君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

2022年の三陸花火(三陸花火大会・三陸花火競技大会)

三陸花火大会(2022年4月29日)の花火

岩手県陸前高田市では、2020年から新しく始まった花火大会が催されています。

初回が2020年10月。地域振興はもちろん、コロナ禍で全国の花火大会がどこも中止となる中、打ち上げの機会が失われた花火師を応援する目的もあって始まりました。

その時のことは下記の記事に書きました。

a-train.hateblo.jp

2021年以降は、春に「三陸花火大会」、秋に「三陸花火競技大会」として実施されています。

「競技」がつく・つかないの違いは、プログラム中、花火業者が打ち上げる花火が観覧者や配信の視聴者によって採点され、競技の対象になるかどうか、という点です。ただ、ミュージックスターマインと、業者ごとの花火の打ち上げが交互に展開されるプログラム自体は大きな違いはありません。

2021年の春はコロナ禍で中止となり、秋は私の個人的な都合で訪ねることができなかったのですが、2022年は春・秋とも訪ねることができました。

2022年4月29日・三陸花火大会

この日は、午後から雨が降り出し、夜にかけてしっかり雨が降る予報になっていました。開催されるかどうかも気になりましたが、警報級の雨でなければ開催するということなので、大丈夫だろうと踏んで現地に向かいました。

ただ、会場となる高田松原運動公園は屋外であり、雨をしのげるような装備も持って行けないので、会場で見ることは諦め、付近の雨がしのげる場所で見たいと考えていました。

また、この時初めて、花火は動画と静止画で撮りたいと思い、カメラ・三脚を2セット持ち込むことにしたので、かさばる荷物のことも考えないといけません。

そこで、まず前日に南隣の宮城県気仙沼市に入り、当日朝はいったん、JR気仙沼駅から大船渡線BRTで陸前高田駅へ。

当日朝の陸前高田市内の様子

花火大会に合わせた祭りの準備が進んでいました。この時はまだ晴れています。

陸前高田駅の隣にコインロッカーがあるので、そこに2セット目のカメラなどを入れておき、気仙沼に戻ります。

そして、気仙沼からは花火大会にあわせて設定されたライナーバス(送迎バス)で会場に向かいます。

気仙沼駅から花火会場に向かうライナーバス

気仙沼から陸前高田へは、JRの大船渡線BRTがあるのでわざわざこんなバスを利用しなくていいのでは、と思われるかもしれません。

実際、会場に向かう時には不要なのですが、帰る時には激しい混雑が予想され、BRTで気仙沼に戻ってこれる保証がないこと、そもそもBRTは地元で利用する人のために、外からの訪問客としてはできるだけ避けるべきだろうという考えで、ライナーバスを使うことにしました。

三陸花火は自家用車での来場を前提として設計されていますが、ライナーバスは気仙沼駅発着だけではなく、仙台駅、一ノ関駅盛岡駅といった周辺の主要駅からも設定されており、自家用車以外で会場へ向かう人向けの手段となっています。

撮影の準備が進むカメラマン席

会場には13時前に到着。会場後方のカメラマン席では、すでに三脚とカメラがぎっしり並べられていました。やはり雨を見越して、カメラにビニールをかぶせているのも目立ちます。

三陸フードビレッジ

花火には早い時間ですが、地元や各地から出店している三陸フードビレッジや、ステージでのイベントもあり、それらを楽しみながら過ごすことができます。

まずは、イベントにあわせて三陸各地から集まったゆるキャラの紹介イベントがありました。

北隣の大船渡市のおおふなトンと、地元・陸前高田市のたかたのゆめちゃん

こちらは地元ではおなじみ、北隣の大船渡市のおおふなトンと、地元のたかたのゆめちゃん。両市のイベントでは顔を揃えることも多く、もはやニコイチぐらいの勢いの2キャラ。

岩手県久慈市のアマリンと、宮城県気仙沼市の海の子ホヤぼーや

岩手県久慈市のアマリンと、気仙沼市の海の子ホヤぼーや。NHKの朝ドラ『あまちゃん』『おかえりモネ』の舞台地コンビですね。

その他集まったゆるキャラたち

キャラ紹介の進行は、吉本興業の企画で気仙沼市に住み着いた「住みます芸人」けせんぬまペイ!さん。

海の子ホヤぼーやとけせんぬまペイ!さん

ホヤぼーやとは気仙沼コンビということで、2人でポーズを決めたり、観光PRの先輩として労われたり、サンマソードでツンツン突っ込まれたり、なかなか親しいようでした。

岩谷堂高校の鹿踊

その後は、高校生の鹿踊。虎舞や獅子舞のような激しいアクションはないのですが、どこか鷹揚とした踊りは不思議な魅力があるような気がします。中の人は全員女子生徒なのですが、15kgある装備を身に着けて、太鼓を持って踊るというだけでもかなり大変なのだろうと思います。

