7月4日・5日の両日で、気仙沼・陸前高田・大船渡の各地を巡ってきましたが、今回はそのうち、7月5日に大船渡線BRT・大船渡駅前の商店街「キャッセン大船渡」で催されたビアガーデン企画についてお伝えします。
1泊2日の「禁じ手」を使った理由。
三陸へ1泊2日というのは、自分の中では禁じ手でした。現地での時間が十分に取れず、片道14,000円ほど(東京~一ノ関~気仙沼の場合)かかる往復の費用に見合った体験ができないと考えていたためです。だからこれまでは、必ず2泊以上の日程を取って訪ねていました。
今回、その禁を破った理由は、新型コロナウイルスの陽性確認者が東京で急増傾向にあり、今後、また再び自由に旅行ができなくなる懸念があったからです。緊急事態宣言が出されないまでも、各県の知事が首都圏との往来を自粛するよう要請を出す事態になれば、それを無視して出かけるのも難しくなります。
当初は、7月23~26日の4連休を予定していましたが、その時期にはもう難しくなっているのではないか、という懸念がありました。
そして、天気も晴れにはならない予報でしたが、ずっと雨というわけでもなさそうなので、思い切って訪ねることにしたのでした。
そして、4日に気仙沼や陸前高田を巡っていると、twitterでフォローしてくださっている方からお誘いが。
明日はキャッセン大船渡のビアガーデンに参加ですか?(なんちゃってー。←古い)
— にゃおん←2㍍→🌸←2㍍→通信 (@media_neko) 2020年7月4日
特に何をしようと決めているわけでもなかったし、天気も雨が降るわけではなさそうなので、行ってみることにしました。
震災後の地域の賑わいを取り戻す取り組みとして
キャッセン大船渡は、JR大船渡線BRTの大船渡駅前にできた、復興商店街の1つです。
大船渡市の市役所などの行政機能は盛駅周辺がメインになりますが、商業地区としては大船渡駅前周辺がメインで、他にも「おおふなと夢商店街」などの商店街、さらにスーパー「MAIYA」、ホームセンター「ホーマック」などが隣接して賑わいを作り出しています。大船渡駅や駅前広場を起点にそれらを有機的に結合する街づくり、というのもキャッセン大船渡が担う役割で、そのへんがなかなかうまくいっているのではないかと思って見ています。
津波で流された地に、どのように賑わいを取り戻すかはどの地域にも共通する課題で、復興商店街など、商店が集まる地区を作るのは多くの場所で見られるパターンです*1。
そういったことから、それぞれの商業地区がどのような取り組みをしているのかを見ておくのは有意義なことだろうと思っています。
ついでに、たくさん消費して地域経済に少しでも貢献できれば言うことはありません。
開会直前の大船渡へ
ビアガーデンというと、私のイメージでは町なかの商業施設の屋上で、夏の期間の夕方から夜にかけて設けられる企画というものですが、キャッセン大船渡のビアガーデンはこの日限定で(後日、似たような企画が催されたようですが)、昼から夕方にかけての企画になります。
開会は11:00から。朝から気仙沼駅や田茂山駅付近で撮影した後、開会の少し前に大船渡駅に到着しました。
駅前からキャッセン大船渡に向かうと、当然ながらすでにテントは設営され、各店舗で準備が進められていました。
キャッセン大船渡のエリアマップ。今回のビアガーデンの会場は「2」のフードヴィレッジのエリアになります。
メイン会場となる駐車場の他、路地にもテーブルが置かれていました。
どよんとした曇り空でしたが、雨が降らなかっただけでも儲けものです。
路地を抜けると、この地区のシンボルである須崎川に出ます。
津波が遡上した川も、今は親水公園として整備されました。
イベント開始
11:00になって、各店舗がオープンしたので早速いろいろといただきます。観光客ですので、なるべく地域性が感じられるものをチョイスしていく方針です。
ライブハウス「KESEN ROCK FREAKS」のホワイトニンジャバーガーと、陸前高田のソウルドリンク、神田葡萄園のマスカットサイダー。ホワイトニンジャバーガーは、玉ねぎの輪切りを焼いたものがドンと乗っているのが特徴です。
海山(かいざん)酒場のテントで、屋台の定番の焼きそば・フランクフルトと、陸前高田産のリンゴを使った100%りんごジュース。
写真では目立たないかもしれませんが、焼きそばはかなり大盛だし、フランクフルトはかなり大きくてびっくりしました。
メイン会場では、キャッセン大船渡の主催者の方(肩書は聞き逃しました)、そして代表「取り締まられ役」の方の挨拶がありました。
- 新型コロナウイルス対策としての緊急事態宣言が終わり、新しい生活様式への対応を模索しつつ不安を抱える中、飲食の力で大船渡を盛り上げていきたい。そしてこうした取り組みが他の地域にも広がってほしい。
- 11時に始まり、18時半ごろまでの長丁場になるが、皆さんの胃袋と財布との勝負!
