君と、A列車で行こう。

鉄道とシミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を中心に綴るブログ。当面、東北地方太平洋沿岸の訪問をメインにしています。

岩手県梅雨の4連休の旅 (2)SL銀河で遠野から釜石へ

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遠野駅に停車中のSL銀河。給水などのために上下列車とも長時間停車する

7月23日~26日の4連休、釜石、宮古などの岩手県沿岸を中心として旅行をしたので、その記録を順にお届けします。

初回は、新花巻で東北新幹線から釜石線に乗り換えて遠野駅へ行き、その西側でSL銀河を撮影したところまでお伝えしました。

a-train.hateblo.jp

今回は、遠野駅から釜石駅までSL銀河に乗車します。

SL銀河の運行日・ダイヤについて

「SL銀河」はJR釜石線の花巻~釜石間で運行されるSL列車です。

以前から、釜石線には他地区のSLを借用して臨時列車が運行されていたそうですが、2014年、それまで盛岡で展示されていた機関車を復活させ、震災後の観光支援の意味も込めて運行を開始しました。

だいたい、土曜日が花巻→釜石、日曜日が釜石→花巻、というように1往復がセットで設定されていて、7月の4連休の時は23日が花巻→釜石、25日が釜石→花巻という設定でした。

通常、4月から12月にかけて運行されるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響で春の運転は取りやめとなり、7月18日・19日の往復から運行を再開したところでした。

列車については、下記のページに詳細な紹介があります。

www.jreast.co.jp

列車としては花巻~釜石で通しの設定になっていますが、ダイヤは

  • 下り:花巻 10:37発→遠野 12:13着/13:31発→釜石 15:08着
  • 上り:釜石 10:58発→遠野 12:44着/13:53発→花巻 15:19着

と、遠野駅で1時間以上停車します。これは、遠野駅で水を補給したり石炭が燃えた炭を捨てたりするためらしく、その間に上下とも別の列車が追い越して終着駅まで先着するので、先を急ぐ人はそちらに乗り換えることもできるし、逆に別の列車で追いついて遠野から終着駅まで乗車する、ということもできます。

快速「はまゆり」で約1時間40分、各駅停車で約2時間強のところ、全線乗り通すと約4時間半というなかなかのロングランになるため、半分だけ乗るのも割と現実的な選択肢だと思います。乗車証明書も花巻~遠野間、遠野~釜石間で2枚用意されていますので、半分乗れば入手できます。

遠野駅でSL銀河をいろいろと見て回る

SL銀河の撮影を終えて、遠野駅前の観光案内所でレンタサイクルを返却。

釜石行きの発車までは40分ほどあったので、いろいろと見て回ります。

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駅に停車中の列車。時々、動作確認のためか煙を上げていて、それを動画撮影するファンの方もおられました。

あと、発車した先にある跨線橋にもたくさんの撮影者がいるようでした。

SL列車の場合、撮影はどこでもいいわけではなく、「煙が出るところ」というのが重要で、煙が出るのは加速するところです。駅を出た直後は必ず加速のために盛大に煙を上げるので、そこに撮影者が集まるわけです。

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ホームから駅舎側を撮影。

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車両の側面には、「SL銀河」のオシャレなロゴとともに、「銀河鉄道の夜」に登場するさまざまな動植物や星座などが描かれています。ロゴや星座のシンボルには真鍮の板を貼り付けてあり、立体感のあるデザインとなっています。

また、写真は釜石側の4号車から花巻側へ順に並べましたが、車体の色が少しずつ変わっていっています。これは夜が明けて朝に向かうイメージを表現したもので、やはり物語の世界観を表現する演出となっています。

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花巻側の最後尾から撮影。

通常、SLが牽引するのは動力がない客車ですが、SL銀河に連結されているのは単独運転も可能な気動車です。一般的に、SL単機では勾配でパワーが不足する場合があり、他のSL列車ではディーゼル機関車電気機関車を補助として連結するケースが多いのですが、ここでは気動車自体に動力があるため、補助機関車がないのが大きな特色になっています*1

SL銀河の車内

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車内は赤いレトロなデザインの4人掛けボックスシートを基本とした構成です。

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車内にもいたるところに、やはり「銀河鉄道の夜」の世界を表現した装飾があり、単にレトロな雰囲気を味わうだけではなく、没入感を高める演出となっています。

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車両の端の方には、さまざまな展示物が置かれています。宮沢賢治の直筆原稿らしきものや、天体観測にまつわるもの、岩手の工芸品などです。

なお、車内ではプラネタリウム、図書貸し出し、記念撮影などのサービスがありますが、これらは新型コロナウイルスの感染予防として中止となっていました。

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車内では、乗客への案内の合間に、フリースペースなどの消毒をされているアテンダントの方の姿もありました。

釜石線のハイライト、仙人峠越えへ

列車は定刻通り発車します。

指定席は「窓側」を指定して取ったのですが、ボックス席の後ろ向きの席で、対面の席には別の方がすでにいたので、状況的に窓側には座れず、通路側に着席。

そういった状況なので、車窓の写真はありません。

沿線でヒマワリが満開だった場所には撮影される方が集結していて、近くの乗客の方が「撮り鉄すごーい!」と声を上げて驚いていました。沿道を埋め尽くす駐車、そしてぎっしり立ち並ぶ三脚。まあ、見慣れないと(見慣れていてもそうですが)異様ですよね。