和太鼓奏者の藤井絵理香さん

その後のステージは和太鼓奏者の藤井絵理香さん。

www.erika-taiko.com

複数の種類の太鼓を組み合わせ、演奏の仕方によって、優しくも激しくもなる。和太鼓の幅広い表現力を堪能できるステージでした。

この辺で雨が降り出してきたので、会場を離れて徒歩10分ほどの陸前高田駅に向かいます。

陸前高田駅前での駅弁などの販売

駅前でも、花火大会に合わせて駅弁やパンなどが売られていました。

陸前高田駅の交通広場は、外周の通路に屋根があって雨がしのげるので、その屋根の下で花火を見る算段を立てていました。なので、あらかじめ2セット目のカメラを駅近くまで運び込んでおいたのです。

陸前高田駅がある交通広場(2022年10月22日撮影)※2022/10/24写真差し替え

陸前高田駅の北側。雨の中でも賑わう屋台

三陸花火大会の花火の数々

19時になり、花火の打ち上げが始まりました。

会場からは離れていたので、どういうプログラムでどういう花火が打ちあがったのかはよくわかりませんでしたが、青と黄色を主体にした花火は、ウクライナの国旗の色にちなみ、ウクライナを応援する意味を込めたものだったりしたそうです。

季節外れに冷え込み、風向きが変わると雨が吹き込んだりして、観覧環境としてはなかなか過酷でしたが、花火自体はとても見事でした。

ちなみに、花火が終わった頃には雪になっていて、陸前高田付近はそうでもありませんでしたが、周辺では吹雪になったりもしたようです。

花火が終わり、駐車場から出ようとする車列

陸前高田駅のすぐ南にある、花火大会用の駐車場から出ようとする車列。花火大会が終わってすぐにこういう状態になったということは、会場には行かず、車の中から花火を見ていたという人も多かったのでしょうね。

陸前高田駅から、会場を横切って気仙沼行きライナーバスの駐車場へ向かいましたが、さすがに会場には人が少なかったのか、三陸フードビレッジの各店舗でも売れ残りがだいぶ出ていたようでした。天候ゆえに仕方ないとはいえ、気の毒な感じでした。

2022年10月8日・三陸花火競技大会

続いて秋の三陸花火競技大会。前日は雨だったものの、この日は花火の時間帯は晴れの予報でした。

なので、会場で普通に花火を見ることができるはずで、春のように陸前高田駅にあらかじめ荷物を持ち込むような小細工はせず、シンプルに気仙沼駅からライナーバスで会場へ向かいました。

しかし、予約した「エリア指定席B」(もっとも安い席)は舗装されていない地面で、前日の雨で土壌が水を含んでいたため、シートを敷いて座っていてもその下から水がしみ出してきたりしてなかなか大変でした。

花火大会の会場に到着直後の空
三陸フードビレッジ。地元の出店は少な目

晴れる予報だったわりには怪しげな空の感じ。

春と同様に三陸フードビレッジが開催されていましたが、今回は地元の出店が少なく、遠い地域からの出店が目立ったように感じました。

実はこの花火大会と同日、北隣の大船渡市で産業まつりが催されており、地元の出店はそちらと分散したのではないかと思います。

陸前高田市郷土芸能、氷上太鼓の演奏

この日もステージでは様々なパフォーマンスが行われていました。地元の氷上(ひかみ)太鼓の演奏では、地元のお祭り「うごく七夕」(毎年8月7日)用の楽曲も披露されました。うごく七夕は今年、ぜひ見に行きたかったのですが、コロナに感染し、療養期間が終わった直後ということで動く気力がなく、断念したのでした。

夕方になり、西日がさしてきた花火大会会場

なかなか上空の雲は取れず、どんよりとした空が続いていましたが、16時半ごろ、ようやく西日が差してきました。

そしてその少しあと、北側から黒い雲が流れてきたと思うとにわか雨が降り出しました。

太陽と雨が合わさると何ができるのか。どこかで聞いたようなフレーズだと思われる方もいるかもしれませんが、東の空に鮮やかな虹がかかったのでした。

にわか雨の中、東の空に現れた鮮やかな虹

建物の上にちらっと覗くような虹は最近も見たことがありますが、こうした180度近い虹を見たのは本当に久しぶりです。平地が広く、建物が少なくて見晴らしがよい陸前高田ならではの光景とも言えます。

