースで公表されたもの)を並べて、1便ごとに比較してどこが変わったのかを見ていきたいと思います。

ニュースリリースでは、

の4点が挙げられていますが、他にもいろいろと細かく変わっていたりします。

なお、改正ダイヤはあくまでニュースリリースで公開された、12月15日時点のダイヤであり、最終的なダイヤが変わる可能性はないわけではありません。でも、よほど問題視されて外部から変更を要請されたりしない限りは、変わることはないのではないかと思います。

気仙沼線BRT下り(前谷地・柳津→気仙沼)所要時間短縮でパターンダイヤに乱れが

現行ダイヤでは、運行間隔を気仙沼駅発着基準で15分単位にきっちり揃えるパターンダイヤが導入された気仙沼線BRT。

昨年のダイヤ改正の記事(2023年3月18日 気仙沼線BRT・大船渡線BRTダイヤ改正について)の中で、

パターンダイヤは、このように個別の便ごとに利便性が低下する面もあり、今度はそこを適正化しようとすると、結局パターンが崩れていく、ということになりがちです。

ですので、次回のダイヤ改正でパターンが維持されるのか、また個別に調整をしていくのかは注目ポイントだと思います。

と書きましたが、さっそくその通りとなりました。

朝通学時間帯で一部の便の時刻を変更

表1 気仙沼線BRT下り 朝通学時間帯の時刻変更

志津川駅7:01発の便を10分早めて6:51発とし、前の便と5分間隔で運行するように変更します(表1の①)。

これ以降の表で、白地黒文字は2024年3月の改正予定ダイヤ、黄地の茶色文字は現行ダイヤを示します。緑枠で囲っているのは時刻変更などを意味します。

この変更は、ニュースリリースでは、「(3)高校の登下校時間帯の選択肢を増やします」の中で、「下りの登校時間帯の時刻を見直します」として挙げられているものになります。高校最寄りの駅である陸前階上駅、不動の沢駅でそれぞれ7:51着、8:05着となります。

現在のダイヤでは、気仙沼駅着時刻でいえば7:53、8:08、8:23、8:38と15分間隔で並んでいますが、2022年3月改正のダイヤでは、7:53、8:03、8:08、8:13 と8時周辺に便が密集するダイヤになっていました。

それを15分間隔にバラしたのですが、改めて8:23着→8:12着に変更したということは、現行ダイヤの変更があまりよくなかったと認めているようなものです。

この部分、「改正によって利用しづらくなる人も出てくるかも」と懸念していたのですが、やっぱりそうだったかなという感じです。

気仙沼市立病院経由便の所要時間短縮による15分パターンの乱れ

表2 気仙沼線BRT 気仙沼市立病院経由便(1便目)

気仙沼線BRTのうち、1日上下3便運転されている気仙沼市立病院経由の便で、松岩~南気仙沼間の所要時間を短縮するように見直したことは前述の通りです。

所要時間を短縮したものの、始発の本吉駅発車時刻を変更していないため、短縮した時間の分、前後の便と運行間隔がズレてしまっており、気仙沼駅着時点で前の便と28分、後の便と32分という間隔になっています(表2の②)。

本吉駅発車を8:27に2分遅らせるだけで、現行ダイヤと同様、気仙沼着時点でパターンを揃えることができるのに、なぜそうしないのかが不思議です。

実は、2022年改正のダイヤでは下りの運行間隔を揃える基準は本吉駅に置かれていて、本吉駅発車時刻で5分間隔になるように配置されていました。なので、本吉駅発か気仙沼着のどちらかで間隔を揃えるようにしているなら理解できるのですが、この場合、本吉駅基準でも前後の便との間隔が12分、48分と中途半端になっています。

別にパターンダイヤにこだわらないといけないというわけではないのですが、現行ダイヤで綺麗なパターンダイヤにして、それをダイヤ改正のポイントとして提示していたのに、さっそく簡単に崩すような設定にする理由がよくわからないのです。

