大船渡線BRT 陸前今泉・大船渡丸森・地ノ森・田茂山各駅の工事状況(2020年2月下旬時点)
JR東日本の大船渡線は気仙沼~盛間がBRT(Bus Rapid Transit=バス高速輸送システム)で運行されており、一部で鉄道の線路敷を活用した専用道が整備されています。
BRT移行後、沿線の気仙沼市・陸前高田市・大船渡市の要望を踏まえて駅の増設が進んでおり、今年3月14日のJRグループダイヤ改正においても、陸前今泉(陸前高田市)・大船渡丸森・地ノ森・田茂山(いずれも大船渡市)の4駅の開業が予定されています*1。
参考として、2019年10月時点の大船渡線BRTのルート図は下記の記事にありますのでご参照ください(新駅の情報についても反映しています)。
JRグループの中では、札幌圏の快速エアポートの増発、常磐線の全線運転再開、東海道新幹線ののぞみ増発などの大きなトピックがありますが、4駅もの一挙開業は、それらにも引けを取らないほどのサービス向上と言えるのではないでしょうか。
今回は、2月下旬に各駅の工事状況を見てきましたので、その報告です。
陸前今泉駅(長部~奇跡の一本松間)
陸前今泉駅は、陸前高田市内の長部(おさべ)~奇跡の一本松間にできる新駅です。震災後の再整備が進む今泉地区に設けられます。
長部~奇跡の一本松間は国道45号をまっすぐ進みますが、一部の便*2が迂回し、陸前今泉に停車します。
陸前今泉駅付近の風景。住宅用に区画整理され、区画ごとに番号が付けられています。右奥には今泉団地が見えます。
陸前今泉駅のすぐ北側にある、「今泉地区コミュニティセンター」の看板が立つ建物。建物は真新しく、封鎖されて中に入れません。おそらく新しく建設され、今後供用されるものでしょう。
陸前今泉駅の全景。南側から撮影しています。左側が盛方面行き、右奥が気仙沼行きとなります。左側の高いところにある道路は三陸自動車道です。
道路の両側に、バスベイ(バスの停車専用スペース)を設けたバス停となるようです。
こちらは北側から撮影したもの。左手前側が気仙沼方面行きになります。


盛方面行きのバス停。乗り場の奥に待合室が設けられるようです。坂道上に設けられるため、乗り場の傾き具合と、水平を保つように設けられる待合室の対比が凄いですね。
あとは待合室を完成させ、乗り場の背面に駅名標などのパネルを取り付ければ完成になりそうです。
- 震災後に整備された住宅地付近に設けられる新駅
- 一般道の坂道上に設けられる駅
という点は、気仙沼線BRTの志津川中央団地駅と類似しており、駅の設備としても同様のものになるようです。


こちらは気仙沼方面行きのバス停。
支柱が前側にあるため、柱間にパネルを取り付けるわけでもなく、あとは路面を舗装してポールを立てれば完成という状態のようです。
黄色いバス停標は、地元のタクシー会社が運行している市内コミュニティ路線の「気仙町高台」バス停になります。
この場所自体が、高台に向かっての上り坂の途中になるためすでに結構な高さがあり、バス停の奥に中心市街地方面が見渡せるのが印象に残ります。
大船渡丸森駅(細浦~下船渡間)
大船渡丸森駅は、大船渡市の南側、細浦~下船渡間に設けられます。
頭に「大船渡」が付いているのは、おそらく阿武隈急行の丸森駅との重複を避けたものなのでしょう。東北の太平洋沿岸には、陸前階上(気仙沼線BRT)と階上(八戸線)、原ノ町(常磐線)と陸前原ノ町(仙石線)など、南北で同じ地名が付いていて、駅名にも反映されている例がいくつもあります。
少し北側の国道45号上に「丸森展勝地」というバス停がありますが、この「展勝地」という名前が示すように大船渡湾を高台から一望できる一帯で、付近にはいくつか観光向けの旅館・ホテルが存在しています。
そのうちの1つ、大船渡丸森駅の付近にある温泉旅館「大船渡温泉」。新駅ができるとBRTでのアクセスがとても楽ちんになります。
どのぐらい楽ちんかというと、目の前に駅に続く通路(右下方向に向かう工事中の部分)が作られるぐらいです。
左側にちらっと見える跨線橋はBRTをまたぐ橋で、事実上旅館専用だったのが、BRTの駅に続く道としても利用されるようになります。
旅館に続く跨線橋の奥に、工事中の新駅が見えます。支柱は立っているようですが、上屋はまだ見えません。
こちらは、通路入口から駅方面の全景。大船渡丸森駅には、上屋の他、待合室も設けられることになっていますが、その姿もまだまったく見えません。
下記のニュースリリースによると、
4 月下旬までに、順次、各駅設備の完成を予定しています。
とあるので、3月14日時点では仮設状態での開業となるのかもしれません。
大船渡線BRT新駅「大船渡丸森駅」「地ノ森駅」「田茂山駅」の駅設備について
https://www.jr-morioka.com/cgi-bin/pdf/press/pdf_1582094136_1.pdf
(JR盛岡支社ニュースリリース 2020年2月18日)
地ノ森駅・田茂山駅(大船渡~盛間)
大船渡~盛間を概ね3分割するような感じで設けられるのが、地ノ森駅と田茂山駅。海側は盛川沿いの工業地帯、山側は住宅地といった一帯を南北に進んでいくエリアです。
特に田茂山駅は市民体育館、文化会館、警察署といった公共施設にも近く、市内交通としての利便性向上に貢献しそうです。
大船渡線BRTに乗っていると、下船渡~大船渡・盛という市街地内の移動に利用する方が結構見受けられます。
地ノ森駅
地ノ森駅が設けられる交差点。右側が盛方面です。この両側に片面ずつ乗降場が設けられます。


