東日本大震災による津波と、その後の原発事故によって寸断されたJR常磐線。
2020年3月14日、あれから9年の月日を経てついに上野~仙台間の全線での運転が再開されました。
3月13日から15日にかけて、富岡駅付近を中心にその様子を見てきましたので、順にお伝えしていきたいと思います。
試運転列車は来ず……
3月13日、特急ひたち1号から普通列車を乗り継いで、朝10時に富岡駅へ。
この日の本来の主目的は、開業直前の試運転列車の撮影でした。
富岡駅から海側、富岡川の河口付近の橋で構図を考えながら待ってみたのですが、10時58分ごろに仙台方面に向かうはずのE657系がなかなか来てくれません。
まあ少しはズレることもあるよね、などと待っていると、定期列車である651系の富岡止まりの列車がやってきてしまいました。
651系は以前にある程度撮っていたので*1、メインではなかったのですが、試運転列車が来ないのであれば、こちらを撮るしかありません。
上の写真だと間には何もないように見えるのですが、付近で何本かいい感じで木が伸びているので、それを入れて構図を考えてみます。
復興への願いを託して
到着が11:09、折り返しの発車が11:28ということで、そこそこ時間はあります。
とはいえ、どれもしっくりきません。
そもそも、先頭部のすぐそばに架線柱がかかっているので、構図をどんなに頑張ったところで味が悪くなってしまうのです。
そのうち、何本か生えている木のうちの1本が*2、葉のところにいい感じで太陽が当たっていて、枝葉の形も見事だということで、それを大きく入れる形で撮影してみました。
これが記事冒頭にも掲載した写真。列車が発車して少し動き、架線柱がまだしも目立たなくなったところで撮影しています。
逞しい枝と鮮やかな葉が、復興後にこうあってほしいという姿を象徴しているかのようで、そして、それが去り行く651系から託された願いであるかのように思えて(さすがに妄想が過ぎますね)撮れてとても嬉しかった1枚です。
試運転列車は諦めた
この後、12時手前ぐらいに来ると想定していたE531系の試運転列車も来ず。昼食後には富岡駅の北側の高台から俯瞰できる場所に行ってみましたが、やっぱり来ないな~…と思いながら構図をチェックしていると、予想外のタイミングで突如やって来たのがこの列車。
復興の町に重機が並び、奥に太平洋も入るのはいいんですが、架線柱に電柱に設備機器、そして電線と、手前側がいろいろごちゃごちゃしているのがちょっと残念なんです。
ただ、少し場所を変えてみるといい感じで撮れるところがあったので、それなりに収穫はありました。
試運転列車については、こうやって思いもよらないタイミングで来るということはもう待っても無駄と判断して、今日は諦めることにします。
651系のラストランを見送る
3/14の改正前ダイヤの時点では、651系の普通列車は1日2往復。1往復は午前中に撮ったもので、もう1往復は夕方になります。
富岡駅の南側に歩いて行って、撮れる場所がないか探してみることにしました。
10分ちょっと歩くと、編成写真を撮るにはいい感じのカーブがあったのですが、先客がいたためパス。
さらに歩いていくと、一面の田畑の中を走るいい感じの場所に出ました。
とはいえ、空は曇り出してきて、時間的にも薄暗くなってきたので、風景頼みの撮り方はできそうにありません。
ふと奥の方を見ると、何やら巨大な施設があり、調べて見るとそこが福島第2原発とのこと。
福島第2原発は震災後に無事に冷温停止し、今もその状態を維持し続けていますが、とにもかくにも、原発に翻弄された9年間(あるいは数十年?)だったことは間違いありません。
下りの最後の列車となるいわき発富岡行きは、こんな感じで撮りました。
空も地面も入れようがなかったし、写真の意図としてはできるだけ空間を切り詰めたかったので、16:9というトリミングです。
富岡町でよく見るフレーズに、「富岡は負けん!」というものがあります。英語にすると「Tomioka Will Never Die!」です。
そう、彼らはこれまでもそうだし、これからも原発事故による困難と戦い続けていくのです。
その強い意志をイメージし、力強く列車が走り抜けていく姿を表現したいと思いました(ただ、現像に関してはもう少し調整が必要かもしれません)。
折り返しの富岡発いわき行き、本当のラストランとなる列車を待っていると、別の方がやってきました。
本当は、少し山側に離れた国道6号線の方がやや俯瞰気味になるので、そこで狙ってみたかったそうなのですが、途中に電線が横切っていて邪魔になってしまうので、近くまでやってきたとのこと。
私も目を付けていたのですが、絶対電線が邪魔になるな、と思っていたらやっぱりそうなのでした。
とはいえ、もうどんどん暗くなってきたし、新しく撮りたくなる構図も思いつかないし、どうするかなあ、と悩んでしまいます。
そういえば奇をてらった構図でしか撮ってなかったな、と思い、最後は素直に4両編成を撮ることにしました。
以前はスーパーひたちとして、この区間は4両編成で走っていたわけですから、その時代を思い出すかのように、なるべく淡い感じでRAW現像してみました。
目の前を走り去った列車はどんどんと小さくなっていきました。
それにしても、私は小型のミラーレス一眼1台と、か細い三脚でペチペチ撮っているのですが、隣に来られた方は三脚に2台セットして撮った上で、さらに後追いで撮るために手持ちのカメラまで持ち出してバシバシ撮るという、どんだけ凄い装備なのかという感じでした。
ただ、自分は記録写真を撮りたいわけではなく、構図の中に自分なりの想いを込めたいと考えているので、数に任せて撮る必要はないと思っています。
この日の夜、もう1つの感動的なラストランがあったのですが、それは下記記事をご覧ください。