君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

「おかえりモネ」の舞台を訪ねて (8)登米町のおかえりモネ展とロケ地訪問

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「おかえりモネ」をアピールする横断幕が掲げられた、登米町の観光物産センター

宮城県気仙沼登米を主な舞台とした、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」。

5月17日に放送が始まりました。

気仙沼沖の島で育った主人公の永浦百音(愛称が「モネ」)が、高校卒業後に祖父のつてで登米で仕事に就き、そこでの出会いをきっかけに気象予報士を志す……という話なのですが、連続テレビ小説の定番である幼少期からのスタートではなく、話は登米で仕事を始めたところからスタートします。

前回は、お盆の帰省の場面で登場した気仙沼線BRTについて書きました。

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今回は、放送開始後の登米市の様子や、最初の2週間でドラマに登場したロケ地をいくつか訪ねたので紹介します。

仙台~登米町間の高速バス、増発中

ドラマの放送開始を受け、6月1日より、東日本急行が運行する仙台と登米町(とよま総合支所)を結ぶ高速バスが、登米市の要請で5往復から8往復に増発されています。

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登米町(とよままち)は、登米市の東部、北上川流域の町で、町の東側には山林が広がり、ドラマに登場する「米麻町(よねままち)」のモデルと言っても差し支えない地域です。ロケ地は市内各地にありますが、もっとも集中しているのが登米町になります。

バスの増発前は、登米町から仙台に向かう用途で利用しやすいよう、登米町発は朝が中心、仙台発は昼以降が中心でしたが、この増発によって特に朝の仙台発が強化され、登米町を観光で訪ねる用途としても利用しやすくなりました。

今回は、東京駅から6:32発のはやぶさ1号に乗り、仙台駅からは増発された8:35発のとよま総合支所行きに乗車しました。

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仙台駅では32番乗り場から発車。「おかえりモネ」ロケ地をアピールする表示が。

ただ、乗車したのは私1人で、登米町に着いて下車するまで貸し切り状態でした。

もともと需要がなくて設定されていなかったわけですから、ドラマ需要で増発したからといってそうそう乗るものでもないのでしょう。

市の要請で増発しているということですから、当然、赤字は市が補填することになっているのだと思います。

実のところ、登米市のロケ地で一番の注目ポイントといえる「米麻町森林組合」(ドラマで登場する森林組合)の施設は登米町でも市の中心部でもなく、市の西部の「長沼フートピア公園」にあり、付近には市民バスも含めて公共交通の便がありません。

それなら、最初から車で行くしかないという話になってしまうので、バスにとってはちょっと辛い状況かもしれません。

前回、登米町とJR柳津駅のアクセス強化の希望について書きましたが、もっと言えば、JR新田駅東北本線)~長沼フートピア公園~登米市役所~登米町~JR柳津駅気仙沼線)といった東西軸の周遊バスがあればベストだと思います。

もちろん、そんな周遊バスを設定したところで誰が乗るのか、というのが現状なのでしょうが。

バスは登米町に着く直前、JR柳津駅付近から北上川沿いを北上します。この日は、前日に東北地方に降った大雨で増水した状態でした。

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教育資料館とおかえりモネ展

登米町を代表する観光施設に、旧高等尋常小学校の校舎を保存して活用している「教育資料館」があります。

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教育資料館の正門

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正門を入って正面。明治期の和洋折衷の建築が保存されている。

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展示の一部である再現教室。他には裁縫室、校長室、各種資料展示などがある。

「おかえりモネ」では、森林組合で林間学校の生徒たちを受け入れた際、「この建物は全部木でできている」ということを説明する場所として登場します。

そんな教育資料館の一室で、今は「おかえりモネ展」が開催されています。

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教育資料館で、校舎の中に立ち入って見学するのは有料(大人個人で400円)ですが、おかえりモネ展の部屋だけは無料で見学できます。

内容は、ストーリーやキャラクターのパネル展示、記念撮影用パネル(2パターン)、登米での撮影風景の写真展示、撮影用小道具の展示、そして出演者のサイン色紙の展示です。

出演者のサインだけは撮影禁止になっていますが、その他は撮影OKとのことです。

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キャラクターや撮影セットなどのパネル展示
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2パターンの記念撮影用パネル

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登米での撮影風景

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米麻町森林組合のジャケット
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撮影用の小道具各種。台本の展示も。

