君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

ひたちBRTに乗ってみた (2)日立電鉄の足跡&自動運転バスに乗る

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実証運行用のひたちBRT自動運転バス(執筆時点では中止中)

去年(2019年)秋ごろから、鉄道からBRT(Bus Rapid Transitバス高速輸送システム)に転換されたJR東日本気仙沼線大船渡線を重点的に訪ねているのですが、実はその関連で、他のBRT路線のことも気になっていたりします。

そんなわけで、今年(2020年)12月に、茨城県日立市にある、日立電鉄廃線跡を活用したBRT「ひたちBRT」を訪ねてきましたので、その様子をお伝えします。

前回は、鉄道転換型のBRTについての概論と、ひたちBRTの専用道の設備について、JRのBRT路線との比較も含めて書きました。

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今回は、南部図書館にある日立電鉄に関する展示と、実証運行を行っていた自動運転バスについてお伝えします。

南部図書館で日立電鉄の足跡を見る

前回、ひたちBRTの「どうのいり公園」停留所で下車した後、専用道沿いの歩道を歩いて「南部図書館」停留所まで来ました。

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南部図書館は、日立電鉄の久慈浜駅があった場所で、その跡地に図書館とBRTの停留所を整備した形になります。

久慈浜駅は日立電鉄発祥の駅(最初、久慈浜~大甕間で開業した)で、車庫もあって電鉄の拠点駅だったようです。

地方鉄道では、JR線に接続する隣の駅が拠点になっていることがあります*1が、日立電鉄もそのパターンだったのでしょう。

そんなこともあってか、BRTの乗り場の前には、日立電鉄に関する展示があります。

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久慈浜駅の駅名標。斜めに傾いているのが気になりますが、地面の下で何か補修が必要なのかもしれませんね。

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レールと転轍機。

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日立電鉄の歴史や路線図などの展示。久慈浜~大甕間の開業は常磐線に接続して久慈浜の海産物を輸送する目的だったこと、常北太田までの延伸は常磐線沿線の発展に焦った太田側から延伸の要望があったこと、北の鮎川までの延伸は日立製作所の戦争特需により、労働力を集めるため沿線地域からの利便性向上を目的としたことなど、名前しか知らなかった日立電鉄ですが、今更とはいえ鉄道の息遣いのようなものが感じられた気がしました。現役だった頃に乗ってみたかったなあ。

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南部図書館に到着する多賀駅前(常陸多賀駅)行き。

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同じく南部図書館に到着したおさかなセンター行き。

南部図書館の建物が、船や海をモチーフにした面白いデザインだったのですが、確かこの左側にはまた障害物があったはずで、意外と構図を作りにくかったです。なんとか場所を見つけたものの、時計が街灯の裏に隠れてしまったりして、ちょっと厳しいなあ、という感じですね。

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バスはここから一般道路に出ておさかなセンターへ向かっていきます。

それを追いかけるように徒歩でおさかなセンターへ。

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日立おさかなセンターとBRTのりば。濃い青の建物が、水産市場的な雰囲気を感じます。ここはまた次の記事でご紹介します。

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冬空の下、停車するひたちBRTのバス。萌黄色のデザインが冬の風景の中に映えていました。

このバスに乗って、反対側の終点、常陸多賀駅へ向かいます。

自動運転バスに乗ってみた

常陸多賀駅から終点のおさかなセンターまで、実証運行していた自動運転バスに乗車しました。

自動運転バスは基本的に予約制で、空席があれば予約がなくても乗車できるようですが、事前に多賀駅前 10:48発→おさかなセンター 11:29着の便を予約してありました。

なお、11月30日から毎日3~4往復で始まった実証運行でしたが、12月14日に想定外の動作によってガードレールに接触する事故があり、自動運転バスの運行は中止されています(同じダイヤで通常のバスでの運行となっています)。

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※2021/1/4追記:自動運転ダイヤの代車運行は2020年12月27日で終了していました。

 

本記事は事故発生前の12月6日の乗車記となります。

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常陸多賀駅前に停車していた自動運転バス。

前面に「ひたちBRT 自動運転実証運行中」の表示があり、光の反射で見づらいですが、LED表示器には「自動運転」の文字が見えます。

また、停車する停留所が限られているため種別は「快速」となっていますが、すべての停留所に停車する通常便の所要時間が30分のところ、41分で運転するので、相当余裕を持たせている形になります。

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ここまで乗ってきた車両が隣に並びました。

こうしてみると、自動運転車両も外観としては特殊な車両ではなく、通常の中型バスを使っていることがよくわかります。

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側面は魚群のデザイン。多数の様々なシステムが集まり、自動運転システムを形成していることを表現しているそうで、漁業の町にも因んだ秀逸なデザインだと思います。

乗車する時には予約の確認と検温、手指消毒があり、乗車した感想を書くアンケート用紙を渡されました。

車内も通常のバスのままでしたが、車いすスペース用の座席を収納し、そこに機器が置かれていました。また、常に動作状態を確認する係の方が乗車されていました。

バスは定刻に発車。運転士が乗務していますが、ハンドルには手を触れず、でもいつでも操作できる状態をキープされていました。たぶん、ハンドルを握るよりも態勢としてはきつい気がします。f:id:katayoku_no_hito:20201206105322j:plain

多賀駅を出て、一般道路で左折する時は運転士がハンドル操作をしていましたが、それ以外は一般道路も、専用道に入っていく時も、専用道を進む時も自動運転だけで進んでいきます。

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車内や窓にはかわいい装飾がされていました。

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自動運転は、素人なりにざくっと要約すれば、

  • 自分のバスがどこにいるか、周囲の空間や物体の移動状況を認識する
  • 認識したデータに対して適切な操作を判断して実行する

の2つの要素があります。それをどうやって実現しているか、実際にどういった動作をしているかが運転士の背面のモニターに表示されています。

スピードメーターがありますが、最高速度はだいたい40km/hほどで、一般的な道路を走るのであれば実用的なレベルの速度だと思います。

ただ、専用道のちょっとしたカーブなど、人なら無難にすんなり進めそうなところでも大きく減速して慎重に進むことが多く、スピードを滑らかに維持するというところはまだまだ課題があるように思いました。

それでも、乗車していて危険という感じはなかったので、このまま品質を上げていけば実用化につなげられるのではないかと思っていたのですが、事故による実験中止は予想外でした。

終点のおさかなセンターに到着後、日立おさかなセンターで昼食をいただき、午後は何か所かでバスの撮影をしていました。その辺は次回お届けします。

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*1:いくつか例を挙げれば、銚子電鉄における銚子駅の隣の仲ノ町駅大井川鉄道における金谷駅の隣の新金谷駅があります。