君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

陸前高田の発酵パーク「CAMOCY」を訪ねてみた

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「発酵」をテーマにした店舗などが集まる陸前高田市のCAMOCY

2020年12月、震災からの復興が進む岩手県陸前高田市で、新たな集客施設が誕生しました。

camocy.jp

地域で盛んだった醸造業に由来した、「発酵」をテーマにした施設で、複数の飲食店や物販を中心とした構成になっています。発酵→醸造=醸す、というところからCAMOCYと名付けられたようです*1

この施設を何度か訪ねたのでご紹介します*2。珍しいコンセプトですが、「発酵」の世界の幅広さに気付かされる経験ができます。

「CAMOCY」へのアクセス

CAMOCYは、陸前高田市内を流れる気仙川の西側、今泉地区に位置しています。

中心部のまちなか地区からは少し遠いのですが、施設のすぐ近くに橋が再建されたことで大幅に距離が短縮されました。

もちろん駐車場もありますが、公共交通を使った場合の最寄りバス停と、おおまかな所要時間は以下の通りです。

近いところのバス停は経由する本数が少ないので要注意です。JR大船渡線BRTの場合、気仙沼←→陸前高田・盛方面の系統で「快速」ではない便が陸前今泉に停車します。

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JR大船渡線BRT・陸前今泉駅(左)、岩手県交通・気仙中学校前(右)

CAMOCYのサイトには陸前高田駅からは徒歩約1時間、というような記述もありますが、これは付近の橋が開通する前のものと思います。

また、陸前高田駅付近にある陸前高田市観光物産協会では、台数は少ないですがレンタサイクル、レンタバイクルがあります。詳しくは下記のページをご覧ください。

takanavi.org

木のぬくもりを感じる施設

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CAMOCYの入口。テラスに薪が置かれていますが、中にある暖炉にくべるために用意されているようです。

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気仙川の側から見たCAMOCY。

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道の駅高田松原の近くから望遠で撮ったCAMOCY。遠くから見ると、三角屋根が3つ連なっているのが外観上の特徴となっています。

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建物内へのエントランス。「発酵」とデカデカと書かれているのがユーモラスです。木をふんだんに使用したデザインは、醸造に使う桶や樽をイメージさせるような雰囲気です。

入口にはセンサー型体温計と消毒液噴射器があるので、検温、消毒をしっかり実行して入ります。

室内は、複数の店舗に囲まれる形でフードコートがあり、あちこち注文して組み合わせていただくこともできます。

店舗の案内は最初に紹介した公式サイトをご覧いただければよいかと思いますので、あとは食べたものの感想をひたすら紹介します。

麹、味噌、パン、漬物……「発酵」の幅広い世界

発酵食堂やぎさわ 豚ロースのひつまぶし御膳

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CAMOCYの立ち上げを主導した地元の醸造業者「八木澤商店」が送る和食と甘味の店。CAMOCYがある場所は、もともとは震災前の商店があった場所だそうです。隣接する土地では味噌工場の工事が進んでいます。

八木澤商店は、醤油、味噌などの販売のほか、陸前高田駅前の複合商業施設「アバッセたかた」で「やぎさわカフェ」というカフェも経営するなど、一般的な醸造業の枠に留まらない活動を展開しています。

豚ロースは、隣接する住田町のありすポークを使用しています*3。八木澤商店の醤油麹を食べて育ったそう。
もろみの風味が漂う豚ロースは、柔らかく焼き上げられたジューシーな食感を堪能できます。ご飯はだいたい茶碗2杯分で、2杯目は鰻のひつまぶしと同様にだし茶漬けにして味わうこともできます。肉の旨味が出汁と融合して美味しくいただけました。

ベーカリーMAaLo(マーロ) あんみそバターパン・海のパン・りんごパン
RIKUZENTAKATA MICROBREWERY りんごジュース

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並ぶ人が絶えないベーカリーMAaLo(マーロ)。目当ての品がたくさんあると思ったら、前の人が大量に買い込んでしまい、次の焼き上がり待ちになることもあります。

