2016年4月より上越新幹線の越後湯沢~新潟間で運行されてきた、車内で芸術作品が楽しめる「現美新幹線」ですが、2020年12月で運行を終了すると発表されています*1。
なんとなく気にはなりつつも乗車する機会がなかったのですが、運行が終了するということで8月下旬に乗車してきました。
車両の外観
現美新幹線は、以前秋田新幹線に使用されていたE3系車両の6両編成。
外観は、長岡花火の写真のラッピングです。
越後湯沢側先頭の11号車。普通車指定席として、通常の新幹線列車と同じような形で座席が配置されています。
順に13号車、14号車、15号車の側面。花火の色が移り変わり、とてもカラフルなのが目を引きます。
11号車以外は、車両の片側には窓がありません。その窓をふさいだスペースに作品を展示しているためです。
12号車~16号車は普通車自由席ですが、各車両だいたい15席前後(カウンターのある13号車を除く)で、作品を鑑賞するためのソファが自由席扱いなので、指定席のように普通の座席があるわけではありません。
車内の様子
デッキのところには、編成の案内と、各車両と外観の作者が紹介されています。
11号車の普通車指定席。この黄色を基調としたデザインそのものが美術作品とのことです。
12号車は三角形や四角形を組み合わせたミラー張りの作品。自由席であるソファや、隣に停車しているE2系車両まで鮮やかに映り込んでいます。
13号車の半室はキッズスペース。その壁面の模様は、プラレールをモチーフに制作されているとのことです。
キッズスペースには、プラレールで自由に遊べるスペースがあるのですが、残念ながらウイルス感染対策で撤去されています。おそらく、運行終了まで復活することはないでしょう。
13号室のもう半分はカウンター。飲食品やグッズなどを売っています。その壁面はいろいろなものが描かれたカラフルな絵画。
14号車は巨峰に挑む写真展示。
15号車は、カラフルなオブジェが立体的に吊るされ、列車の揺れにあわせて柔らかく揺れる展示。
16号車は、里山の写真と、やどかりがちょこまか動くムービーが交互に表示される謎の展示。
一通りご紹介しましたが、その面白さを理解するのは、素人にはなかなか難しいのではないかと思います。
下記のサイトにはそれらしい言葉が添えられているのですが……
個人的に一番気に入ったのは15号車の展示でした。
動画を見ていただくとわかりますが、列車に合わせてたくさんのオブジェがふよふよ揺れるさまはなかなか面白いです。列車内という展示場所の特徴をうまく活かした作品だと思います。
買ったもの
一通り作品を見て回った後、13号車のカウンターで購入したのがこの2品。
手ブレしてしまっている左側はこしひかりジェラート。バニラ味のジェラートなのですが、中には炊いたお米らしきものが入っています。炊き立てのみずみずしさすら感じられる米粒の食感がとても面白かったです。
ジェラートは結構硬いので、できれば早めに買っておくのがいいと思います。
右側は三条鍛冶エール。刃物の町・三条(新幹線駅でいえば燕三条)に因んだ、鋼のような色をしたビターなサイダーです。BLACK GINGER ALEと銘打っていますが、カラメルと香料で味をそれらしくしていて、ジンジャー(=ショウガ)を使っているわけではないようです。
この日の車窓はいい青空。雲と青空が織りなす芸術作品も鑑賞できました。
感想とこの列車の楽しみ方
「現代美術」と聞くと身構えてしまいそうになりますが、外観は花火の写真だし、中にも普通の写真展もあったりするので、そこまで「美術」という言葉に囚われなくてもいいと思います。
特別料金を取られるわけでもないですし、別に美術館のように作品をまじめに鑑賞する必要もなくて、新幹線と芸術の組み合わせという一風変わった空間を楽しむ、というぐらいのつもりでいいのでしょう。
乗車時間は最大でも50分ちょっとですから、車内を見て回ってちょっとくつろいだらもう終点です。
展示作品は、こういうのでよかったのかなあ、という疑問はあります。15号車の展示のように、列車内という場所をうまく活かした、直感的にわかりやすい作品が多いと、もっと作品そのものを楽しめるような気もしますが、まあ、そういうのを作りたい作家がいるかどうかは別の話ですからね。
越後湯沢~新潟という運行区間自体がなかなかニッチな感じではありますが、他に類を見ない列車ですので、機会があれば運行終了までに乗ってみるのもよいのではないかと思います。
*1:JR東日本新潟支社プレスリリース『世界最速の芸術鑑賞「現美新幹線」運行終了のお知らせ』(2020年7月27日発行)
https://www.jrniigata.co.jp/press/20200727gennbisinnkannsenn.pdf