撮影する側からすれば、ヒマワリ畑の向こうを走るSL列車はとても絵になる光景だと思います。

では乗客からしたら、ヒマワリ畑の向こうに群がる撮影者というのは絵になる光景でしょうか。

そういったことも、名景においては意識すべきことかもしれません。

列車は遠野駅から4駅進んだ足ヶ瀬駅でいったん停止します。ここは列車の停車駅ではなく、ドアは開かない「運転停車」になります。

ここから洞泉駅までが、釜石線のハイライトとなる仙人峠越えとなります。

この付近の線形は上の図の通り。かつては足ヶ瀬駅から北東に進んだ川の突き当たりに仙人峠駅があり、そこから陸中大橋駅(当時は大橋駅)まで旅客は徒歩連絡、貨物はケーブルカーで輸送、という時代もあったそうです。

まず、足ヶ瀬駅から上有住駅までは、そのほとんどをトンネルで抜けていきます。

そして、上有住駅からは分水嶺となる仙人峠を越え、一旦北に向きを変えて少しずつ高度を落とし、180度向きを変えて陸中大橋駅へ。ここからは川沿いに進み、洞泉駅からようやく東に向かえるようになります。いわゆる「Ω(オメガ)ループ線」と呼ばれる線形になっています。

前述の通り、この峠越えではSLと気動車の協調が機能しないと進めないため、確認のための時間を取っています。

長大トンネルを抜けていく際、SLの煙が入るのを防ぐため窓を閉めるよう案内があり、係員の方が車内を見回ります。

だいぶ長い停車時間を取った後、いよいよ出発。トンネルを抜けて上有住駅に停車し、ここでもまた数分間の停車時間を取って発車。

仙人峠をトンネルで抜けると、進行方向右手の下の方に、陸中大橋駅から先の線路が見えてくるというアナウンスがあります。年配の係員の方が車内を回って案内をしています。

ぐるっと右へカーブして、トンネルを抜けたら陸中大橋駅。ここでは対向列車との交換のため長めの停車時間があります。

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遠野では晴れていたのですが、仙人峠に向かう頃から曇ってくるようになりました。

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列車がやってきた花巻方面を撮影。

右に見えるのは釜石の鉄鋼業を支えた鉄鉱山の遺構。かつては釜石からここまで鉱山鉄道が通っていました。

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この小さな滝がそうかどうかはわかりませんが、付近の湧き水は「仙人秘水」と呼ばれ、ミネラルウォーターとして販売もされています。

釜石にて虎舞のお出迎え

列車は、対向の快速はまゆり6号が通過するのを待って発車。進行方向右手を見上げると、もしかしたら今通過した快速列車が見えるかもしれない、というアナウンスがあります。

後は甲子川(かっしがわ)沿いに進んでいきます。人里離れた山中から、次第に集落が見え、市街地へと変わっていきます。

車窓に新日鉄の工場施設が見えてきたらいよいよ釜石です。

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下車すると、隣のホームで釜石虎舞のお出迎えがありました。

獅子舞ではなく虎舞です。航海の安全祈願などで三陸沿岸で広く行われているようです。

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この辺で舞い手の交代があったようです。

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何気なく見ていると伝わりにくいですが、こうして一瞬一瞬を切り取ると、背中を見せる、大きく広げる、横移動するなど、2人の舞い手の息が合わないとできない演舞だということがよくわかります。

ホームの出口では、観光協会の方から小さな布バッグを受け取りました。

中には、扇子、手ぬぐいや絆創膏・ティッシュなどのグッズ、そして観光ガイドが入っていました。SL銀河乗車記念として、市内の観光施設や宿泊施設で使える500円のお買物券もあったのですが、使うのを忘れていました。

SL銀河弁当

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この日、ホテルでの夕食は、SL銀河の車内で購入したSL銀河弁当。

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ウニの炊き込みご飯、アワビ、パーナ貝、鮭、海鮮シュウマイといった海の幸と、ウリ、ゴボウなどの山の幸が融合した、釜石線らしいお弁当でした。

見どころの多いSL列車

SL列車は各地で運行されていますが、SL銀河はその中でも見どころが多い列車と言えるのではないかと思います。

特徴として、まず「銀河鉄道の夜」という物語の世界を表現するSL列車であるということ。磐越西線の「SLばんえつ物語」は「物語」と付いていますが、それは乗車体験そのものを物語という言葉で表現しているものであって(JR九州の「Design&Story」に近い意味合い)SL銀河の持つ意味合いとは異なります。

もう1つは、本格的な山越え路線であるということ。他の路線でも一部に急勾配があるところはありますが、上有住~洞泉間の「Ωループ」のような、線形を歪めざるを得ないほどの山越えは現時点では他にはないはずです。細かく停車して、確認しながら進んでいくさまはいかにも峠越えという迫力があります。

また、客車に気動車を利用することで(これ自体は好みが分かれそうですが)電気機関車ディーゼル機関車の補機がないため、編成としてシンプルで見た目がいいということも注目すべき点かと思います。

実は、「銀河鉄道の夜」は読んだことがないのです。とりあえずWikipediaであらすじだけは見たのですが、これをきっかけに、物語をちゃんと読んでみたいと思っています。

後日談として、25日の花巻行き列車を釜石駅付近で撮影したので、それはまた別記事でお伝えします。

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次回は翌日の宮古編になります。

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*1:この気動車(キハ141系)は、もともとJR北海道で客車から改造されたものらしく、そう思って見ると顔がJR北海道っぽくも見えます。