なお、ここで挙げたのは下りの1便目ですが、残りの2便も同じような形となっています。

気仙沼市立病院到着便(2便目)の時刻変更

表3 気仙沼線BRT下り 気仙沼市立病院経由便(2便目)の時刻変更

1日上下3便の気仙沼市立病院経由便で、下り2便目の病院着時刻を37分繰り上げる形で便自体を再配置します(表3の③)。上り便の変更については後述します。

表で、現行ダイヤの赤枠は改正ダイヤで削減される便、改正ダイヤの水色枠は増発される便を示します。同じ番号をつけているのは、削減と増発が1対1で対応していることを示します。

変更自体は利用実態に沿ったものだと思いますが、これにより、この時間帯、気仙沼着で綺麗な30分間隔になっていたのが、9:52、10:15、10:22、11:22着と大きくパターンが崩れることとなっています。

7分前を走る前の便(1921K)を気仙沼市立病院経由にすればいいようにも見えますが、今のところ、気仙沼市立病院経由は本吉駅発着の便に限っていることと、気仙沼駅大船渡線BRT(改正ダイヤで10:01発)に乗り継げる便のため、これ以上遅らせるのは難しそうです。

前谷地駅始発便の所要時間短縮による15分パターンの乱れ

表4 気仙沼線BRT下り 前谷地駅発の所要時間短縮

気仙沼線BRTの所要時間短縮のうち、前谷地~柳津間でも所要時間が2分短縮されていますが、この短縮により、柳津駅以降で15分パターンからズレる形となっています(表4の④)。

柳津駅基準で見ると、現行ダイヤでは前後の便との間隔が75分、45分なのに対し、改正ダイヤでは73分、47分となっています。

これも、所要時間を短縮した分、前谷地駅発車を2分遅らせれば解決する話ではあるのですが、気仙沼市立病院経由の場合と違い、そうしづらい事情もありそうです。

というのは、気仙沼線BRTが前谷地駅に乗り入れているのはひとえに石巻線との乗り継ぎのためであり、前谷地駅発車を遅らせるということは、石巻線からの乗り継ぎの待ち時間が増えるだけで、利便性の向上にはならないからです。

これは1日5便の前谷地駅始発便すべてで同様の設定になっています。

平日ダイヤと休日ダイヤでの便の分離

表5 気仙沼線BRT下り 平日ダイヤと土休日ダイヤで別々に設定された便

これまでおそらくほとんどなかった設定だと思いますが、平日ダイヤと休日ダイヤで全く別の時間に設定される便が、気仙沼線BRTでいくつか出てきています。

表5の⑤では、本吉駅18:13発の便が平日のみの運転に変更され、休日ダイヤでは14:58発の便が代わりに追加される形になります。

通勤・通学需要の少ない休日ダイヤで、一部の便を日中に振り向けるという意味ではあり得る設定だと思います。

最終便の時刻繰り上げ

表6 気仙沼線BRT下り 最終便の時刻繰り上げ

柳津駅発本吉駅行きの最終便が9分繰り上げられます。最終便の時刻繰り上げというとマイナスなイメージですが、柳津駅での気仙沼線列車からの乗り継ぎ時分が15分→6分になるため、改善方向の変更と言ってもよいと思います。

気仙沼線BRT上り(気仙沼→柳津・前谷地)気仙沼線列車等の乗り継ぎがやや不便に

なんだかネガティブなことばかり書いているような気がしますが、実際に一番気になるのがそこなのでしょうがありません。

気仙沼~本吉間を中心にいろいろな変更が入っているのですが、その影響からか本吉~前谷地間のダイヤが変わり、結果として柳津での気仙沼線列車の乗り継ぎが不便になるなど、乗り継ぎがよろしくなくなるところがいくつか出ています。

なお、気仙沼線BRT以外のダイヤは現行ダイヤを参照しているので、もし今後ダイヤが変わる場合はこの限りではありません。

早朝の志津川行き快速便を15分繰り下げ

表7 気仙沼線BRT上り 快速志津川行きの時刻変更

気仙沼線BRT唯一の快速便である早朝の陸前小泉志津川行きが、15分繰り下げての運転となります(表7の①)。

何気ない変更にも見えるのですが、ちょっと意図を掴みかねています。

まず、前後の便との間隔に偏りが出ることが1つあるのですが、それは置いておくとして、もともとこの快速便は、志津川駅での仙台行き高速バスへの乗り継ぎをアピールして2021年3月のダイヤ改正で設定されたのです*5

