「ぐるっと九州きっぷ」を利用して福岡・熊本・鹿児島を巡るシリーズ。
3日目は熊本から三角線の往復です。行きは普通列車で、網田(おうだ)駅から御輿来(おこしき)海岸、そして秘境感のある赤瀬駅を訪ねました。
赤瀬駅から普通列車で終点、三角駅へ。宇土半島の先端、天草への玄関口となる駅で、天草に広まったキリスト教文化も感じさせるような駅舎が特徴です。
熊本への復路は、JR九州が誇るD&S(Design & Story)列車の1つ、特急「A列車で行こう」4号に乗車します。
列車待ちの間に、昼食をとりつつ三角駅付近を見て回りました。
三角駅にて
まずは駅前で昼食。到着したのが12時台で、店が混むことを懸念して駅から一番近い食堂にしましたが、それは杞憂でした。
「大盛食堂」ですが、特に大盛が特徴というわけではないです。
「な」が反転した「酒な」で、確かに魚料理もあったのですが、注文したのは親子丼でした。
昼食を終えてしばらくすると、特急「A列車で行こう」3号がやってきました。
海岸ぎりぎりを走るわけではないので海は見えにくいですが、強引に絡めて撮影。
三角駅に入線する列車。
三角駅に到着した列車。下車していく人と、記念に撮影していく人。観光列車ではおなじみの風景です。
降車が完了した列車は、別の普通列車の発着に備えて奥の引上線へ引き上げます。
三角駅の駅前には集客施設や広場があり、そのすぐ先に三角港があります。
三角港に到着するクルーズ船。三角港と、天草の松島港の間で運行されています。
三角線列車との乗り継ぎを考慮し、特急「A列車で行こう」が運行される日、されない日でダイヤが変わる設定になっています。
三角駅では、普通列車が到着して、数分ですぐに折り返して発車していきました。
三角駅には側線も一応見えるのですが、線路に草生しているのを見ると実質的に使っていないようです。だからホームの1線しか使えず、普通列車が発着できるように「A列車で行こう」はいったん奥に引っ込んでいたのですね。
いよいよ、特急「A列車で行こう」4号の発車時刻が近くなってきたので駅に向かいます。
待合スペースは、濃いめの木材でリッチな感じにデザインされています。
案内表示に暖簾を使い、柔らかさを出すのが水戸岡デザインの特徴ですね。
異色のD&S列車「A列車で行こう」
JR九州が誇るD&S列車は、「或る列車」「ゆふいんの森」「海幸山幸」や、前日に乗車した「はやとの風」「いさぶろう・しんぺい」「かわせみ やませみ」などがあり、いずれもおなじみ水戸岡鋭治氏のデザインになりますが、共通する特徴は、木材を多用して「和」の質感や落ち着き、ゆとりといったものを強調していることにあります。
そんな中で、特急「A列車で行こう」はちょっと異色で、独特な雰囲気がある列車だと思います。
座席付近は他のD&S列車と似て木材を多用していますが、落ち着きというよりは明るさを感じさせる色調になっています。
車内にはバーカウンターがあり、その周囲は中世風の内装に色とりどりのステンドグラス。「16世紀の天草に伝わった南蛮文化」をイメージしたデザインは、他のD&S列車には見られない雰囲気ではないかと思います。
また、列車が発車すると、車内にはジャズの名曲「A列車で行こう」をはじめ、「イン・ザ・ムード」など、耳なじみの曲が流れて旅を彩ります。
さて、この日はツアー客が乗り込んでいたこともあり、バーカウンターが大混雑でなかなかお目当てのものが買えません。
名物はバーカウンターで一杯ずつ作るデコポンハイボールで、サーバーからハイボールを注ぎ、そこにデコポンジュースを加えて混ぜ合わせるのですが、それだけに時間がかかるのは仕方がない面もあります。ローカル線の揺れる線路の上で、着実に一杯ずつ作っていくのは凄いなあ、と思います。
並んでいるうちに、午前中にぶらぶらしていた(前回記事参照)御輿来(おこしき)海岸を通過します。
この場所には「御輿来海岸 30km/h」と書かれた標識があり、特急は減速運転をします(標識は午前中撮影)。ちなみに普通列車は通常の速度で走り抜けていきます。
御輿来海岸を通り過ぎて、ようやく購入できました。
左から、昼からアルコールな気分ではなかったのでデコポンサイダー、天草の塩を使った塩チョコレートと塩バニラアイス。
もちろん、塩と言っても軽く風味を添える程度ですが、それだけでもよくあるチョコやアイスとは違う味わいを楽しめます。
車窓には海岸風景が広がります。
午前中は海に浸かっていた長部田海床路(ながべたかいしょうろ)も、この時間は潮が引いて車が行き来していました。
やがて列車は熊本市街へと入っていき、宇土駅からは鹿児島本線を快走して熊本駅に到着。
乗車時間は40分ほど。もともと三角線自体が短い路線なので、あっという間に到着してしまう印象もありますが、「A列車」の「A」は天草を意味するとのことで、クルーズ船での天草観光などと組み合わせると、豊かなストーリーが広がるのではないか、と思います。
次回は、この後の博多までの行程を紹介して締めくくりとしたいと思います。