
4月13日に開幕した大阪・関西万博。
期間中いつでも入場できる「通期パス」を買ったので、こまめに訪ねていろいろと巡りたいと思っています。
さて、万博について触れた最初の記事の中で、こんなことを書きました。
幸いなことに気軽に行ける距離なので、やろうと思えば、平日の夜、仕事終わりから行って、1つ2つパビリオンを見て帰ってくるということもできます。
でも、仕事終わりに行ってどれくらい楽しめるのかは実際やってみないとわからない。ということで早速、実証実験も兼ねて4月16日の仕事終わりに万博会場を訪ねました。
- 夕暮れ時、大屋根リングの上を歩く
- 海を中心に環境問題を考えるブルーオーシャン・ドーム。そして美味しい出汁のような塩水
- オーストラリアの自然や文化を、見て、食べて、聴いて楽しむパビリオン
- 「輪島塗の地球儀」が展示された「夜の地球」
- 4月16日のまとめ:「万博のレガシー」について考えてみた
夕暮れ時、大屋根リングの上を歩く
会場の東ゲートに着いたのは18時半の少し前。退場していく人が多く、入場する人はほとんどいなかったため、手荷物検査とチケット確認はあっさりと終わって入場しました。
開幕日からの3日間はいろいろと天候が崩れることが多かったですが、この日は終日穏やかな晴天でした。
東ゲート付近をぶらぶらしていると、大阪ヘルスケアパビリオンで嘉門タツオのライブが行われていて、「アホが見~る~ ブタのケ~ツ~」のリフレインが聞こえてきました。




大阪・関西万博では、入場後10分経ったら、当日のパビリオン、イベントで空いている枠の予約ができます。この日は、3日前の空き枠先着予約でオーストラリアパビリオンに行く予定でしたが、その前に時間が空いていたので、オーストラリアパビリオンの近くにあるブルーオーシャン・ドームを予約しました。
どちらのパビリオンも東ゲートからは少し遠く、西ゲート付近の大屋根リングのそばにあるので、今日は天気もいいことだし、リングの上をのんびり歩いていくことにします。
東ゲート付近にあるエスカレーターからリングの屋上に上がると、会場の向こうに、リングの反対側と、その上に登っている人たちの姿まで見える。この世界観がすごくいいと感じます。



海を中心に環境問題を考えるブルーオーシャン・ドーム。そして美味しい出汁のような塩水

西ゲート近くでリングを降りてブルーオーシャン・ドームへ。3つのドームでできたパビリオンで、見どころは大きく分けて2点、「水や海をテーマにした展示」と、「軽量で再利用可能な建築の工夫」だと思います。
最初にドームAに入ると、キラキラした音が聞こえてきます。そこにあるのは、高いところに置かれたガラス製のししおどしから落ちた一粒の水が、細かく突起が刻まれた斜面を下り、やがて一筋の流れとなってくねくねした回廊を流れていき、最後はまた水滴となって、広い円の中をくるくる回りながら中央の穴に回収されるという、山から海への水の流れを表現した作品でした。
水が流れる回廊を超撥水加工することで、不思議な水の動きを実現しているのだそうです。



ドームAからドームBに続く廊下では、海洋プラスチック廃棄物について訴える映像が流れます。プラスチックの使用量が年々急速に増加しており、それに伴って増え続ける海洋プラスチック廃棄物の量は、2050年には魚の量を上回るのだそうです。


ドームBでは、球体のスクリーンに海の誕生や海洋生物の進化、廃棄物による海洋汚染といったことが映像で表現されます。


最後のドームCはイベントなどにも使われるスペースで、海洋汚染の対策に取り組む人たちのインタビュー映像や資料展示などと共に、「海と山の超純水」が売られていました。
見た目だいたい80mlほどで540円です。いやさすがにそれはあり得んすわ、と思いつつ、まあこれも何かのネタに、と思って注文してみました。丁寧に急須からカップに注がれます。
飲んでみたら、塩水なのに、上質なだし汁のようでとても美味しかったのでびっくりしました。高知県の塩職人が作り上げた塩と熊野の山の天然水を使い、豊富に含まれるミネラルが味を作り出しているとのこと。「一汁一菜」の提唱で知られる、料理研究家の土井善晴さんが手がけたものだそうです。
どんなにおいしくても、80mlに540円は、さすがに飲み物としては法外な値段だと思います。でも、そこで得られる体験からすると、安いとは言わないけど価値があるものではないか、と思いました。
この日はホットで提供されましたが、夏はアイスになったりするのでしょうか。アイスにしたらまた飲んだ印象が変わりそうな気もします。


もう1つの見どころは各ドームの建築です。建築家の板茂氏が手掛けたもので、骨組みには竹の集成材、カーボンファイバー、紙管という素材が使われています。いずれも建物の軽量化が可能で、特に埋立地である夢洲での仮設建築ということから、杭を打たなくてよい工法として採用されたようです。このドームは、万博の後にはモルディブの海洋リゾートで活用されることが決まっているとか。



