JR東日本の関東甲信越・南東北を中心としたエリアのフリーきっぷ「週末パス」で2日間、甲信越地方を巡ってきたのでその記録を綴っています。
新宿→小淵沢→小諸→松本→糸魚川→直江津と、数多くの路線を乗り継ぎ、前回は、糸魚川から直江津まで、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインに乗車しました。
今回は、北越急行ほくほく線で越後湯沢へ、そして上越新幹線に乗車して帰路に着くまでの記事になります。
160km/hの世界から地域密着路線へ
背景の空の色トビがどうにかならないものかと苦心していると、元気な声が聞こえてきました。
「ねー、これどこから乗ればいいの?」
明るいピンクとベージュのリュックを背負った小学生の女の子でした。
「ああ、あそこだね」
先頭の扉を指さしたのが、おばあさんと思われる年配の女性。
「あそこ? 乗ろう乗ろう!」
勢いよく扉に向かう女の子。おばあさんはそのあとをゆったりとついていきます。女の子がドアの横のボタンを押してドアを開け、2人は列車に乗り込んでいきました。
2人とも何かたくさん買い物をしたようなビニール袋を持っていたので、これから列車に乗って、沿線にあるおばあさんの家に向かうところなのかもしれません。
子供の頃、夏休みには祖父母の家によく遊びに行っていました。いろんなところに連れて行ってくれた祖父と、家で穏やかに迎えてくれた祖母。その頃の自分の姿を思い出すような、懐かしい情景でした。
その後、私も直江津駅の他のところを見て回ったのち、この列車に乗り込みました。
直江津を出発した列車は、最初はJR信越本線を進み、2駅先の犀潟(さいがた)駅から分岐して北越急行ほくほく線に入っていきます。
かつて、首都圏と北陸を結ぶメインルートだった北越急行。北陸新幹線が金沢まで開業したことで、特急「はくたか」が時速160kmで駆け抜けた時代は終わり、沿線に根差した鉄道としての道を歩んでいます。
今回、そんなほくほく線の駅を少しでも見てみたいと思い、途中のまつだい駅とほくほく大島駅で下車する行程を考えました。
「週末パス」のようなフリーきっぷを持ってないと難しいのですが、一方向に進むだけでなく、上下の列車をうまく組み合わせると多くの駅を巡ることができます。
鱈がぎっしり! 直江津駅弁「鱈めし」
犀潟駅の次のくびき駅を出ると、北越急行の本領ともいえる、内陸へ向けてショートカットするためのトンネルが連続する区間へ入ります。
そこで、直江津駅で買った「鱈めし」を開放しました。
新潟米の炊き込みご飯と錦糸卵の上に、これでもかと盛られた鱈のバリエーション。
棒鱈の煮つけ、タラコ、そして左下の白いものは「鱈の親子漬け」らしいです。さらに野沢菜のワサビ漬け、奈良漬け、梅干し、はじかみと、彩りも味覚のバリエーションも豊富。とても満足した駅弁でした。
まつだい駅にて
まつだい駅で下車し、降りた列車を見送ります。
そして周囲を見渡してみると、いろいろなものが目に付きます。
ドラゴンクエストにこんな感じのモンスターがいたなあ、と思いつつ撮ってみましたが、「花咲ける妻有」という芸術作品で、この付近一帯で展開されている「大地の芸術祭」の作品の1つだそうです。
こちらはまつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」で、これも大地の芸術祭の関連施設だそうです。
パッと見るだけでは正直よくわからないですが、企画の意図を知ったり、それを踏まえて各地の作品を巡ってみるというのも、この地域を知る上では面白そうです。
北越急行独特の5灯式信号機。一般的な5灯式信号機は、赤は真ん中になります。
中央の3つが下から赤・黄・青で、通常の3灯式信号機と同じ役割。両端の2つは青で、この2つが同時点灯することで特急「はくたか」が最高速度まで出していい、という「高速進行」の信号となっていました。
もちろん、特急がなくなった今となっては両端を使うことはありません。
駅舎内に掲示されていた、駅ごとに寄せられた利用者の意見とその回答。
まつだい駅は道の駅と併設。コンビニの他、飲食店や地元の土産物屋、休憩スペースなどもあり、付近を観光する際には拠点となりそうです。
周囲は住宅や店舗なども多く、そこそこ大きな町でした。
少ししたら折り返しの列車がやってきたので、隣のほくほく大島駅へ向かいます。
ほくほく大島駅にて
下車した列車をお見送り。
この駅はすぐ両側がトンネルで、そのわずかな隙間に設置された駅です。
上り方面の鍋立山トンネルは駅のすぐそば。
下り方向の深沢トンネルも、小川を渡ったすぐ先です。
山に挟まれた小さな空間に集落が展開しています。
駅を出て、下からトンネルを眺めると、今にも特急はくたかが猛スピードで飛び出してきそうな感じです。
ほくほく大島駅の全景。
付近の案内標識がありますが、地域の施設が多く、観光客向け施設としては7km以上離れた「庄屋の家」になるようです。
でも、こうして小川のせせらぎと棚田が見える風景は、それだけで魅力的だと思います。
越後湯沢行きの列車がやってきたので乗車します。
シアター・トレイン「ゆめぞら」で夢の世界を満喫
2両編成の後部車両は、今の北越急行ほくほく線の看板車両となる、シアター・トレイン「ゆめぞら」でした。
トンネルが多いほくほく線を楽しんでもらうため、その環境を逆手にとり、車内を幻想的な映像が流れるシアターにしてしまった車両です。
ほくほく大島を出てすぐにトンネルに入ると、さっそく音楽にのせて車両の天井に映像が流れだします。
駅間ごとに次々とシーンが変わっていくので、次はどんな映像が来るんだろう……と気になって、飽きることなく最後まで見ていました。
「ゆめぞら」は毎週日曜日の運行だそうで、土曜日や祝日は運行していないというのが少し難しい点はありますが、ぜひ狙って見ていただければと思います。
映像が終わると、ほくほく線の終点となる六日町まではもうすぐ。
そして、JR東日本の上越線に乗り入れて越後湯沢へ向かいます。
この付近の特徴である、スキー場やペンションが目立つ車窓。
ほどなくして越後湯沢に到着しました。
上越新幹線で帰路へ E4系の巨大さを改めて体感
広い名産品売り場がいかにも新幹線の駅です。
この時、外では雨が降り出し、やがて強い雨になっていきました。
そんな中、帰りの新幹線の時間になったので駅に向かいます。
17:13発のMaxとき334号。列車名でわかる通り、E7系に置き換えられることが決まっている全車2階建てのE4系車両での運転です。
入線する列車を撮ろうと待ち構えていたのですが、入ってきたその姿を見て、改めてE4系の巨大さを感じさせられました。
収容力を少しでも上げるため、極限まで車体を大きくした車両。
高速化の流れの中では、もはやこのような車両が出てくることはないでしょう。
大清水トンネルを抜けて上毛高原駅に着くころには、すっかり天気が変わって夕陽が町を照らしていました。
こうして2日間、「週末パス」を使って(一部エリア外もありましたが)甲信越の鉄道を満喫した旅も終わりとなりました。
つまみ食いな感もあるかもしれませんが、こうして見て回った中で、興味があったところはピンポイントで再訪するのも、また旅の楽しみでしょう。
というわけで、11回にわたったこの連載も終わりとしたいと思います。
この旅行記の一覧を下記にまとめましたので、気になったところを読みたい方はこちらをご参照ください。