君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

2022年3月12日 気仙沼線BRT・大船渡線BRTダイヤ改正が発表に

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3月12日開業予定の大谷まち駅を通過する気仙沼線BRT

1月26日、気仙沼線BRT・大船渡線BRTのダイヤ改正が発表されました。改正日はJRグループ全体と同じ2022年3月12日(土)になります。

JR東日本ニュース 気仙沼線BRT・大船渡線BRTのダイヤ改正について
https://www.jreast.co.jp/press/2021/morioka/20220126_mr01.pdf

JRグループで一斉に発表されたのが昨年12月17日で、それからは1ヶ月以上遅れての発表です。これは前年も同様でした。

今回は、気仙沼線BRTで2駅、大船渡線BRTで1駅の新駅が開業するほかは、これまでと比較して小幅な改正となっています。

それは決して悪いことではなく、だんだんと復興が進む沿線の姿が固まってきて、それに対応するサービスの形が安定してきたということでもあります。

以下、ニュースリリースをもとに今回のダイヤ改正について見ていきたいと思います。

新駅関係

気仙沼線BRTで「大谷まち駅」「東新城駅」が開業

大谷海岸駅~陸前階上駅間に「大谷まち駅」、不動の沢駅~気仙沼駅間に「東新城駅」が開業します。

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大谷まち駅の設置場所

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新城駅の設置場所

「大谷まち」というのは不思議な駅名ですが、大谷海岸の砂浜を埋めてしまう防潮堤計画の見直しを要望し、砂浜の復活に繋げた「大谷里海(まち)づくり」という地域活動があり、そこから名前を付けたのでは? という指摘をいただいたことがあります(「里海」を「まち」と読みます)。

www.kesennuma.miyagi.jp

「まちづくり」で一つの単語なので、そこから「まち」だけ切り離すものなのかな?とも感じますが、実際のところ他に由来はないようにも思います。

新城駅付近は国道45号沿いの市街地で、鉄道としては両隣の駅と距離が近すぎる感じもしますが、BRTなら駅があっても不思議はない感じです。

大船渡線BRTで「内湾入口(八日町)駅」が開業

気仙沼駅鹿折唐桑駅間に「内湾入口(八日町)駅」が開業します。

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内湾入口(八日町)駅の設置場所

駅ができる場所の地名としては「八日町」になりますが、気仙沼を代表する観光スポットである「内湾(ないわん)」に近く、それを強調するための駅名なのでしょう。

内湾の目の前というわけではなく、徒歩10分弱はかかるので、「入口」としているのだと思います。

これらの駅の整備状況については、先月現地を訪ねましたので、下記記事をご覧ください。

a-train.hateblo.jp

内湾入口(八日町)駅での高速バスとの乗り継ぎ

内湾入口(八日町)駅の効果で個人的に注目しているのは、大船渡線BRTと高速バスの乗り継ぎです。

仙台と、大船渡線BRT沿線を結ぶ高速バスの中でも、最も便数が多いのがミヤコーバスの仙台気仙沼線ですが、この路線は気仙沼駅鹿折唐桑駅も通らないので、大船渡線BRTとの乗り継ぎが不便でした。しかし、新駅の近くの「市役所前」には停車するので、ここで乗り継ぎができるようになります。

また、現在岩手県北バスが実証運行中の仙台宮古線は、気仙沼でも内湾地区(まち・ひと・しごと交流プラザ)に停車します。

これらとの乗り継ぎについて、陸前高田・大船渡方面へのアクセスに岩手県交通が運行する一関大船渡線も加える形で調べてみました。

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表中の赤字の時刻は、30分以内に乗り継ぎができる、そこそこいい感じの接続を示しています。

仙台と陸前高田や大船渡を直接結ぶ高速バスの便数は少ないのですが、ここでの接続を利用すれば選択肢が増えるのではないかと思います。

ミヤコーバス鹿折金山線との関係

少しマニアックな話をすると、内湾入口(八日町)駅に関して気になっているのは、盛方面のBRTが経由しない上鹿折駅をフォローするためにBRT扱いとしている、ミヤコーバスの鹿折金山線との関係です。

BRTの南側に並行して鹿折金山線が通っており(上の図の黄緑の線)、最寄りのバス停として、高速バスの話でも出てきた「市役所前」バス停があります。

現在、以下のように駅とバス停が対応しています。

これに倣うとすれば、市役所前バス停が内湾入口(八日町)駅に対応するバス停として設定されてもおかしくないと思いますが、リリースではこの点には触れられませんでした。

ちなみに、この設定をすることで何が変わるか、というと、例えば、

  1. 周辺のJR線(大船渡線気仙沼線BRT)で気仙沼駅まで乗車
  2. 気仙沼駅からミヤコーバスの鹿折金山線に乗車し、市役所前で下車

というような移動をして、これをJR線のきっぷとして一枚でまとめて発行する時、現状では着駅が鹿折唐桑駅になります*1が、これが内湾入口(八日町)駅になるかもしれない、という程度の違いです。これによって運賃が変わることはほとんどないと思いますが、ちゃんと計算してみると、もしかしたら新月駅(大船渡線気仙沼の隣駅)あたりからの定期運賃が変わったりするかもしれません。