改正ダイヤでは志津川駅7:00着となっていますが、現在の仙台行き高速バスは道の駅さんさん南三陸(JRの志津川駅と同じ場所)の発車時刻が7:03となっています*6。乗り継ぎ時間は3分しかなく、異なる事業者のバス路線の乗り継ぎとしてはかなり危なっかしい設定です。

実際のところ、この快速便で清水浜志津川間11分というのは割と余裕がある設定で、通常は数分程度早着するだろうし、BRTを降りた同一地点で高速バスが発着するので、乗り継げないということはほとんどないとは思うのですが、それにしてももう少し余裕を持たせてもいいのでは……と考えてしまいます。

平日ダイヤと休日ダイヤの分離

表8 気仙沼線BRT上り 7時台の1便を休日ダイヤでは10時前後に移動

表9 気仙沼線BRT上り 16時台の便を休日運転とし、平日に11時台の便を追加

下りでも設定されていた、平日ダイヤと休日ダイヤでの便の分離が、上りでは2か所設定されています。

その1つ目が、気仙沼駅7:15発の便を平日のみ運転とし、休日ダイヤでは9:50発の便を設定するというものです(表8の②)。これは、通勤・通学需要が少ない休日は日中帯に移動させるということで、なるほどという設定です。

2つ目は、気仙沼駅16:15発の便を休日のみ運転とし、平日ダイヤで11:15発の便を追加するというもの(表9の④)。こちらは逆に、平日と休日が逆じゃない? と思ってしまう不思議な設定です。

気仙沼線BRT、大船渡線BRTとも、通学需要を意識した設定が多く、特に現行ダイヤでは15時台、16時台を手厚くするような変更が行われていました。

気仙沼駅16:15発というとまさに高校生の下校時間帯で、不動の沢駅から高校生が大量に乗車するはずです。この時間帯の便で平日の運転をとりやめるというのはちょっと意図を測りかねています。

ちなみに、気仙沼駅16:15発というのは、知る人ぞ知る、大船渡線列車との同時発車が見られる便でもあります。

昼間の本吉~柳津間の時刻を繰り上げ

表10 気仙沼線BRT上り 昼間の本吉~柳津間の時刻を変更

気仙沼駅11:15発の柳津行きは10:45発に変更され、本吉~柳津間では31分繰り上がります(表10の③)。これに関連して、11:15発の本吉行きが平日のみ追加される形になります。

本吉~柳津間の運行間隔を見た場合、現行ダイヤで120分、60分という間隔だったのが、前後とも90分間隔に揃うのでバランスが良くなります。

一方で、柳津駅での気仙沼線列車との乗り継ぎを見ると、現行ダイヤで柳津駅発車が13:30のため、そのままであれば乗り継ぎ時間が26分から57分となります。26分ならまだしも、1時間近くとなると、乗り継ぎに適した設定とは言いづらくなります。

気仙沼駅のように、待合室があって隣にNewDaysがあって、のんびり待てるならまだいいのですが、柳津駅無人駅となって駅舎は閉鎖され、駅周辺に時間が潰せるような店舗もありません。10分ほど歩くと食事ができる店がいくつかあるようですが、それだと逆に57分では時間が足りない感じです。

運行間隔のバランスと、列車との乗り継ぎのどちらを優先するかは難しいところだとは思います。

気仙沼市立病院経由便(1便目)の時刻を繰り上げ

表11 気仙沼線BRT上り 気仙沼市立病院経由便の時刻繰り上げ

1日3便の気仙沼市立病院経由便のうち、1便目の時刻が気仙沼市立病院発13:05→12:09に繰り上がります(表11の⑤)。気仙沼駅12:00発の便を11:50発に変更して病院経由とし、12:45発の便は赤岩港経由に変更となります。

下りでは2便目の病院着が10:32→9:55に繰り上げとなりますが、このあたり、もしかしたら通院で利用する人の個々の都合にあわせて、今後も都度都度変更されていくのかな、と思いました。

