2017年7月の豪雨で被災し、バス代行輸送が続いている日田彦山線の添田~夜明間。その復旧問題で、2020年5月18日、沿線自治体で唯一鉄道での復旧を主張していた福岡県の東峰村がBRTでの復旧を容認する方向だと報じられました。
また、5月21日には、JR九州と福岡県知事が、JR九州が一般道経由の案を提示していた東峰村内の筑前岩屋~宝珠山間を専用道化することで大筋合意していると報じられました。
もともと、この区間を鉄道で復旧する場合は国の支援などを受けたとしても56億円の費用がかかると試算され、その費用をJRと自治体で折半する案が示されていました。さらに鉄道で復旧する場合、JR九州は年間1億6千万円の補助を求めていました。
地元自治体としてもその負担を飲むことができず、交渉が膠着して不通が長期化する中、早期復旧に向け、鉄道維持にそこまで固執しない大分県日田市、福岡県添田町がBRTを容認し、福岡県東峰村が強硬に地元負担なしでの鉄道維持を主張するという構図でした。
JR九州が提示している下記のBRT復旧案では、先行して導入されている気仙沼線BRT・大船渡線BRTを下敷きにしていると思われる内容が見受けられます。そこで両者を比較しつつ、BRTの有効性などについて検討してみようと考えました。
- 第5回 日田彦山線復旧会議(2020年2月12日) JR九州説明資料
https://www.jrkyushu.co.jp/company/other/hitahiko/pdf/200212_shiryo.pdf
とはいえ、まずは全体像を把握しないことには始まりません。
そこで、気仙沼線BRT・大船渡線BRTでやったのと同様、鉄道ルート、代行バスルート、BRTルート案をひとまとめにした図を作成してみました。
日田彦山線BRT復旧案ルート図
JR九州が提示した資料ではBRT復旧案の全体像がつかみづらいので、全体のルート図をGoogleマイマップで作成してみました。
なお、BRTのルートは特に明示されていませんが、現状の代行バスのルートをベースに、資料で示された利便性向上策を反映しつつ、専用道化するところは専用道を通るものとして作成しています。
JR九州と福岡県知事が大筋合意しているという、筑前岩屋~宝珠山間の専用道化についても反映しています。
添田町内(添田~彦山間)
北から順に見て行きます。まずは添田~歓遊舎ひこさん間。
黄色は鉄道での運行区間、紫は代行バスの運行ルート、赤はBRTの一般道部分、グレーは不通となっている鉄道区間を示します。
鉄道とほぼ並行するルートですが、JR九州はこの区間で町バスにあわせて停留所を増設する案を提示しています。
現状、代行バスは駅の北側にある駅横広場から発着しており、鉄道ホームとはざっと200mほど離れています。これを改善するため、ホームにBRTが乗り入れて対面乗り換えを可能にする案が示されています。
引き続き、歓遊舎ひこさん~彦山間。山あいの狭い谷間に入っていくため、必然的に鉄道と道路が並行する形になります。
この区間では、特に停留所の増設などの案は提示されていません。
彦山駅付近。下側の青線は鉄道区間を専用道化する部分を示します。おそらくは図のような形で、一般道から専用道に接続するルートを設けるのではないかと思います。
東峰村内(彦山~宝珠山間)
この区間はご覧の通り、代行バスは大きく迂回しています。彦山→小石原庁舎前→宝珠山庁舎前→筑前岩屋→大行司→宝珠山という、ちょっとツラい迂回ルートです。そのため、一部の便は筑前岩屋を経由せず、宝珠山庁舎から、すぐ目の前にある大行司駅に直接向かっています。
JR九州の案では、筑前岩屋~宝珠山間は一般道とし、筑前岩屋~大行司間で3か所停留所を増設する提案がありましたが、専用道化するとこれは不可能になります。鉄道は集落から見てかなり高いところを通っており、そこに停留所を設けるのは現実的ではないためです。大行司駅も、利用するためには77段の階段を登らないといけない場所にあるようです。
宝珠山駅まで専用道とした場合、上図のようなルートで一般道に移行するのではないかという個人的な予想です。
専用道のまま宝珠山駅まで来てしまうと、そこから先は一般道になかなか移行できないため、手前の大きな道路との踏切で一般道に移行するのではないかと考えます。
また、現在の代行バスは国道211号上に停車していますが、宝珠山の駅舎を活用して駅前に乗り入れる案が示されていることから、上図のように川を渡って駅舎の前で発着する形になるのではないかと思います。
日田市内(宝珠山~夜明~日田間)
大鶴~今山間(他の文字が優先されて駅名が隠れていますが)の間で福祉バスにあわせて停留所を増設する案が示されています。
今山駅付近では、福祉バスの釘原バス停にあわせて停留所を置く案が示されているのですが、一方で、今山駅前に発着するという提案もされています。
この両者を満たすとなると両方に停車することになりますが、川の対岸、移動距離にして300m程度のところに重複して停車する必要があるのかどうかは少し疑問です。
夜明~日田間は、久大本線が運行されているルート。現在の代行バスと同様に、日田駅まで乗り入れる案が示されています。
次回は、こうした予備知識をもとに、JR九州が提案するBRT案について見ていきたいと思います。