君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

遠州鉄道 単線高頻度運転の神髄

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浜松市内を南北に結ぶ遠州鉄道

遠州鉄道は、静岡県内の新浜松~西鹿島間を南北に結び、新浜松でJR線(東海道新幹線東海道本線)、西鹿島天竜浜名湖鉄道と接続します。

この路線、鉄道マニア的には「12分間隔のパターンダイヤ」ということで知られていて、そのあたりを見る目的で、天竜浜名湖鉄道を堪能したのちに西鹿島→新浜松で乗車しました。

天竜浜名湖鉄道については下記の記事をご覧ください。

a-train.hateblo.jp

 

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新浜松駅の発車時刻表と発車案内。

見づらいですが、7時~20時の間、毎時00分、12分、24分、36分、48分の12分間隔で運転されているのがわかるかと思います。

遠州鉄道は全線が単線で、その中でこれだけの高頻度運転を行っている、というのが注目されている点になります。

たとえば、2019年3月に新大阪~放出間が開業したJR西日本おおさか東線は、全線が複線にもかかわらず、開業済みの放出~久宝寺間も含めてほぼ15分間隔。こちらは貨物列車が走るので事情は異なるとはいえ、それ以上の運転頻度なのです。

東京圏でも総武線快速横須賀線は日中の時間帯で1時間に4~5本の運転だったり、大阪圏だと京阪神を結ぶ路線を除いては各駅停車が1時間に4本程度だったりと、複線なのにこれよりも不便な駅はたくさんあります。

 

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北側のターミナルとなる西鹿島駅。2本のホームの他にも側線や引上線が多数あり、様々な車両が留置されていました。

赤の塗装にホワイトの帯とストライプ、というのが基本的なデザインのようです。

雰囲気としては京急に近いものを感じます。

 

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おそらく、数年前の大河ドラマ井伊直虎が主人公になった時にできたと思われるラッピング車。「家康くん」の下半分が鍵盤なのは、たぶん今でも浜松に本社を置くヤマハの影響なのでしょう。

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乗車することになったのは、鮮やかなグリーンが特徴的なラッピング車。「みどでん」だそうです。

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3ドア車なので、乗務員室の背後に座席があり、そこから運転席や前面を眺めることができました。

運転士用の時刻表を見ると、秒の数字までは見えませんでしたが、ほぼ全駅が所要時間2分程度で運転することになっています。

図に起こすとこんな感じになります。

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12分間隔ダイヤにおける所要時間・列車交換駅の概要

※上記画像はWikimedia Commons (File:Enshu Railway Linemap.svg - Wikimedia Commons)の画像をもとに作成しました。クリエイティブコモンズ (Creative Commons — 表示 - 継承 4.0 国際 — CC BY-SA 4.0)のもとで利用可能です。

 

12分間隔できっちり運転するためには、列車の運行中、6分ごとに列車交換を行う必要があります。

この「6分」という数字がどこから出てくるのかというと、以下のような説明になります。

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そして、新浜松・西鹿島での折り返しも、決して余裕があるとは言えない4分という短時間で行うことで、全体として12分間隔のダイヤを維持しているわけです。

小規模な鉄道ではワンマン運転も珍しくありませんが、遠州鉄道では西鹿島からずっと車掌も乗務します。最初は車内が空いていたので、車掌は頻繁に列車内を行き来し、駅の構造に合わせて列車後部だったり、先頭部だったり位置を変えながら、時には駅のホームに降りたりして(おそらく、無人駅があるためだと思います)乗降確認を行い、出発していきます。

発車後の次駅のアナウンス、到着直前のアナウンスは自動放送で行うため、車掌が都度マイクを持つ必要がなく、自由に動くことができます。

また、運転士も駅では窓からホームを覗いて乗降確認を行い、駅によっては車掌に代わってドア閉めを行ったりすることもありました。

途中で乗務員交代があって運転士も交代しましたが、交代した運転士はまるでそれまで自分が運転して来たかのように、簡単な確認だけ済ませるとすぐに発車していきました。

単線の路線では、1列車が遅れると、列車交換を行う他の列車も待たされることになり、その列車を待つさらに別の列車も遅れ……と、どんどん遅れが広がっていって回復が難しい、という問題があります。

遠州鉄道は、路線の長さに対して駅の数が多く、ほとんどの駅で列車交換が可能という設備面の条件もあって高頻度運転を実現できているのですが、むしろ運転士や車掌の細かいきびきびとした動きが、列車の遅延を防ぎ、高頻度運転を維持するための神髄なのかもしれない、と感じました。

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新浜松駅に到着。奥に見える赤い車両の編成は留置しているのみです。再掲になりますが、改札口の発車案内を見ても1番線を利用する表示しかなく、2番線はほとんど使っていないようです。

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改札口の全体。自動改札機ではなく、有人改札ICカードリーダーを設置してある形です。

遠州鉄道で使えるICカードは、遠州鉄道が発行する「ナイスパス」のみで、SuicaICOCA等の他社のICカードは利用できません。

調べてみると、遠州鉄道ICカード導入においては後発ではなく、むしろ先駆的であったがために、他のサービスと互換性を持たせることが難しく、また、そのための費用をかけるメリットも見いだしづらい、ということのようです。

  • 2001年11月18日 JR東日本の「Suica」がサービス開始
  • 2003年11月1日 JR西日本の「ICOCA」サービス開始
  • 2004年8月1日 阪急・能勢電鉄・京阪で「PiTaPa」がサービス開始
  • 2004年8月1日 「Suica」と「ICOCA」が相互利用開始
  • 2004年8月20日 遠州鉄道の「ナイスパス」サービス開始
  • 2006年11月25日 JR東海の「TOICA」サービス開始
  • 2007年3月18日 関東を中心とする交通事業者による「PASMO」サービス開始

2004年という時期は、例えば結果的にポストペイを前提とした唯一のサービスとなったPiTaPaが導入されるなど、ICカードのサービス方式はまだ統一されていない状況でした。そのため、互換性を持たせるのが難しいというのは納得できるように思います。

 

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新浜松駅からJRの浜松駅へ向かう道。

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新浜松駅。遠鉄百貨店を含む、JR浜松駅にも劣らない堂々たる駅でした。

 

時系列としては下記の記事に続きます。

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