夕方の本吉~前谷地間の時刻を繰り上げ

表12 気仙沼線BRT上り 夕方の本吉~前谷地間の時刻を繰り上げ

夕方では、先ほど言及した気仙沼駅16:15発の便の運転日変更に関連して、前谷地行きの便が気仙沼発16:00に変更となり、本吉駅以降の時刻が16分繰り上がります(表12の⑥)。

前谷地駅での石巻線への乗り継ぎを見ると、小牛田行きが18:51発、女川行きが19:09発なので、どちらも乗り継ぎが改善するわけではなく、むしろ待ち時間が長くなります。

実は、この前谷地行きの便は小牛田・仙台経由で東京へ戻る時に乗車する機会が多かったのですが、現行の13分待ちでも若干持て余し気味な感じでした。なので、これ以上待ち時間が延びるとなるとちょっとなあ……と感じてしまいます。

気仙沼駅16:15発を休日のみ運転に変更したこととあわせて、この辺の変更はちょっと意図が掴めないでいます。

夜間の運転間隔変更

表13 気仙沼線BRT上り 18:00以降の運行間隔変更

気仙沼駅18:00発以降では、現行ダイヤで30分間隔で統一されていたのが見直され、18時台に3便が発車する一方、20時台の便がなくなります(表13の⑦)。部活で遅くなる高校生にとっては、18時台に使える便が増えることになります。

20時台の柳津駅での気仙沼線列車への乗り継ぎについては、小牛田行きの柳津駅発が20:59なので、待ち時間が10分から26分に延びます。ただ、これは2022年改正のダイヤでは20:34着だったのが、現行ダイヤで20:49着になり、また20:33着に戻るという形なので、まあ元通りになったという感じでしょう。

大船渡線BRT下り(気仙沼陸前矢作→盛)今回は小幅な変化に

現行ダイヤでは、何をどう組み替えたのか説明に困るくらいの変化があった大船渡線BRTの下りダイヤですが、今度の改正ダイヤは小幅な変更となっています。変更点は2点で、いずれもニュースリリースで言及されているものです。

普通便と快速便を入れ替え、高田高校前駅での盛行き最終便を繰り下げ
表14・表15 大船渡線BRT下り 普通便と快速便の入れ替え

気仙沼発盛行きで、10時台の便を普通から快速に、19時台の便を快速から普通に変更します(表14・表15の①)。これは高田高校前駅での下校時間帯、盛方面への乗車機会を増やすことを目的とした変更となります。

これはこれでいいのですが、もともと、現行ダイヤで高田高校前駅から盛方面の発車時刻を大幅に繰り上げていたのです。2022年改正のダイヤで20:09が最終だったのが、現行ダイヤで19:05に1時間以上も繰り上げていました。本当にこれでいいのかと若干気になっていたのですが、結局、また40分繰り下げることになったわけです。

BRTのダイヤはここ数年、トータルの運転回数、停車回数は変更せず、便の再配置や組み換えで対応するということでやってきていて、その制約が厳しいのだろうとは思いますが、ダイヤ改正にあたって利用者のニーズをどこまで汲み取っているのか、ということをちょっと考えてしまいます。

なお、高田高校の最終下校時刻は19:00のようです*7。だとすると、やっぱり最終便が19:05というのはギリギリすぎて無理があったんじゃないでしょうか。19:20ごろに発車する便があればベストなのかもしれません。

表16 大船渡線BRT下り 8時台~12時台

ちなみに、この変更により、午前中に陸前今泉駅では4時間半、高田高校前駅と高田病院駅では4時間近く、盛方面の便が停車しないことになります(表16)。

陸前今泉駅は1日の平均乗車人数が1人というレベルなのでまあいいのですが、高田高校に休日の部活で通う高校生とか、高田病院にBRTで通院する人とか、大丈夫なのかな? と心配になってしまいます。

陸前矢作陸前高田間の便の配置変更
表17・18 大船渡線BRT下り 陸前矢作陸前高田間の便の配置変更

陸前矢作陸前高田間では、19時台の最終便を削減し、13時ごろに配置します(表17・18の②)。

これにより陸前矢作発の最終便が18:47となり、47分繰り上がる形となります。

だいたい、夜間に周辺部から町の中心部に向かう人というのはそんなにいないので、そういう意図での変更かなという気がします。

大船渡線BRT上り(盛→陸前矢作気仙沼)乗り継ぎ改善?改悪?