というような挨拶でした。
そして、みんなで乾杯をしてイベントが始まります。
メイン会場では歌や踊り、パフォーマンスなどのステージが次々と繰り広げられていました。
一方、須崎川沿いの裏手のDJブースでは、昔ニコニコ動画で流行った曲やボーカロイドの曲などの懐かしい感じの曲が次々とかかっていました。
周囲を見渡すとふと、正面のおおふなぽーと(防災観光交流センター)から、上の方に登っていける階段があるのに気づきました。
3月には閉鎖されていたところ。気になって行ってみると、そこは屋外展望スペースでした。
ビアガーデンの会場を見渡すとこんな感じです。
他の写真は、後で改めて撮ったものをご紹介します。
一方こちらは、強引に大船渡線BRTを入れて撮ったもの。右奥にちらっと見えます。
まあ、BRTは鉄道のような目立つ存在ではないし、存在感としては町の暮らしの後ろをひそやかに走っている、そんなぐらいでいいんじゃないかという気がしています。
須崎川の河口でウミネコの群れを見る
キャッセン大船渡の海側には夢海公園という公園が整備されており、親子連れが多く集まっていたのですが、そのすぐそば、須崎川の河口付近にはウミネコがたくさん集まっていたのでしばらく眺めていました。
水面を泳ぎながら、しきりに羽をバタバタさせ、不意にあたりを飛び回るという動きを繰り返していました。生態的にどういう意味がある行動なんでしょうね。
動画を撮ってみました(ブレブレなのは申し訳ないです)。
写真の方もいろいろと撮ってみたのでご覧ください。
午後のイートタイム
少しお腹の空き容量ができてきたので、午後のイートタイムです。
ビアガーデンとは関係ないのですが、目の前にあるかもめテラスへ。こちらは銘菓「かもめの玉子」でおなじみさいとう製菓の本店。
震災の時、目の前で店舗や工場が津波に飲まれるのをただ見ているしかできなかった専務の方の動画は、FNNのアーカイブとしてまだYouTubeで見ることができます。
再建された店舗はいつ訪れても賑わっています。店内では、「かもめの玉子」のバリエーションをはじめとするお土産用の菓子の他、洋菓子、和菓子、惣菜パンなど豊富な品ぞろえで、イートインのコーナーもあります。
店舗限定のかもめソフト(かもめの玉子の餡を絡めたソフトクリーム)があるのですが、さらに夏季限定のレモン味(レモン味の餡を絡めたもの)が販売されていました。
付け合わせは、みたらし団子を冷やした感じの冷やし団子で。
14:00を回って、雨どころか陽が射してくるようになったので、おおふなぽーとの展望スペースに行ってみます。
やっぱり晴れている方がいいですね。
大船渡のシンボルタワー、太平洋セメントの紅白煙突。あのメカメカしい工場地帯をいつか訪ねてみたいと思っています。
大船渡駅に到着する盛行きのバス。
駅の周辺など、まだ活用が進んでいない土地が結構見えるのですが、これは被災地共通の課題ですね。
最後は鮨・季節料理ささきさんの「さんまのバッテラ」と、三陸ビールの「週末のうみねこ」。
バッテラは関西でおなじみの押し寿司で、普通はサバを使うのですが、こちらは大船渡名産のサンマ。他にウナギやヒラメなどもありました。
バッテラももともと、大阪湾で獲れる別の魚を使っていたらしいですしね。
サンマのあの独特の風味が味わえるバッテラ、大いにありでした。
三陸ビールは副原料に使う材料によって何種類かあるのですが、「週末のうみねこ」は気仙椿の茶葉を使用したもの。爽やかでフルーティな香ばしさが特徴で気に入りました。
大船渡の賑わいに身を任せ、とても楽しめた一日でした。