購入したのは「あんみそバター」(写真上)、「海のパン」(写真左)、「りんごパン」(写真右)の3つ。

あんみそバターはコッペパンにバターと白あん、そして八木澤商店の白味噌をサンドしたもの。こうした店舗間のコラボがCAMOCYの特徴の1つになっています。味噌はほんのりと風味が感じられ、単に甘いだけではない豊かな味わいを作り出していました。

海のパンは、パン生地に陸前高田名産のわかめの他、じゃこ、そして白ごまを練り込み、塩をふってまとめたバゲット。文字で見ると何だそれと思うかもしれませんが、「わかめとじゃこと白ごまのおむすび」といえばその美味しさはわかると思います。そのままご飯をパンに置き換えたと考えると良いでしょう。一度食べてみていただきたいオススメの品です。

りんごパンは陸前高田市の米崎産りんごを使用。強すぎないまろやかな酸味がクリームととてもマッチしていました。

RIKUZENTAKATA MICROBREWERYのりんごジュースは、これも陸前高田ひろた果樹園のりんごとのこと。こちらは爽やかな酸味が特徴で、甘ったるさがなくスッキリした飲み口でした。本当は発酵飲料であるクラフトビールとか注文すべきなんでしょうが、基本的にアルコールはすすんでは飲まないのでそのへんはご容赦いただければ。

gentil(ジャンティー) 米崎牡蠣のフライ 自家製しば漬けタルタル、アイスソルティーレモネード

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惣菜販売がメインのgentil。ランチセットや単品でのイートインもできます。

しば漬けタルタルに惹かれて注文したカキフライは、これも陸前高田市の米崎産。しば漬けが加わることで味も見た目も華やかなタルタルになるのが面白いアイデアです。考えてみれば漬物も発酵食品ですね。

アイスソルティーレモネードにはレモンの塩麹漬けを使用。ほんのり麹っぽい後味があったような気もしましたが、飲んでいる時には特に違和感がなく、普通のソルティレモネードという感じでした。

こうして書き出してみると、地産地消も充実していることがわかります。陸前高田や付近の食材を味わえる点では観光客にオススメの施設と言えそうです。

ストロベリーフェア

さて、1月下旬にはストロベリーフェアが行われていました。

これも地元の農家「松田ファーム」のいちごを使用しているとのことで、いちごの直接販売の他、各店舗でいちごを使ったメニューが登場していました。

全部は無理ですが、一部のメニューをいただいたので紹介します。

CACAO broma イチゴカカオアイス、紅茶

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チョコレート専門店「CACAO broma」のメニュー。ふんだんに盛られたフリーズドライのいちごはチョコアイスに華やかな味覚を添え、上品な紅茶の味わいとともにいただけました。

考えてみれば、チョコレートも紅茶も発酵ものなんですよね。あまり意識することはありませんが、「発酵」という工程が幅広い食材に不可欠であることを改めて認識させられます。

発酵食堂やぎさわ イチゴミルクあんみつ

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レギュラーメニューとしてあんみつがありますが、そこにたっぷりいちごをトッピングしたもの。底の方にもイチゴ風味の牛乳寒天が隠れています。黒蜜と練乳でさまざまな味わいを楽しめる大満足のあんみつでした。

バレンタインフェア

2月上旬の土日(2/6,7,13,14)で開催されているのがバレンタインフェア。上で紹介したチョコレート専門店「CACAO broma」が大活躍で、オリジナルメニューが豊富に用意されている他、他の店舗でもCACAO bromaの食材を使ったメニューが登場しています。

いただいたメニューを紹介します。

CACAO broma チョコレートディップタパスセット、カカオパルプジュース

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タパスセットはバレンタインフェアの目玉的なメニュー。「タパス」とはスペイン語で小皿料理のことで、それらをチョコレートディップでいただく趣向になっています。