大船渡線BRT上りは、下りと同様小幅な変更となりました。

三陸鉄道との乗り継ぎ改善の一方、BRT間の乗り継ぎができなくなる変更もあったりします。

朝時間帯の盛~陸前矢作間の運転時刻を20分繰り下げ、三陸鉄道との乗り継ぎ改善

表19 大船渡線BRT上り 朝時間帯の運転時刻繰り下げ

盛駅8:20発の陸前矢作行きを20分繰り下げて8:40発とします(表19の①)。

三陸鉄道盛駅着8:28の列車があるので、三陸鉄道からBRTへの乗り継ぎが可能になりそうです。

陸前高田陸前矢作間の便の配置変更

表20 大船渡線BRT上り 陸前高田陸前矢作間の配置変更(昼間)

表21 大船渡線BRT上り 陸前高田陸前矢作間の配置変更(夜間)

下りでもあった陸前高田陸前矢作間の便の配置変更ですが、ニュースリリースに書かれているような、陸前高田10:03発の便を追加して夜間の便を見直す、という単純な変更ではありません。

まず、陸前高田12:53発の毎日運行の便を、10:03発に変更します(表20の②)。その上で、平日のみ運転する陸前高田20:13発の便を、同じ平日のみ運転の便として12:53発に変更します(表20・表21の④)。

結果として、10:03発の便を新設、12:53発を毎日運転から平日のみ運転に変更、平日のみ運転の20:13発の便を削減、という形になります。

昼間の盛~陸前矢作間の運転時刻を20分繰り下げ

表22 大船渡線BRT上り 昼間時間帯の運転時刻繰り下げ

朝の時間帯と同様、盛駅11:20発の陸前矢作行きが、20分繰り下げられて11:40発となります(表22の③)。

ただ、こちらは三陸鉄道との乗り継ぎ改善にはつながらないので、意図が掴みづらいところがあります。

メリットとしては、盛~陸前高田間で前後の間隔を60分に揃えるということがあります。特に、次の12:40発の便は、休日には三陸鉄道からの乗り継ぎを受けて混雑することも多いので、前の便との間隔を詰めることで、いくらかでも混雑の緩和につながることもあるかもしれません。

一方で、陸前高田では陸前高田始発の気仙沼行き(12:13発)へ乗り継ぎができなくなります。

それなら、この気仙沼行きを12:33発に変更すればよかったのでは、と考えたりもしますが、そうすると陸前高田気仙沼間で概ね1時間間隔なのが崩れるほか、気仙沼駅で13:15発の前谷地行きに乗り継げなくなるので、それがいいのかどうか、という話になります。

根本的には、盛~気仙沼間と陸前高田陸前矢作間の便に再編成すれば全体的にうまく収まる気がしますが、バスや運転士の運用の都合もあったりするんでしょうね。接続できない状態がいいとは思えないので、このあたりはまた翌年、見直しが入るのかもしれません。

まとめ:いろいろと苦労が垣間見える感じのダイヤ

以上、2024年3月のBRTダイヤ改正について見てきました。

現行ダイヤで導入されたパターンダイヤは、大船渡線BRTでは変更が小幅だったこともあり、概ね維持される形になりましたが、気仙沼線BRTでは、やっぱり綺麗なパターンダイヤは無理でした、ということになりそうです。

それぞれの変更点の中で、意味がわからないとか、改悪なんじゃないの、ということを書いたりもしたのですが、運転士やバスの運用といったことは利用者目線ではなかなか見えないので、もしかしたら、ダイヤとしては維持できているけどやりくりはカツカツでやむを得ない、ということもあったりするのかもしれません。昨今のバス事業全体の状況を見ていると、便数が維持されているだけで素晴らしいことなのかも、という気もします。

ちなみに、2024年秋頃までに気仙沼線BRTの柳津~志津川間のBRT専用道で、自動化レベル4(限定された条件下での完全自動運転)の自動運転を始めることを目標として実験などが進められています*8。こちらの成否も注目ですね。