先月上旬、房総半島に大きな被害をもたらした台風15号。
もちろん房総半島と言っても一様ではなく、日常を取り戻すために歩み始められているところ、いまだに被害の復旧もままならないところ、いろいろあって一言では表現できませんが、少なくとも鉄道に関しては、JR久留里線の一部区間を除いては平常通りの運転を再開しています。
そんな「動き続ける鉄道」の姿を追って、9月下旬に小湊鐵道・いすみ鉄道を訪ねました。
前回まで、小湊鐵道で五井から乗車し、途中下車を繰り返しながら11:23に終点の上総中野駅に到着しました。
今回は、上総中野からいすみ鉄道に乗り継いで終点の大原まで向かいます。
小湊鐵道の五井駅で買った「房総横断記念乗車券」が引き続き使えます。五井→(小湊鐡道)→上総中野→(いすみ鉄道)→大原、もしくはその逆方向の一方通行ですが、途中下車は自由にできます。
謎の貸切車両・上総中野駅にて
上総中野駅へやってきたいすみ鉄道の普通列車。鮮やかな黄色と、それにマッチした深いグリーンのラインが印象的な車両です。
この写真を撮る時、近くの畑で刈り取りの手伝いをしていた男の子が、列車が来る時間になると「今度絵を描くから、列車をよく見とかないと」といって、私の横でじっと列車を眺めていました。
やはり、地域のシンボルとして鉄道は大きな存在感があるということを感じさせられました。
発車まで時間がなく、急いで駅に戻った私が見たのは、目を疑うようなヘッドマークでした。
「臨時急行|筋肉 ファイトネス 2019/9/28」
後でネットでも調べてみましたが、企画の情報が見当たりませんでした。
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追記:もっと調べてみたらようやくヒットしました。
明日はいすみ鉄道の列車の中でクワレスをするでござるよ
— クワガタ忍者 (@kuwagata_ninja) September 27, 2019
初めての試みなので楽しみでござる#鉄道ファイトネス #いすみ鉄道 #大多喜 #クワレス #クワガタ忍者 pic.twitter.com/9a5tOeh6jX
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ちなみに急行といっても、普通列車に増結された貸し切り車両です。大原、もしくは大多喜からの折り返しでそのまま運行するようです。
一般の乗客は後ろの2両目に乗り込みます。
意味が分からないのは分からないのですが、でも、台風で痛めつけられた中で、こうした企画が実行され、訪れる人がいるというのはいいことだなあ、と思っていました。
渓谷の中を揺られて、大多喜へ向かいました。
町歩きが楽しい、大多喜駅とその周辺
大多喜駅で下車。10分間の停車時間があるため、貸し切り車両に乗っていた方々も、下車して列車や駅を撮影したりして楽しんでいます。
大多喜駅の駅舎。駅看板の上の時計台が特徴です。
駅の向かいは観光案内所。なまこ壁で城下町をアピールしています。
大多喜駅から北へ5分ほどのところにある踏切にて、大原発の急行1号上総中野行き。
この列車は大多喜駅で18分停車するため、その間に急いで駅の南側に移動します。
同じ列車を、駅の西側の丘に建つ大多喜城をバックに撮影しました。
この列車が上総中野まで行って、折り返してくるのを待って乗車する予定。時間があるので、大多喜の町をゆっくりと見ながら(そして適当に歩いて道に迷いながら)駅に向かいます。
いすみ鉄道と並行に「城下町通り」という通りがあり、そこを中心に、風情ある佇まいの建物が多く見られる楽しい町です。
城門の奥にサッカーゴール。何かと思ったら小学校なのでした。
こちらは大多喜町の役場。建物自体は普通のコンクリートですが、入口の装飾などでやはり城下町であることをアピールしています。
町角には何か所か、このように小さな庭園風の公園が整備され、ベンチも用意されて休憩できるようになっています。
駅まで戻ってきました。「大手門」と大書された門と、運用がなく休憩中のキハ52。
いすみ鉄道の「急行」に乗る
いすみ鉄道の急行は、JR西日本で引退した車両を譲り受けたキハ28・キハ52での運転。大原~大多喜間のみが急行で、大多喜~上総中野間は各駅に停車する普通列車となります。
急行として運転する区間は急行券(自由席)300円、指定席の場合は600円の料金がかかるので、自由席の急行券を買って列車を待ちます。
大多喜始発の14:25発上総中野行き列車。単行での運転です。大原行き急行の到着を待って発車します。
上総中野からやってきた急行2号大原行き。先頭側がキハ28、後方の車両がキハ52になります。
土曜日は「夷隅」、日曜日は「そと房」のヘッドマークを付けることになっていますが、前社長のアイデアで「雨の日は社員が自由になんでもつけていい」ということになっていて、どんなヘッドマークが付くのかというのが楽しみの1つでもあるようです。
上総中野行きの普通列車が発車していき、一瞬2つの車種が並びました。
急行に乗車します。車内は基本的にJRで使われていたままで、しかもさらに昔の国鉄時代の中吊り広告も掲示されていて、懐かしさを全面的にアピールしています。
これはキハ28のボックスシート。片側にテーブルを置き、レストラン列車の座席として使用するようになっています。
指定席が用意される場合はこのキハ28のボックスシート部分が指定席になるそうですが、この日は全席自由席でした。
こちらは車端部のロングシート部分。ここにも木のテーブルが置かれています。
キハ52の方はテーブルはなく、普通のボックスシートとロングシートでした。
JRで使われていたアイテムもあえてそのまま残されています。
計画では、途中駅で下車してさらに列車を撮る案もあったのですが、さすがに早朝からずっと動き回ってくたくただったので、急行の心地よい揺れに身を任せて大原まで乗っていくことにしました。
大原駅で折り返した急行3号大多喜行きを、駅近くの橋からお見送り。
いすみ鉄道でも、台風に負けずに運行している鉄道の姿、そしてこんな時期でも貸切車両で旅を楽しむ人たちの姿を見ることができました。
また、城下町としてのアイデンティティにあふれた大多喜の町は、今度は城も含めて(中は博物館らしいですが)またじっくりと見てみたいと思いました。