君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

気仙沼の日の出、防災無線の「恋はみずいろ」

f:id:katayoku_no_hito:20191021061714j:plain

朝日の下を走るBRT 気仙沼線BRT・岩月-松岩間

天皇陛下が即位礼正殿の儀を執り行われる頃、私は宮城県気仙沼に滞在し、4日間JR気仙沼線大船渡線のBRTに乗っていろんな場所を訪ねていました。

前回、5月に訪問した際に思い浮かび頭を離れなかった、「BRTは鉄道なのかバスなのか」という問いの答えを探すためです。

何を言っているんだ、バスに決まってるじゃないか、と言われそうですが、単線の専用道を通り、隣に国道があって多くの車が行き交い、その向こうに海が見える車窓風景は、間違いなく鉄道のそれでした。単にレールが道路に、鉄道車両がバスに置き換わったに過ぎなかったのです。

そんな中、東海岸ですので朝は日の出を見たいと思い、晴れの日は朝一番のBRTに乗って出かけていました。

陸前階上駅の南側にて

最初の日は陸前階上(りくぜんはしかみ)駅付近。南側に田畑が広がる中をBRTの専用道が通る場所があり、そこを目標にして向かいました。

f:id:katayoku_no_hito:20191020051051j:plain

陸前階上で下車した5時10分ごろにはすでに東の空が明るくなってきていました。少し急ぎ気味に南に向かいます。

が、専用道沿いに南に下って最初の一般道との交差点に出てみると。

f:id:katayoku_no_hito:20191020051731j:plain

その先、想定していた場所の専用道は、まだ塞がれて使われていませんでした。

おそらく、次の大谷海岸駅まで専用道を通せるようになった段階で利用を開始するのかなと思います。

あまり時間もないので代わりの場所を探しますが、BRTの専用道を絡めるのは諦めることにしました。

三脚を立てて東の空を見ていると、雲の向こうがだんだんと輝いてきました。

f:id:katayoku_no_hito:20191020060028j:plain

そしてひんやりとした空気と静寂の中、不意に響き渡る朝6時の防災無線チャイム。

YouTubeに上がっていたので、下記の動画でぜひお聴きください。これを聴きながら読み進めていただけると、その情感が伝わりやすいのではないかと思います。


防災行政無線チャイム 宮城県気仙沼市6時

ポール・モーリアの名曲「恋はみずいろ」……という曲名は後で調べて知ったのですが、夜明けの美しい空を見ながらだと、泣き出してしまいそうに感情を揺さぶられるものがあります。

もう8年以上たつこともあり、震災のことは過剰に意識しないようにしているのですが、あの翌日の3月12日、津波から必死に逃げ延びて余震の恐怖に震え、一夜明けて壊滅した町を見た人は、どんな思いでこの曲を聴いたんだろう、ということをふと考えてしまいました。

f:id:katayoku_no_hito:20191020062840j:plain

薄雲がかかりながらも、それがかえって柔和な美しさを感じる日の出。

前日、降り続いた雨が畑に残っていて、それに反射する光がとても印象的でした。

f:id:katayoku_no_hito:20191020061231j:plain

撮影した場所の目の前にスコップが立てかけてあったので、それを手前に持ってきて一枚。

f:id:katayoku_no_hito:20191020061455j:plain

畑の作物のみずみずしさと力強さを強調する感じでも撮ってみました。

BRTと絡めることはできなかったのですが、そんなのはどうでもいいぐらいの美しい日の出を見ることができました。

f:id:katayoku_no_hito:20191020062620j:plain

撮影場所から反対方向。朝日を浴びて、気仙沼行きのBRT、柳津行きのBRTが相次いで専用道を通り過ぎていきました。

松岩駅の南側にて

次の日は、前日、BRTに乗る中で気になった場所があったので行ってみることにしました。

f:id:katayoku_no_hito:20191021063353j:plain

(写真は日の出後に撮影したものです)

気仙沼線の松岩駅から南側に、面瀬川というそれほど大きくはない川があるのですが、そこに巨大な堤防が構築され、その上にBRT専用道のコンクリート橋が架けられています。

付近は津波で大きな被害を受け、いたるところで嵩上げや道路の付け替え工事が進んでいます。

善悪はともかく、自然の力に負けてたまるか、という人類の執念を見るような、そんな一帯です。

f:id:katayoku_no_hito:20191021050321j:plain

朝、松岩駅で下車してみると、この橋に至る専用道の反射灯が天空へつづく道のようでした。

やはり明るくなり始めた東の空を見ながら、撮影場所を探します。

f:id:katayoku_no_hito:20191021054832j:plain

橋のアーチの上にたたずむ鳥のシルエットが。

6時になってまた「恋はみずいろ」が流れ始めました。前日ののどかな風景と違い、造成が続く真っただ中にいると、優しい音色と美しいメロディのもと、厳しい現実を改めて思い知らされるような、また違った印象を受けます。

やがて日が昇り、バスがやってきたのでシャッターを切ったのですが、うっかりしていたことがありました。

f:id:katayoku_no_hito:20191021061714j:plain

バスの上半分しか見えてないのですが、側壁が高くて下半分が隠れてしまうのを完全に見落としていました。

鉄道ならレールに沿って進むので、防音や風対策以外で側壁はそんなに高くする必要はないのですが、バスはそうもいかず、こうした側壁や、少なくともガードレールは必須になります。

BRTの撮影はここが難しいところで、できるだけ俯瞰視点の方がいいという制約が出てきます。

現場を少し見渡した限りでは、あまり適した場所がなさそうではあったのですが、もう一度地図を見ながら再検討してみたいなと思っています(ただ、その地図があてにならないことがある、というのも復興が進むこの地域の実情ではあるのですが)。

 

ちなみに、途中で紹介した防災行政無線のチャイムですが、「恋はみずいろ」は割と汎用的に使われていて、いろいろなアレンジがあったり、自治体によって流す時間が違ったりしているようです。でも、気仙沼市で流れるゆったりとしたアレンジは、朝が一番似合うような気がします。