君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

大船渡線BRT「乗りつぶし」と、BRTについての感想

2019年5月に大船渡線BRT(気仙沼~盛間)に乗ったので、その時のことを書き留めておきたいと思います。

まずタイトルの「乗りつぶし」ですが、厳密には乗りつぶしているとは言いにくい状態ではあります。

実際の運転系統と名目上の路線形状の違いについて

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2019年5月時点のルート図。6月1日より一部経路が変更されています

上のルート図では、青(BRT専用道)と赤(一般道)がBRTルート、グレーっぽい線が現在利用されていない鉄道ルートになります。

この辺、大船渡線BRTの独特な制度なので最初に言及しておきたいのですが、実際の運転系統上は上鹿折陸前矢作間が途切れており、鹿折唐桑上鹿折間(ミヤコーバスの路線をBRTとして利用)、陸前矢作陸前高田間は支線的な扱いとなっています。

ところが、名目上の路線としては、今でも上鹿折陸前矢作経由の一本の路線として扱われており、経路上にない八幡大橋・唐桑大沢・長部・奇跡の一本松・高田高校前・高田病院の各駅は、経路上にあるものとして扱われています。営業キロも設定されており、

  • 八幡大橋は鹿折唐桑が基準
  • 唐桑大沢・長部・奇跡の一本松・高田高校前・高田病院は陸前高田が基準

でキロ数が設定されているように見受けられます。

 

その結果、どういうことが起きるかというと、奇跡の一本松~竹駒間が実際には遠く離れているにもかかわらず、駅間営業キロはわずか0.1キロということになります(一ノ関から、奇跡の一本松=82.4キロ、竹駒=82.5キロ)。イメージとしては下の図をご参照ください。

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こういう、現実の運転系統と名目上の路線形状が大きく異なるということが、大船渡線BRTの大きな特徴となっています。

で、乗りつぶしの話に戻ると、例えば私が乗車記録をつけている「乗りつぶしオンライン」(http://www.noritsubushi.org/)では、大船渡線BRTは名目上の路線形状をベースに一本の路線として扱われていて、気仙沼~盛を乗り通せば完乗という扱いになります。

今回は上鹿折陸前矢作方面には行っていないので、厳密にやるなら途中を飛ばし飛ばしで入力しないといけないのでしょうが、私にとっては乗りつぶしはその地を訪れるモチベーションの1つであり、1駅単位の厳密さを求めているものではないので(他にも、みなし乗車としているところがいくつかあります)個人的にはもう、留保付きの完乗扱いでいいかと判断しています。

(2019/11/16 追記:その後、鹿折唐桑上鹿折陸前矢作陸前高田も乗車し、高田病院経由・非経由も両方乗車したので、一応名実ともに乗りつぶしたことになりました)

乗車中の写真を撮ってなかった件

改めて撮りためた写真を見直したところ、大船渡線BRTについては、気仙沼線BRTのように乗車中の写真を撮ってなかった、ということに気が付きました。

乗車したバスがいずれもそれなりに混んでおり、車内で撮影する雰囲気ではなかったのが理由です。

乗車・下車した気仙沼・奇跡の一本松・大船渡・盛の各駅周辺についてはすでに記事にしていますので、それぞれご参照ください。

a-train.hateblo.jp

代わりに、写真に記録できる以外のことをいろいろと書いていきたいと思います。

一般道の混雑による遅延について

気仙沼から乗車した14:20発盛行きの便は、折り返しバスが一般道の渋滞に掴まったために30分ほど遅延しての発車となりました。

どこが渋滞していたのか見ていると、下の図のあたりが渋滞していました。

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鹿折唐桑~八幡大橋間。この先、国道45号線を山中へ進んでいくと次第に渋滞は解消していきました。

原因として、この南東方向に鹿折半島と大島を結ぶ気仙沼大島大橋が4月に開通し、素晴らしい眺望で知られる観光名所の亀山など、車で訪問する人が激増したことがあるのではないかと思います。北側から大島を訪問するための経路が、ちょうどBRTのルートと重なっているのでした。