ただ、微妙と言えば微妙なので、特に何も設定されないのかもしれません。取り扱いを変えると、実際に対応するミヤコーバスの運転手さんも面倒ですしね。

所要時間の変化

大船渡線BRT 高田病院駅~脇ノ沢駅間を4分短縮

大船渡線BRTのうち、普通便が経由する高田病院駅~脇ノ沢駅間で、ルート変更によって所要時間が4分短縮されます。

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高田病院~脇ノ沢間のルート変更

その効果は上の図で一目瞭然です。快速便は高田病院駅を経由しないので、この変更の影響はありません。

これは、復興事業が予定通り終わっていれば、昨年に実施されてもおかしくない内容でした。

高田病院がある「高田米崎間道路」は、高台を結ぶ道路網を強化するということで、脇ノ沢駅がある「アップルロード」と直結する工事が行われていました。

当初は昨年3月末に完成予定でしたが、工事が遅延したため、完成して供用が開始されたのは7月下旬でした。

その時点ですぐに経路を変更するのかと思っていましたが、その後も目の前にできた近道を禁欲的に迂回し続け、今回のダイヤ改正での変更となりました。

まあ、事情はだいたい察しはつきます。このルートを通る普通便は高田高校前駅を通りますが、高校生の下校時刻に合わせたダイヤ改正を昨年に実施したばかりだったので、その時刻が頻繁に変わってしまうことは高校生にとっても面倒な話です。以前はBRT単独で夏や秋にダイヤ改正をすることも多かったですが、サービスの改善も落ち着いてきたので、毎年3月の定期的な改正に集約する、ということももしかしたらあるのかもしれません。

気仙沼線BRT 志津川駅前後の所要時間を1分ずつ追加

今年秋に見込まれている志津川駅の移転に備え、前後の所要時間(陸前戸倉志津川間、志津川南三陸町役場・病院前)を1分ずつ追加するとのことです。

志津川駅付近では、現在の南三陸さんさん商店街を含む北側のエリアが「道の駅さんさん南三陸」として登録され、商店街の北側に公共交通ターミナルを含む施設を建設中です。完成後は志津川駅がそちらに移転する予定で、現在の大谷海岸駅や奇跡の一本松駅と同じように、道の駅と一体化する形になるようです。

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志津川駅の移転のイメージ(移転先の経路・駅位置は想像です)

これも、計画では今年2月に完成するはずでしたが、資材調達に遅れが出て、10月頃完成予定となっているようです。

道の駅への移転に備えて所要時間を延ばすのは昨年の大谷海岸駅と同様ですが、移転前は国道をまっすぐ進んでいた大谷海岸駅と違い、今の志津川駅も上図の通り、国道から外れた転回場に駅が置かれていて、その分の時間はかかっているので、正直、合計2分も所要時間を延ばす必要はあるのかな? という感じはします。

気仙沼駅陸前高田駅間のダイヤ見直し

大船渡線BRTの気仙沼駅陸前高田駅間で日中に1往復増設し、最終便付近のダイヤを見直す形で、以下の通りダイヤが変更になります。

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大船渡線BRTで予定されている便の新設・削除

上記の「新設」「削除」を比べていただければ、全体として運行本数は全く変わっていないということがわかるかと思います。

下りは気仙沼→盛、上りは陸前高田気仙沼の最終が1時間ほど繰り上げ(上りは陸前高田発20:00)となります。が、特にそこがアナウンスされていないということは、ほとんど利用者もいないということなのでしょうか。

今年もBRTの運行ボリュームは維持された

コロナ禍という状況や、今後の需要見通しを踏まえ、今年は昨年以上に鉄道では大幅な減便が予定されています。

昨年はダイヤが維持された大船渡線の鉄道線(一ノ関~気仙沼間)でも、今年は下り列車の2本削減、上り列車1本の運行区間短縮という内容が発表されています。

BRT路線は、もともと需要の変動の影響を受けにくい構造ではありますが、首都圏も含めて鉄道ダイヤに大きく手を入れた以上、BRTも影響は免れない可能性はあると思っていました。

しかし、今年もBRTの運行ボリュームは維持されました。

先に「需要の変動の影響を受けにくい」と書きましたが、ここから先は野次馬レベルの憶測です。

対利用者の面では、JRは「持続可能な交通手段」を主張して、BRTを導入して鉄道を廃止した経緯があり、仮に需要が減少したとしても簡単に減便はしづらい事情があると思います。

また、運行業務を委託しているバス会社(ミヤコーバス、岩手県交通)との間では、減便するということは委託費が減るということになるはずで、バス会社としてはそれは避けたいはずです。BRT路線のボリュームは、距離も便数も自治体が委託するコミュニティバスの運行規模とは比べ物になりません。

つまり、需要の変動が直接的に列車本数に影響する鉄道線と違って、別の要素が大きく絡んでくるBRT路線は、需要の変動の影響を受けにくいのではないか、と考えています。

今後も新駅ラッシュは続くのか。ダイヤは引き続き維持されるのか。鉄道と異なるBRTの独自性は、引き続き注目していく価値があるのではないかと思います。

*1:JR線でたまにある、「営業キロの設定がない駅の運賃は、その先の駅の営業キロで計算する」というのと同様の考え方です。