観光物産センター「遠山之里」

登米町の観光拠点となるのが観光物産センター「遠山之里」。教育資料館に隣接していて、駐車場、観光案内、物販、レストランなどがあります。

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建物の周囲には(そして周辺のあちこちにも)おかえりモネをアピールする幟が立てられています。

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後日、気仙沼についても改めて紹介しますが、登米市の幟は黄色や黄緑、そして気仙沼は水色で、「森の町・登米」と「海の町・気仙沼」の対比を意識した色遣いになっています。

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気仙沼の幟(手前側)は水色

「遠山之里」ではいろいろな「おかえりモネ」グッズやお菓子が売られていますが、大半は既製品にロゴやお天気アイコンをくっつけただけという、いろいろとありがちなパターンで、正直言ってたいして面白いものがあるわけでもありません。

そんな中で目を引いたのは、ロケの際に出演者や関係者に提供されたという弁当。土日の昼間だけの限定販売です。「あの人が食べたかもしれないものと同じものを食べる!」という気分に浸るにはいいかもしれません。

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館内のレストランでは丼や麺類などのメニューもありますが、ドラマではおばちゃんたちが何かと作ってくれる油麩(あぶらふ)やはっと汁などの郷土料理も味わうことができます。

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こちらは店名の「蔵.らー(くららー)」にちなんだ「蔵.らーセット」。

油麩丼、はっと汁の他、漬物、山菜などの煮物、刺身、牛タン、そして左上に隠れていますがローストビーフと言った賑やかな定食です。デザートも付いてます。

登米市は畜牛も盛んらしく、高級品は「仙台牛」ブランドで出荷されているそうです。

昼頃になると訪れる人が増えてきて、「この後は気仙沼の亀山に行って……」とか、「BRT見に行こう」とか、ロケ地巡りと思われる話がたくさん聞こえてきました。

サヤカの家、寺池園へ

「おかえりモネ」で主人公が下宿することになる新田サヤカの家として登場するのが、遠山之里から北に坂道を登って行ったところにある「寺池園」です。

駐車場があるので車で行けば3分ほど。歩いていくと15分ほどですが、約60mの登りになるので行きは少し頑張りどころです。

なお、徒歩と車以外の選択肢としては、遠山之里のすぐ近くの水沢県庁記念館でレンタサイクルがありますが、1日300円という料金から考えておそらく電動アシストはないと思うので、重荷になるだけでそれほど役に立たないかもしれません。また、タクシーは常駐しているわけではなく、付近のタクシー会社から呼ぶ必要があります。

だから結局車が一番便利、ということなってしまうんですよね。

寺池園は私有地であり、普段は公開していません。今回、期間限定で公開されており、入園料金は200円(大人・子供問わず)です。

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寺池園の入口。ここから森の中の小径を少し進むとすぐに建物があります。

受付にはガイドの方が複数名待機していて、入園料を支払うと、1組に1人ガイドがついて撮影ポイントなどの説明を一通りしていただけます。とても力を入れているのがわかります。

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寺池園の住居部分。なお、登米では外観や庭での撮影が行われ、住居内部は東京でのセット撮影とのことです。

写真右側に見える階段は、本来はなかったもので撮影用に付けたとのこと。

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庭の花壇の部分。「おかえりモネ」では、撮影時期の制約から季節感がいろいろと破綻している状況も見受けられますが、ここでは、花で季節感が破綻しないよう、かなり苦労をしていたそうです。

具体的にどういう苦労があったかは、ぜひ現地で入園料を払ってガイドさんの話をお聞きください。

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モネと父親の語らいの場面などで登場する東屋。

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ドラマでは洗濯機が置いてある場所。よく考えると電源や水道をどうしたのか気になりますが。

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北上川や流域を眼下に見下ろす眺望。といってもこの日は最初に紹介した通り、大雨で増水した濁流でしたが……。

これを背景に記念撮影するためのベンチも置いてあります。

ここに家を建てた当初は手前の木々がもっと低く、さらに見晴らしがよかったとか。山の景観あるあるですね。

登米能」の舞台、森舞台へ

寺池園の次に、ドラマの中で雨が降るかどうかが心配された「登米能」の舞台、森舞台を訪ねました。

なお、ドラマでは「とめのう」と呼んでいますが、実際には「とよまのう」です。ドラマには「登米町」という町は登場しないので「とめ」に変更されたのでしょう。

森舞台も遠山之里からは歩いて15分ほどですが、寺池園からショートカットする道があるのでまとめて訪問するのがよさそうです。

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森舞台の外観。「おかえりモネ」に関係があるところには必ず幟が翻っています。

