君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

鉄道と地元自治体と災害復旧と

www.westjr.co.jp

発表されたのはおととい(2018/11/5)の話ですが、今年の西日本豪雨で被災したうち、今年中に復旧の見込みが立たず「被災時から1年以上」と提示されていた、芸備線の白木山~狩留家駅間について、来年秋を目指すという見通しが公表されました。

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https://www.westjr.co.jp/press/article/items/181105_01_hiroshima_geibi.pdfより)

上記の図を見ると、単に橋梁を新設するだけではなく、拡幅や川底の掘り下げといった河川改修も行うようで、これは広島県が実施することになるのでしょう。

こういう計画を取りまとめるのはそう簡単ではないので、このために復旧見通しの発表に時間を要していたとすれば、やむを得ないことだったと考えます。ともかく、JRと自治体が協力して復旧にあたれるというのはよかったのではないかと思います。

 

この見通しが発表されるまでは、JR他社がやっているように、復旧のために地元負担を要求されたり、廃線を持ち出されるのではないか、という噂もあったようですが、それはないだろうと考えていました。

JR西日本は、ついに廃線になった三江線にしても、災害に対しては都度復旧工事を行っていたし、今回の災害についても、芸備線でもっと成績の悪い区間は迅速に復旧していたというあたりがその根拠になります。

 

こういう話でとても印象に残っているのは、JR東海名松線が2009年に豪雨で被災した時のことです。

もう見れないかと思ったのですが、かろうじて当時のニュースリリースが残っていました。

 

名松線の今後の輸送計画について
http://jr-central.co.jp/news/release/nws000410.html

 

この中で、末端区間(家城~伊勢奥津)のバス転換を提案しているわけですが、その理由としてこういう主張をしています。

このたびの被災後、路盤のみならず周辺の状況を含め、慎重な調査を実施してまいりました。その結果、地形・構造物の制約のみならず、山林を含めた周辺部からの鉄道設備への影響が大きくなっていることが改めて明らかになりました。
従って、仮に復旧したとしても同程度の自然災害ではもちろん、それ以下であっても大きな被災が発生する恐れや長期にわたる運転規制等を行わざるを得ない状況が考えられ、安全・安定輸送の提供という当社の基本的な使命を全うできず、ご利用されるお客様に大変なご不便をおかけする可能性が高いことが懸念されます。 

つまり、周辺環境がひどすぎて鉄道を運行できる環境ではないと言いたいわけです。

「別紙」として添付されている資料がさらに強烈でした。

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わざわざ写真に「対岸道路」と記入し、そして「〇雲出川対岸の道路は整備 被災なし」と、道路には被害がなかったことをわざわざ強調しているわけです。

「こんなんで鉄道なんかやってられるか! もうバカバカしいわ!」

という、心の叫びが聞こえてきそうな資料です。

 

今にして思えば、東海道新幹線の鳥飼基地の井戸の問題、リニア関係の主に静岡県との対立と、いろいろと地元自治体との軋轢を抱えまくりなJR東海の社風というか、とにかく地元の神経を逆なでしようが一向に意に介しない感じがこの時から全開なんだなあ、と思うわけですが、一方で、鉄道の運行に対する地元側の環境整備の責任ということはこの時期にはまだあまり意識されておらず、それを突き付けた意義はあった、という風に記憶しています。

 

JR西日本にしても、言いたいことはいろいろあるんだろうと思います。経営効率の観点からいえば、利用者の少ない路線で、災害復旧のたびにいちいち大金を拠出するのは無駄なのかもしれません。

今回の「第1三篠川橋りょう」の復旧は総工費が13億円と発表されていますが、仮に芸備線だけであっても、他の被災個所の復旧費用も含めれば数字は膨れ上がると思われます。

 

とはいえ、上記の名松線が復旧するまでに何年かかったか、只見線日田彦山線日高本線といった、被災を機に地元負担や廃線を持ち出す交渉をした路線がどれだけ面倒なことになったか(なっているか)を考えれば、とりあえず復旧させるところは復旧させ、廃線等の話はそれとは切り離して考える、という方が、話をスムーズに進める上では得策なのではないかと思っています。