大船渡線BRTは一般道の比率が高く、専用道の最終的な整備率は気仙沼線BRTが90%程度なのに対して大船渡線BRTは51%程度にとどまるようです。大船渡市方面はほぼ専用道化されているのに対し、気仙沼市陸前高田市域は大半が一般道であり、その混雑の影響を受けやすい状況にあります。

気仙沼線大船渡線BRTがBRT(バス・ラピッド・トランジット)を名乗っている所以は線路敷を利用した専用道の整備にありますが、その専用道に乏しい区間ではBRTとしての特長を発揮できないことになります。

したがって、この区間では専用道以外の方法でバスに優先権を持たせることも、遅延を抑制するための1つの方法だと思います。まあ、大島へのルートが混雑するのは一時的かもしれず、優先度は低そうではありますが。

 

もう1つ、この件で課題を感じたのは、遅延の案内の問題です。

気仙沼駅でバスが到着するまで、バスロケーションシステムを利用した走行位置案内を見ていたのですが、遅れているはずの気仙沼行きのバスが、なぜか遅れなしの表示になっていました。

気仙沼駅でも、14:20の発車案内はいつの間にか消え、そんなバスなど初めからなかったかのように次の15:20の発車案内に切り替わっていました。

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気仙沼駅の発車案内表示(参考)

案内もなしで1本スルーするつもりなのかと気にしていると、しばらくしてから14:20のバスの発車案内が復活しました。

駅員の方々は遅延している状況を概ね把握していたようですが、案内表示まで自動的に連動しているというわけではなく、いろいろと手作業で切り替えているようです。

この辺、正確で迅速な状況案内に課題を残しているように見受けられました。

気仙沼線大船渡線BRTの運営状況

両方乗ってみた印象として、全体的にみれば、JR東日本はよくやっていると言っていいのではないかと思います。普段使いの交通機関としては大きな不満は感じませんでした。

  • 1本あたりの輸送力減少を増発で補い、運行頻度を高めて利用しやすくしている
  • 沿線市町の要望に柔軟に対応し、特に市街地での駅の増設やルート調整に積極的に対応している
  • 独自のICカードシステム「odeca」を導入し、Suica等も利用できるようにしている
  • 柳津駅気仙沼駅盛駅で鉄道との乗り換えを平面移動でできるようにしている
  • 気仙沼線BRTでは専用道のために橋梁をかけ直すなど、単に生き残った線路敷を転用するだけではなく、専用道の拡充にそれなりの投資をしている
  • 気仙沼線BRTで、柳津で鉄道との接続がない便を前谷地まで直行運転し、石巻線との乗り継ぎ利便性を高めている

穿った見方をすれば、JR東日本がここまで力を入れるのは、他のローカル線に展開するための布石という見方もできるかもしれません。バス転換を提案する時、すでに優れたサービスを提供している事例がある、とアピールできれば受け入れられやすそうですから。

でも、それでもいいと思います。もはや鉄道だけにこだわる時代ではない、ということは、ローカル線の沿線自治体だけではなく、例えば地図における鉄道とバスの扱いの差を是正する等、一般的な認識となっていくべきだと思います。

 

個人的に訪問客目線でいうと、観光バスをベースにした快速型の設定があるととてもありがたいのですが、それはまあ、全体の需要が今後回復していくのであれば、検討もできるかもしれない、というような話でしょうね。今は路線バスを改造した「観光型」を運行するのが精いっぱいだと思います。

 

BRTの専用道を走っている時、確かに乗っているのはバスなのだけれど、ゆるやかなカーブの曲がり方や、車が往来する一般道を横目に走る風景などは、完全に鉄道のそれでした。いったい鉄道とバスの境目はどこにあるんだろうか、ということを考えさせられた経験でした。