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能舞台の全景。背後の竹林に包まれるような空間に特徴があります。

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砕石が敷かれ、凛とした雰囲気が感じられる見所(観覧席)。

この森舞台の設計は建築家の隈研吾氏。全国的には新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅のデザインなどで知られていますが、三陸地方でいえば、南三陸町の南三陸さんさん商店街やハマーレ歌津(商店街)、陸前高田市の中心部にある「まちの縁側」など、震災復興を担う施設にも多く携わっています。

しかし、この森舞台の完成は1996年なので、最近の氏の活躍よりは少し前の時代のものと言えそうです。

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舞台には堂々とした松や青竹の絵が描かれています。

ドラマでは、サヤカが大切にしているヒバの大木を切って、舞台の修繕に使いたいという話が出てきますが、実際にこの舞台の柱はヒバの木で作られているそうです。

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舞台の下に乱雑に置かれているように見えるいくつものカメ。

これは、床拍子(決めのシーンなどで足で床を強く叩く)の音を響かせるためのものだそうで、要はギターの空洞と同じ役割をするものなのでしょう。

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室内からも観覧することができます。

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機能面の工夫としては、見所に段差を設け、その下を展示室とすることで、限られたスペースを有効に活用していることがあります。展示室には能面や楽器、隈氏のサイン、過去の登米能のポスターなどの資料が展示されています。

能は馴染みがないので多くを語れないのですが、能楽堂のような屋内施設と異なり、森に包まれた空間で演じられる能は、他にはない雰囲気があるのではないかと思います。それが、伊達家の時代から守り続けてきた登米能の誇りといえるのかもしれません。

桃津駅……ではなく柳津駅

この日は気仙沼に向かうため、JR柳津駅へ。ドラマでは「桃津駅」として登場した駅です。

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登米町柳津駅の間の市民バスは休日だと1日2往復しかないので、タクシーを呼んで向かいます。だいたい2,200円ぐらいでした。

タクシーの運転手さんは、ロケで移動する役者さんを2回運んだことがある、という話をされていました。新田サヤカを演じる夏木マリさんも乗ったことがあるとか。

ドラマの関係者は市の中心部(佐沼地区)に宿泊していたらしく、そこと登米町との移動があったそうです。

柳津駅には、観光協会の方が駐在されていて乗車券を買うことができます。バスを待つ間に、ドラマに駅が登場したことについて少し話を伺いました。

  • 桃津駅のシーンの撮影は昨年11月上旬。駅前の桜並木の紅葉がいっぱい散っていたので事前にだいぶ片づけて、背景にどうしても見えてしまうのは、気付く人が気付くのはしょうがない、というつもりだったそうです。ただ、お盆のシーンなのになぜか紅葉、というのは結構多くの人が気づいていたと思います。
  • 最近、駅やBRTを見に来る方が増えたとのこと。列車やBRTで来るのではなく、車やバイクで来て、また他の場所に向かうそうです。それらの方から他のロケ地の情報を聞いたりすることもあるとか。
  • 柳津駅では、BRTの運転手さんが折り返し待ちの間に窓口の方と雑談しているのをよく目にしますが、ドラマでモネに声をかける運転手を見て「あんな運転手さんいたっけ?」と思ってたら、実は役者さんだったと後で知ったとのことです。
  • BRTの車内でモネが海(志津川湾)を見つめるシーンがありますが、そのバスの運転は営業所長さんが担当したらしい、とのこと。詳しく聞きそびれてしまいましたが、JRの気仙沼BRT営業所の所長がバスの運転をするとは思えないので、おそらくミヤコーバスの営業所長、エリア的には佐沼営業所ということになるのではないかと想像しています(あくまで想像です)。

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そうこうしているうちに発車5分前になったので、気仙沼行きのBRTへ乗車。

志津川で途中下車し、南三陸さんさん商店街で三陸グルメを堪能して気仙沼へ向かいました。

次回は放送開始後の気仙沼の様子や、ロケ地巡りについてお伝えします。

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