先月上旬、房総半島に大きな被害をもたらした台風15号。
もちろん房総半島と言っても一様ではなく、日常を取り戻すために歩み始められているところ、いまだに被害の復旧もままならないところ、いろいろあって一言では表現できませんが、少なくとも鉄道に関しては、JR久留里線の一部区間を除いては平常通りの運転を再開しています。
そんな「動き続ける鉄道」の姿を追って、9月下旬に小湊鐵道・いすみ鉄道を訪ねました。
2017年の2月に、いすみ鉄道→小湊鐵道の順に乗り通して以来の訪問になりますが、単に乗り通しただけだったその時と違い、いくつもの駅やその付近でじっくり時間を取れたのは有意義な経験でした。
早朝の五井駅付近で
下車したら、五井駅初発の列車を撮るため、さっそく駅付近の線路ばたに向かいます。
とにかく、「列車が動いている姿を見る」というのが今回の主眼の1つです。
その道中に出会ったのがこんな踏切。おなじみの×印の警標すらない、とても簡素な踏切です。これが、千葉近郊の主要駅から数分歩いたところに存在するということにまずびっくりします。
休日ダイヤで五井駅の初発となる、6:39発の上総牛久行き。
五井駅周辺のマンションや雑居ビルなどを背にするイメージで撮ってみました。
隣の上総村上駅で入れ違ってやってきた、里見駅6:00発の五井行き列車。
こちらは編成全体を入れる感じで……といっても、設定をミスってブレてしまっているのですが。
列車に乗るために五井駅に向かいます。
線路沿いの雑草もすでに秋の装いです。
五井駅に隣接する小湊鐵道の車庫と、手前に留置されていた木造の貨車。素朴な味わいにほっこりします。
五井駅では、いすみ鉄道まで乗車できる「房総横断記念乗車券」を購入。
これは、五井→(小湊鐵道)→上総中野→(いすみ鉄道)→大原、もしくはその逆の一方向にしか乗車できませんが、途中下車は自由、という少し変わった乗車券。今回の行程にぴったりでした。
その他も含めて、小湊鐵道の乗車券類については下記をご参照ください。
五井駅では7:03発の大原行きに乗車し、3駅目の上総三又駅で下車しました。
わずか13分の別世界、上総三又駅
朝靄に消えていく列車。
上総三又駅に降り立ってみると、左右に広がる田園、木製の電柱、まっすぐどこまでも伸びる線路とそこを行く気動車。
そして、木造の簡素な駅舎。
わずか13分で、別世界にいざなわれたような感覚です。
ただ、情緒に浸っていられるかというとそういうわけでもなく…
この駅舎のトイレ部分は残念ながら崩れてしまっていました。
周囲にも、屋根にブルーシートがかけられた家、それすら手つかずで瓦が剥がされ、窓が飛ばされたまま放置されている家などが目に付き、台風の爪痕を否応なく見せつけられます。
空は見事な群雲でした。奥の山並みにかかる霞とともに、幻想的な光景が視界一杯に広がります。
次の下り列車に乗る前に、上り列車が2本やってきます。
まずは、上総牛久7:13発の五井行き。上総三又駅に到着したところ。
その次が、山奥側の終点の1駅手前、養老渓谷駅の初発(6:59発)となる五井行きです。
駅に戻って列車を待っていると、五井駅7:54発の上総牛久行きが到着。駅舎のベンチで休憩していると、木のぬくもりに包まれる感じが印象に残ったので、駅舎を主役にして撮ってみました。
この列車で、終点の上総牛久駅まで乗車します。
地元の方や学生さん、そして観光客も含めて、座席は余裕があったもののそこそこ乗車している方がいました。
沿線の中心地・上総牛久駅
上総牛久駅には8:21に到着。沿線で利用客が一番多い駅らしく、ここで五井方面に折り返す列車も多数設定されています。
駅を出て、線路と並行する大多喜街道を西へ歩いていくと、街道沿いにある市原高校の生徒さんも何人か学校に向かっていて、自転車で颯爽とやってくる先生と思われる方もいました。
養老川を渡る、上総牛久始発(8:37発)の五井行き列車。
穏やかな郊外の雰囲気を感じる場所です。
街道沿いを上総牛久へ向かう、五井8:35発の列車。
この辺は線路が築堤を走る絶好の場所だと思っていたのですが、手前に電線が張られていたり、隣の大多喜街道の交通量が多く、トラックや大型バスに被られる恐れが常にあったりで、結構苦労する場所でした。
駅へ戻る途中、市原高校そばに設けられた歩道橋から。
山奥側の終点駅・上総中野駅の初発(8:31発)となる五井行き列車です。
右奥に見える商店会の看板など、牛久の町の雰囲気を入れてみました。
その後、閑静な町の中を歩いていき、上総牛久駅へ。
登録有形文化財となっている、堂々たる木造瓦葺の駅舎。
その昔ながらの改札口に鎮座するのは……
真っ黒な2頭の牛の像。逆光が強く、近寄ってもまったく姿が見えないあたりに一層の威厳を感じます。すぐ下には「仲うし」と札が貼ってあります。
こちらは木彫りの猪……に見えます。調べてみると、訪問した時期によって置かれている像が違ったりするようで、面白い趣向だと思います。
駅のホーム。木造の柱、昔ながらの駅名標、そして上屋とベンチ。クリームと赤のツートンの気動車。
味がある、どころか味しかありません。
五井9:16発の養老渓谷行き列車。ずっと日が陰っていて、そのつもりでカラーバランスを調整して待ち構えていたら、到着する時にいきなり陽が照り付けて色が破綻してしまいました。そこで、あえて彩度を落として昔撮ったフィルム写真っぽく仕立ててみましたが、30年前の写真だと言い張っても通用しそうな感じです。
右下に、オレンジ色のデジタル数字で日付が入っていると完璧ですね。
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