君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

福島県双葉町を訪ねて (1)JR双葉駅とその周辺

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2020年3月に列車の運行が再開したJR常磐線双葉駅

今年(2021年)2月下旬、福島第一原発事故により町内ほぼ全域が帰還困難区域となっている福島県双葉町などを訪ねましたので、その記録をお届けします。

福島県の震災被災地を訪ねたのはほぼ1年ぶりで、前回は2020年3月、JR常磐線が全線で運行再開を果たした時でした。

その後も折に触れて訪ねたいとは思っていたのですが、結局のところ、宮城県岩手県三陸沿岸の方にばかり足が向く形となっていました。

その理由の1つとしては観光要素の乏しさということがあって、被災と復興の様子を見て、切ない思いで帰ってくるというだけではツラいものがあったのですが、2020年8月には浪江町に「道の駅なみえ」ができ、そして9月・10月には今回訪ねる双葉町原子力災害伝承館や産業交流センターがオープンするなど、徐々に復興への歩みが進んできています。

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特急ひたち1号からいわき駅普通列車に乗り換え、まだ真新しい双葉駅で下車。

列車を見送り、無人の町の静寂に残されたところから始まります。

双葉駅にて

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下車したホームのすぐ西側。

「さあ 双葉町の未来をはじめよう 住宅用地 造成中」とあります。

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双葉町・特定復興再生拠点区域復興再生計画の概要(復興庁Webサイトより)

上の資料によると、駅西側は新市街地として整備される計画となっているようです。

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双葉町の概要図および区域設定(双葉町Webサイトより)

そもそも双葉町は、南東側の端、大熊町とまたがる形で福島第一原発が立地し、事故によって北西方向に放射性物質が放出されたため、町の北東部の一部(上の図の緑の部分)を除いてほぼ全域が帰還困難区域となっています。

2020年3月4日、「避難指示解除準備区域」の解除、および常磐線と双葉駅周辺の避難指示の解除が行われたことから、この区域に限ってようやく自由に立ち入ることができるようになりました。

現在は、「特定復興再生拠点区域」において、2022年に居住を始められるように工事などが進められているところです。

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双葉駅のホームからいわき方面。ご存知の方も多いと思いますが、常磐線で最後に復旧した富岡~浪江間は、複線だったところも単線化され、余ったスペースは舗装されて作業車両などが通れるようになっています。

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住宅用地の向こう側には家並みがあり、そこには暮らしの営みがあるのかとつい思ってしまいますが、双葉町は今は定住している人はいません。

津波の被災地でも、こんな感じで、浸水して空き地になっている場所と難を逃れた昔ながらの町が残る場所の境目というのはできるのですが、頭を切り替えていかないといけません。

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出入口には簡易型のICカードリーダーが置かれています。

Suicaの首都圏エリアのほぼ北端(次の浪江駅までがエリアになります)。精算した運賃は4,980円でした。

線量計は毎時0.08マイクロシーベルト。以前に富岡駅などでみた値と比べても、特に高いということはない認識です。

初めて見ると、あちこちに線量計があるということ自体に驚いたりしますが、地元のテレビの天気予報では気温みたいなノリで当日の地域ごとの線量が報じられていて、それはもうこの地域の日常になっているということです。

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改札前には、伝承館・産業交流センターへのシャトルバスの時刻表と、来訪者向けの注意事項が掲出されています。

バスは列車の発着に合わせて設定されていて、10:30発の便に乗り継げたのですが、それは見送って駅付近を見て回ることにします。

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通路の窓から見た駅東側の町並み。

地震で瓦が崩れているのを除けば、そこにはいたって普通の暮らしがあるように思ってしまうのです。その都度、感覚をアジャストしないといけません。

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階段の踊り場に溜まった砂埃。

橋上駅舎の立派な駅ですが、そういえば掃除する人もいない無人駅だったという、ここでもまた感覚のアジャストを求められます。

駅周辺を歩く

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駅の外に出ました。

双葉駅は、都市郊外の駅にありそうな立派なつくりです。

町の再生が進めば、この駅舎にふさわしい賑わいがきっと戻るのだと思います。

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駅前にある飲み屋さん。看板は真新しく見えるし建物にも目立った損傷はなく、もしかしたら最近になって新たに開業したのでは、なんて思ってしまうのですが、やっぱりそうじゃないんです。こんなのばっかりです。

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よくある標語ですが、この町には犯罪を起こす人すらいない、だから犯罪は起きない、ということを改めて突き付けられて切なくなります。

ただ、看板は新しいものですし、無人なのをいいことに荒らして回る人というのもいるのかもしれないですね。

20分ほど、付近を歩いてみました。

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一番下の段にある消防団の建物の時計は2時48分。

双葉町を襲った震度6強地震、それに続く原発の非常事態による避難指示。あっという間のことで為す術もなく、まさに時が止まってしまった状態でした。

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そんな町の中を、双葉駅と伝承館・産業交流センターを結ぶバスが走り抜けていきます。

再生に向けて

昨年3月に避難指示が一部解除された後、止まってしまった時を動かすための取り組みが始まっています。

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JR常磐線を跨いで建設される、常磐自動車道と海沿いを結ぶアクセス道路。

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「復興拠点」を「Re-Start Base」と訳したのが話題になった案内板。

www.asahi.com

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駅を出ると正面に見える「HERE WE GO!!!」「FUTABA Art District」の文字。

アートカンパニーOVER ALLsが、海外の事例をもとにパブリックアートを展開しています。

www.overalls.jp

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今後も制作予定とのことで、来るたびに絵が増えて賑やかになっていくのかもしれません。

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駅前にある消防用のタンク。鮮やかな青が印象的だったので、どこまでも続く青空をバックに撮影しました(午前中は逆光だったので、午後に撮影したカットを掲載しています)。

特急ひたちが行く

11時台前半に、上り・下り両方向の特急ひたちが通過するので、撮影していくことにしました。

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駅の南側にある歩道橋は、西側は通行止めになっていますが、東側から線路の上までは行くことができました。

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仙台に向かうひたち3号が駅に停車し、そして少しの乗降があって発車していきました。

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仙台から来たひたち14号。少し構図を変えて撮ってみました。1枚目は広角で撮ろうと思ったのですが、ちょっといまいちですね。

シャトルバスで原子力災害伝承館、産業交流センターへ

列車にあわせて発着するシャトルバスに乗車。

東北アクセスが運行するこのバスは、当面は無料で乗車できます。

※2021/4/21追記:2021/4/1より、片道200円(小児100円)・2回券350円(大人のみ)となりました。

touhoku-access.com

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バスに乗車する前、駅施設に入居するコミュニティセンターの方から、線量計の貸し出しについて声をかけていただきましたが、不安があるぐらいならここに来たりはしません。

5分ほどで到着したバス停の前には、オフィス、レストラン、物販施設、交流施設などがある産業交流センターが。

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この後の話は次回に続きます。

a-train.hateblo.jp