夕食を求める観客で賑わう三陸フードビレッジ

しばらくして虹も消え、花火の打ち上げ前、夕食を買いに三陸フードビレッジへ向かいます。

どこも長い列ができていたのですが、そんな中、地元のカカオ専門店「CACAO BROMA」だけはガラガラでした。おそらく、デザートが専門で食事は買えないと思われていたのでしょうが、実はカレーライスにカカオニブをトッピングするカカオカレーを売っていて、それで手早く食事をとることができました。

三陸花火競技大会の花火の一部

今回も前回同様、静止画用、動画用の2台のカメラで撮影を始めたのですが、うっかりして動画用のカメラのバッテリーが充電できてませんでした。

最初のミュージックスターマインを撮ったらほとんどバッテリーが尽きてしまったので、静止画用のカメラを動画用に転用。そのため、静止画としてはほとんど撮れませんでした。その上、ポジション取りは悪いしカメラの設定も一部ミスっているしで、今回は反省ばかりの結果になりました。

もっとも、北からの微風という好条件の風が吹く予報も外れて、煙が上空に滞留して一部の花火が見えづらくなっていたので、静止画で撮っていても前回ほどの手ごたえはなかったかもしれません。

気仙沼駅に向かうライナーバス

終了後、気仙沼行きのライナーバスに乗車。乗り込むとともにうとうとして、気がついたら気仙沼駅付近まで来ていたという感じでした。

駐車場に入れなかった問題

秋の三陸花火競技大会では、私が会場で虹を見てカレーを食べて花火を楽しんでいた頃、予約していた駐車場に車が入れないというトラブルが発生していました。

kahoku.news

 岩手県陸前高田市で8日夜に三陸花火競技大会を開催した実行委員会は、有料駐車場を事前予約した車両約百数十台が駐車場に入れないトラブルがあったことを明らかにした。実行委は11日、取材に応じ謝罪した。返金などには応じる方針。

 実行委によると、観客席近くの未舗装の空き地を駐車場として使い、約2100台を止める計画だった。しかし、前日からの雨でぬかるみ、収容台数が想定を下回った。駐車場の受け付けで他の駐車場に向かうよう促したが、車列が長く全ての車両に伝えられなかった。

春は当日の雨と季節外れの寒さに悩まされ、秋はそれを回避できたと思ったら前日の雨のためにトラブルが発生するとは、とことん天候にたたられる花火大会ですね。

そういえば、2020年の初回の花火大会も、雨こそ降らなかったもののだいぶ冷え込んだのでした。

この大会は、コロナ禍ということもあり、キャパシティコントロールをきっちり行うという前提で、観客席も駐車場もすべて有料となっています。観客はそれを信頼して購入しているのですから、駐車場に入れないというのは、どんな事情があったとしても運営側の落ち度だと言わざるを得ません。

この問題は再発防止策を示し、絶対に同じような問題を起こさないことを約束できなければ、花火を見たい人も安心して来場することができず、大会の運営に大きく影響します。

個人的な思いを書くと、こうした問題を乗り越え、三陸花火は長く続く大会として定着してほしいと願っています。

陸前高田市は、東日本大震災で甚大な被害を受け、市内を通っていた鉄道が廃止になった町です。かつてはJR大船渡線が通っていましたが、今はBRT(バス高速輸送システム)に転換されています。

1万発規模の花火大会といった大規模なイベントを行うにあたって、鉄道という大量輸送に適した交通手段がないことは不利に働きます。各地の花火大会に合わせて、鉄道の臨時列車が運行されていたりするのをご存じの方も多いと思います。

三陸花火は、鉄道がないならないなりに、自家用車での来場を前提とした企画や会場設計、周辺の主要駅からのライナーバスの設定といった工夫をしてきました。

世の中には、鉄道がないということを過剰にネガティブに評価する人もいます。例えば、「鉄道を失って栄えた町はない」という言説に依存して、陸前高田市などを衰退が宿命づけられた町だと描いたテレビ番組があったことについて、下記の記事で言及したりしました。

a-train.hateblo.jp

鉄道ローカル線の行方について広く論じられるようになった昨今、鉄道がなくても花火大会のような大規模イベントを開催することができることを示すのは、議論にも大きく貢献するものだと考えます。

今回のようなミスによって、「結局、鉄道がなければこういうイベントは無理」と言われるようなことになってほしくはない、というのが今の私の思いです。