オーストラリアの自然や文化を、見て、食べて、聴いて楽しむパビリオン
次に訪ねたのがオーストラリアパビリオン。予約していたのは20時からでしたが、特に並んでいる人もおらず、誰でもどうぞという感じで招き入れられていたので、時間より早めに入りました。



オーストラリアパビリオンは3つの要素で構成されていて、1つは会場の設備や映像でオーストラリアの大自然を感じる没入型の体験。そして2つ目はステージでのイベント、3つ目はステージに隣接するカフェや物販です。ステージやカフェ・物販は特に制限はなく誰でも利用できます。


パビリオン内部の映像は数分で終わります。外のステージでは、「デュオ・アキ」という、バイオリンとサックスの女性デュオが演奏を行っていました。中には、サックスの代わりに尺八を用いた曲があったり、山梨県の秋の風景を題材にした「Akibare」という曲があったり、日本にもかかわりがある活動をされているようです。一方で、オーストラリアの先住民族をテーマにした曲などもありました。こういうパフォーマンスに浸るのも万博の楽しみ方だと思います。


カフェで購入したのは、オーストラリア産の牛肉やチーズを使用したビーフブリスケットバーガー(1700円)、オーストラリア産サーモンに枝豆やワサビソースといった日本の食材を絡めたサーモンポキボウル(1700円)、そしてオーストラリアから輸入されているブラッドオレンジソーダ(680円)です。
一番人気はワニ肉のフィレを使ったサンドのようなのですが、それは売り切れていました。夜は、期待した品物が売り切れている可能性があるのは要注意ですね。
バーガーは大きなビーフブリスケットと、ラぺのような野菜がふんだんに挟まれてボリュームがあります。ポキボウルは、サーモン、野菜、ライスなどの食材をワサビソースとクリームチーズでまとめ上げ、こちらも結構量がありました。両方とも、食べ応えとしては味も量も満点でした。


(右)ビーフブリスケットバーガー、サーモンポキボウル、ブラッドオレンジソーダ
「輪島塗の地球儀」が展示された「夜の地球」
オーストラリアパビリオンを後にしたのが20:40すぎ。1時間弱の滞在でした。
万博会場は22:00まで開いていますが、パビリオンの閉場は21:00に統一されているので、ほとんどはすでに入場受付を終了しています。
そんな中、まだ入れた「夜の地球」へ。能登半島地震にも耐えた、「輪島塗の地球儀」の超大作が目玉です。この地球儀は、「対立や分断を超えて他者に思いを巡らすことの意味を、輪島の片隅から世界に向けて伝えていきたい」という願いを込めて製作されたそうです。展示されるようになった経緯としては、イランが撤退した埋め合わせだったようですが、リングの中央近くに配置されるパビリオンにふさわしいものと言えると思います。



www.art.city.wajima.ishikawa.jp
また、地球儀の展示の前には輪島塗の製作工程についての展示があり、地球儀と同じ部屋には、世界の主要都市の夜を描いた作品も展示されていました。
そして最後には輪島以外の伝統工芸品も展示されていました。
後は、また大屋根リングの上を歩いて東ゲートに戻り、帰路に着きました。滞在した時間は3時間ほどでしたが、夜の会場はどこを見ても綺麗で、充分にさまざまな経験ができたと感じました。
4月16日のまとめ:「万博のレガシー」について考えてみた
350億円をかけて建設された万博のシンボル「大屋根リング」について、55年前の大阪万博の「太陽の塔」と同様、万博のレガシーとして残すべきではないか、という話が出ています。
でも、本当にレガシーとして残るものは何だろうと考えた時、それは2つあるような気がしてきました。
まずは、万博で示された技術的な可能性を、社会で広く活かしていくこと。大屋根リングに用いられた「直交集成材」(CLT)は、さまざまな課題はあるものの、強度や耐震性でメリットがあり、木材を大規模建築に用いる可能性を持っているそうです。木材がより多く活用されるようになれば、林業の振興、そして森林の適切な維持管理というところにつながっていきます。
また、ブルーオーシャン・ドームの骨組みに使用された竹、カーボンファイバー、紙管という素材も、新たな可能性を提示するものだと思います。今後、他のパビリオンを訪ねた時に、たぶんいろいろな可能性を目にすることになるのだろうと期待しています。
もう1つは、「知ることで縁ができる」という、来場者ひとりひとりにもたらされる効果です。
以前、東日本大震災の被災地で、震災遺構として保存された施設を初めて訪ねた時に考えたのは、「一度知ったことで縁ができれば、今後はその土地のニュースなどに関心を持つようになる。そういったことが大事なのではないか」ということでした。この日に見た輪島塗の地球儀も、人によっては、能登という土地に関心を持つきっかけになるかもしれません。
万博では挑戦中の技術、新しいデザイン、世界のさまざまな事物など、見知らぬさまざまなものを見ることができます。知らなかった何かに縁ができてそれに注目するようになれば、その人の視野は一つ広がったことになります。そうした来場者ひとりひとりの視野の広がりというものが、実は何よりのレガシーなのではないか、ということを考えるようになりました。
だから、本当のレガシーというのは形に残らないものなのではないか。そんなことも、今後訪れる中でさらに考えていきたいと思います。