東日本大震災による津波と、その後の原発事故によって寸断されたJR常磐線。
2020年3月14日、あれから9年の月日を経てついに上野~仙台間の全線での運転が再開されました。
3月13日から15日にかけて、富岡駅付近を中心にその様子を見てきましたので、順にお伝えしていきたいと思います。
常磐線代行バス、最後の1日
震災後、常磐線は徐々に復旧が進められ、最後に残った不通区間が富岡~浪江間。寸断された常磐線を南北に結んでいたのは、地元のバス会社、浜通り交通が運行していた列車代行バスでした。
2017年の夏と、このダイヤ改正直前(2020年2月)に乗車したことがあり、それぞれ以下の記事で乗車記を書きました。
3月13日の朝、いわきから乗車した富岡行き列車には、乗車・撮影目的と思われる人も多く乗っていました。
そうした人たちは、富岡で降りたあと、接続する代行バスに乗車したようです。
代行バスのバス停で並ぶ方々。
奥に写っているバスは、新常磐交通が運行するいわき~富岡間の急行バスになります。
駅前ロータリーの様子。
浜通り交通のバスの前で取材が行われているようでした。おそらく、ニュース用のカットを撮影していたのかなと思います。
マイクを持っている方も。バスのドアの横でインタビューをするのかな? という雰囲気です。
定刻に富岡駅を出発し、浪江駅に向かう代行バス。
この後、昼までに1往復発着した後は、16時台まで便がありません。
私が富岡駅の南側で651系のラストランを撮っていた時、17時過ぎの富岡発の最後の列車は10分ほど遅れていました。
651系の最後を富岡駅で見届ける人もそんなにいなかったようだし、なぜそんなに遅れているのか不思議だったのですが、どうも代行バスがパンパンだったらしく、乗り換えに手間取って遅延が発生していたようでした。
そして夜が更け、いよいよ最後の時が近づいてきました。
地元の方々が暖かく見届けた、常磐線代行バスの最後
富岡駅前近くのホテルに宿を取っていたので、いったんチェックインし、夕食をとってから19時半過ぎに駅前に出てみると、すでに最後の見送りの準備が始まっていました。
ベンチに置かれていた、紙袋に入れられた花束。
代行バスには、運転士とアテンダントが乗務しています。その2人に贈られるものだということは容易に想像がつきました。
あたりでは、見送りの打ち合わせをしている方々、撮影の準備をされている方。
19:40ごろ、浪江駅からの最終便となるバスが到着。バス停では集まった人が手を振って出迎えていました。
バスはいったん駐車スペースに引き揚げ。この後、20:20発の浪江行きが、本当に最後の代行バスになります。
この時、山側には星が出ていたので、星空で撮れないかなと思ったのですが、海側は曇っていたらしく無理でした。
駅前に集まる方々。
この時、自分も駅前に行くべきかどうか、少し考えました。
ただ、地元の方々が集まる場所に自分が入るのは、やっぱり無理だと判断し、この少し離れた場所から見届けることにしました。
震災の被災地を訪ねる時、いつも意識しているのは、地元の方々との距離感です。
震災の時は関西にいてほとんど影響もなく、その後も言ってしまえばたいした関心も持たずにいた自分と、大地震と大津波や原発事故といった災害に直面し、苦しい思いをされてきた方々とは、やはりどうしても越えがたい壁があるわけです。
内側に入った方がいい写真が撮れるとしても、それは物見遊山でぶらぶらしているような自分の仕事ではないでしょう。
代行バスの乗り場で、見送りのセレモニーが始まりました。
花束を受けとった運転士とアテンダントの方、そしてそれを囲む方々。
時折、拍手や笑い声が聞こえ、暖かく、和やかな雰囲気が伝わってきます。その様子を見ているだけでこちらも感極まるものがあります。
そんな中、代行バスに接続する列車が駅に入線してきました。いよいよ終わりの時が近づいています。
やがてセレモニーは終わり、最後の乗務に向けて動き出しました。
最後の代行バスに乗るために列を作る方々。そこにバスが入っていきます。
改札を受け乗車していく方々と、それを見守る方々。
ロータリーを囲んで、見送りの方々が待機していました。
20時20分、ついに最後の代行バスが発車。
色とりどりのペンライトを振っての見送りです。
浜通り交通の方々、地元の方々がどういった思いでこの日を迎えたのか、私が語るよりも、ぜひ以下の動画を見ていただきたいと思います。
JR常磐線 富岡浪江間代行バス最終便。ガイドさん感動のコメント! pic.twitter.com/DizPictUrc
— 平山 two 勉 (@nomadicrecords) 2020年3月13日
3月14日のダイヤ改正に向けて、全国で色々なラストランがありましたが、その中でもきっと一番素敵なシーンだったはずだと思っています。
その場を見届けられたのはとても嬉しいことでした。
この日、同じくラストランを迎えた651系電車については、下記の記事をご覧ください。