盛方面の乗降場。土台はできていますが、床面の舗装や上屋の整備はまだまだこれからです。乗降場になる部分は既存のガードレールが取り外され、仮設のガードレールになっているようです。
気仙沼方面の乗降場。こちらも同じく土台だけはできているという状態。
手前にある廃屋がものすごい状態で放置されています。この廃屋の目の前に通路ができるわけではなく、一旦専用道の反対側に渡って、冒頭の交差点につながる通路が用意されることになっています。
いずれにしても、住宅などがすでに建て込んでいる中に新駅を作るので、隙間を見つけて最低限のスペースで設けているという感じが伝わります。鉄道駅だったらこういうわけにはいかないですね。
田茂山駅
田茂山駅は、盛駅に向かって三陸鉄道と合流する付近に設けられます。交差点から東側のすぐ先には三陸鉄道の踏切があります。
反対方向の山側を向いて撮影。左奥に「mazda」の看板が見えますが、付近には自動車販売店や自動車整備工場など、自動車関係の施設が多く見受けられました。
また、この交差点はBRTでは珍しく大船渡線の線路が浮き出ているのがわかります。もとからこうなっているのか、舗装が剥げたために線路が露出しているのかわかりませんが。


この駅も、交差点を挟んで両側に片面ずつ乗降場が設けられます。
まずは盛行きの乗降場。こちらは自動車整備工場に隣接して設けられますが、まだ土台すらできていません。


こちらは気仙沼方面の乗降場。同じく、囲いはあるものの土台もできていないようです。
また、こちらの乗降場に向かうためには、手前にある水路を跨ぐ必要があるのですが、その整備に着手している様子もありません。
この様子を見ていると、本当に3月14日に開業できるのかも不安になってきます。まあ、土台だけ作り、ポールを立てて仮通路を確保すれば、とりあえず駅としては稼働できそうではありますが……。
田茂山駅の上り乗降場(気仙沼方面)については、上記の図の通り、水路を跨ぐ通路が整備されるまでは仮通路が設けられる旨アナウンスされています。
仮通路の入口は、セブンイレブンの駐車場です。ここから、専用道の反対側(エメラルドグリーンの重機がいるあたり)へ仮通路を設ける形になるようです。
まとめ
以上、4駅の状況を見てきました。陸前今泉については、3月14日には完成していそうな感じなのですが、他の3駅はかなり仮設状態での開業になりそうです。特に田茂山駅については、まだ土台すらできていないということで、本当に大丈夫なのか素人ながらやきもきしてしまいます。
気仙沼線BRT・大船渡線BRTのダイヤ改正のアナウンスは、JRグループ全体から遅れて今年1月22日の発表となりました。私は、鉄道事業廃止届との兼ね合いなのかと想像していたのですが、もしかしたら、この工事状況との兼ね合いで、仮設ではあっても3月14日に開業できるのかどうか、というところの調整がいろいろとあったのかもしれないですね。
次回に訪問するのは開業後になる予定なので、その際にもどんな感じになっているのか見に行けたらと思います。
なお、この大船渡線BRTの新駅と同時に、気仙沼線BRTについても、松岩~不動の沢間の専用道の供用開始、赤岩港駅の新規開業といったトピックがあります。
そちらの工事状況は下記の記事で紹介していますので、あわせてご覧ください。