前回、下記の記事を公開しましたが、その時に、「BRTは鉄道なのかバスなのか」という問いについて書きました。
専用道から見る車窓はどうみても鉄道のそれだった、それがずっと記憶に残っていたのです。
頭から離れない問いについて確かめるために考えたのは、「BRTを鉄道っぽく撮ってみる」ということでした。
「鉄道っぽく」というのはどういうことかというと、単に記録写真や車両写真として撮るのではなく、自然や街の風景の中に車両を組み込んで撮るということです。
例えば、上の写真のような感じ。
少し調べた限りでは、趣味として撮影されるバスの写真は車両全体をきっちり捉えたものが主流で、風景写真として撮られたものは鉄道に比べるとかなり少ないように見えます。
気仙沼線・大船渡線BRTでも風景写真として撮られたものは少なく、時には「お口直しに鉄道を撮りました」なんて言われてしまう始末。
のりものカメラマンが書かれた下記の記事でも、その大半は乗車中の記録写真であり、最後に「鉄道車輌を見るとホッとする。」とまで書かれてしまっていたりします。
東日本大震災でJR東日本が鉄道としての運営をあきらめた線区のうち、山田線は三陸鉄道に移管され、気仙沼線・大船渡線はBRTに転換されました。
その結果、三陸鉄道は多くの鉄道ファンが歓喜の声をもって迎え、気仙沼線・大船渡線は見向きもされなくなってしまった。そして、沿線の復興の様子や美しい風景なども、写真を通して伝えられる機会が減ってしまった。それがすごく残念に思うのです。
そんなわけで、一眼カメラを買って1ヶ月の駆け出しがいろいろと撮ってきましたので、出せそうなものを公開してみたいと思います。
気仙沼駅から撮れる構図。右の線路は一ノ関~気仙沼間の大船渡線、左側が気仙沼線BRTの専用道です。
写真にいるのは大船渡線BRTの盛行きですが、バスは列車と違って駅でそのまま方向を変えて走り出すことができないので、一旦奥の駐車場に引き上げて転回してきます。なので大船渡線BRTの回送バスもここを通るわけです。
滞在中、バスに乗っていて、列車と並走してピッタリ同時に気仙沼駅に到着した、ということが1度あったのですが、バスのダイヤは水物ですから、もう二度とそんな瞬間には出会えないような気がします。
気仙沼駅を出て、盛駅に向かう大船渡線BRTのバス。気仙沼駅東側、専用道をまたぐ神社への参道から撮影。
同じ場所から反対方向、気仙沼行きのバス。
山裾の高いところを走るので、気仙沼の街並みを見下ろす形になります。
雨でぬれた路面に光るヘッドライトが印象的です。
雨の中、駐車場を出庫して気仙沼駅に向かうバス。
画面右側にある駐車場から右折して専用道に入るため、遠心力で車体が外に傾いています。左後輪の水しぶきといい、バスならではの迫力を感じるシーン。
一日中降り続いた雨が夕方には上がる、との予報を見て、狙っていた構図。
気仙沼線の南気仙沼駅は今のところ一般道にあり、街道沿いの市街地としては最も賑わいのある場所になります。
その南側にある歩道橋から街の活気を写し取るべく、シャッター速度を13秒にし、バスが停車した瞬間を狙って撮影。バスの存在感を保ちつつ、行き交う車の光跡、ぬれた路面の反射などで光に溢れた雰囲気にすることができました。
気仙沼線BRTの陸前階上駅から北方向。まだ日の出直後なので太陽の位置が低く、影になってしまっています。
奥に見えるのは三陸自動車道が気仙沼湾をまたぐ横断橋。東北最大の斜張橋になるそうです。2020年度末開通予定とのことで、完成はもう少し先のようです。
のどかな山間部を走る気仙沼線の本吉駅付近。
左上の感応式信号が鉄道における閉塞信号の代わりで、バスはいったん停車し、信号が青になったら発車します。詳しくはわかりませんが、その先の区間に他のバスが入っている場合は開通しないはずです。
ある運転手さんが話してくれたのですが、ある閉塞区間(便宜上こう書きます)に向かって両側からバスが走ってきていて、相手と同時ぐらいに信号に差し掛かった際(運転席のタブレット端末でわかるらしいです)、相手を優先して通そうとして感応ポイントの手前で待っていると、相手も向かい側で同じことを考えて待っていて、両者でお見合いになってしまったこともあったのだとか。
その本吉町の穏やかな風景の中を走る気仙沼線BRT。陽が傾きつつある午後、逆光で薄曇りなので少し寂しげな雰囲気もありますが、晴れた順光の時にもう一度撮ってみたい大好きな風景です。
大船渡線BRTで、経路が変わってメインルートから外れてしまった陸前矢作駅付近。
木々の奥行きや立体感を出そうと、縦構図で撮ってみました。
臨時駅から始まり、何もない道路上にポツンと標識が立っていた奇跡の一本松駅も、何度かの停車場所の変遷を経て、立派な施設の一部としてようやく安住の地を得ました。
陸前高田市内の東部、西下駅付近の一般道を行く大船渡線BRTのバス。
一般道であっても、真っ赤なボディは独特の存在感があります。
台風19号の影響で、専用道の一部区間に土砂流入等があり、その区間は並行する一般道に迂回していました。それで済むのがBRTの強みの1つですね。もっとも、一般道もダメージを受けて、一時期運休を余儀なくされていた場所もありましたが……。
写真は迂回経路のうちの大船渡線BRT・下船渡駅付近。駅からすぐ山側にある岩手県交通の宮ノ前停留所が、代替停車場になっていました。
気仙沼線BRTの南気仙沼-松岩間。平日の夜は、帰宅する方、特に中学生や高校生でいっぱいになります。流し撮りで車内の様子が窺えるように撮ってみました。
大船渡線BRTの奇跡の一本松駅付近。雨が降り続く陸前高田市内は山が靄に覆われ、とても幻想的な雰囲気でした。
奇跡の一本松の近くで、いくつかの店舗が集まり、集客拠点として長年奮闘していた一本松茶屋。今年9月、目の前に追悼施設・資料館・道の駅などが集まった立派な施設ができたことでその役割を終え、空になった小屋は雨の中、静かに佇んでいました。
奇跡の一本松~陸前高田間、道路沿いの収穫を終えた水田。なんてことはない秋の風景ですが、半年前、造成されたばかりで一面茶色の土地を見ていた者としては、こうして一つの営みが無事に終わった風景を見るだけでも感慨深いものがあります。
大船渡線BRTの長部-奇跡の一本松間にある、震災遺構として保存されている気仙中学校跡。奇跡の一本松駅から歩いて15分ほどです。
掲示された一文を見たら涙があふれそうになり、そのメッセージ性を強める意味で(白トビする空を極力消す意味もありましたが)斜めに傾けた構図で、BRTの存在感を極力弱めて撮影しました。
とりあえずこんな感じです。拙いものばかりですが、記録写真とは違う雰囲気は出ているのではないかと思います。
11月頭の3連休もまた訪問することにしたので、前回は台風の影響で迂回運転をしていた専用道部分や、11月1日に供用が開始される陸前小泉~本吉間の専用道なども見てきたいと思っています。
(2019/11/14追記)その記事を書きましたのでぜひご覧ください。