チョコディップはそれほど甘くはなく、カカオが豊富なややビター寄りな味です。

時計回りに「カカオニブベーコン」「アボカドナッツ」「柚子クリームチーズ」「濃厚ブラウニー」の4品。カカオニブベーコンにディップを乗せると、塩味とチョコが同居する好みがわかれそうな味。以前、マックフライポテトにチョコレートソースが登場したことがありましたが、それに近い感じがします。

アボカドナッツにチョコディップを乗せていただくと、あまりチョコな感じがせず、アボカドと混ざり合ってヨーグルトっぽい味がするような、なにか不思議な感覚でした。

柚子クリームチーズはチョコと相性がよく、柚子の風味がとても効果的でした。濃厚ブラウニーはたぶんそのまま食べても美味しいと思うのですが、さらに追いディップでチョコをしっかり堪能。

お店のオススメ通りの順番でいただいたのですが、もしかしたら最初の方で仮に口に合わなくても、あとの方で口直しになるということもあるのかもしれません。

カカオパルプジュースは、紹介文にある「ライチのような味」という通りで美味しかったです。パルプの繊維分のせいか、ネクターっぽいまろやかさがありました。

RIKUZENTAKATA MICROBREWERY ミックスベリーのチョコレート、ジンジャークラフトコーラ

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お手拭きの手書きの「Thank you!」がいいですね。

CACAO bromaのチョコを使ったケーキはカカオたっぷりでコクがあり、それにプチプチしたベリーの酸味が好対照な味わいとなっていました。

ジンジャークラフトコーラは、陸前高田の生姜農家の三陸ジンジャーを使用。これも地産地消なのですね。

コカ・コーラのような甘さは控えめで、ジンジャーの爽やかな香りが強く出ていました。

ケーキもクラフトコーラも大人向けな感じでした。

CAMOCYからの風景

CAMOCYの目の前に気仙川があり、最近になって再建された姉歯橋が対岸の高田町とを結んでいます。

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室内からも見える気仙川の先にはワタミオーガニックランドなどの工事風景、そして高田松原運動公園、その先に箱根山の姿が見えます。

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そして、大船渡線BRTの赤いバスが時折横切っていくわけですが、なぜか以前よりも手前側のルートを通っていきます。

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昨年秋の三陸花火大会の時に迂回していたのと同じルートに変わっているようでした。詳しくは下記の記事をご覧ください。

a-train.hateblo.jp

まとめ

12月のオープンは部分開業であり、3月にグランドオープンを迎えるというCAMOCY。

発酵の世界の幅広さを感じることができるとともに、各店舗とも地域の産品も活用した豊富なメニューがあり、企画も積極的に行っているようなので、リピートしても楽しめそうです。

陸前高田市の中心部は、観光面では陸前高田駅があるまちなか地区、奇跡の一本松駅がある高田松原津波復興祈念公園が2大スポットといえますが、3月にオープン予定のワタミオーガニックランドと合わせて、気仙川エリアがもうひとつの核になっていくのではないかという気がします。

なかなか人気があるようですので、密を避けるために昼食のコアタイム以外の時間にするなど、工夫して訪ねていただければと思います。

*1:「発酵」と「醸造」の定義は検索するといろいろ出てきますが、とりあえず、「発酵」という作用を利用して製造することを「醸造」と呼ぶ、ぐらいの認識でよいかと思います。

*2:緊急事態宣言下ですが、現在の基本的対処方針は「リスクの高い場面での人の接触を避ける」ことが主眼で、それにつながる行動を抑制するために外出自粛要請、イベント自粛要請等があるのであり、主眼を外さないことを前提に対人接触を避けつつ単独で行動しています。

*3:「ありす」は、鉄道で言えば釜石線上有住駅の「ありす」です。