
先般話題に上がってきた大阪・関西万博の「未使用チケット」の件が、なにやら変な方向に向かい始めています。
未使用チケットの件については、まず、各マスメディアが、根拠のない数字を流布して一人歩きさせている、ということを指摘する記事を9月23日に書きました。
その後、博覧会協会からこの件に関する対応が発表されました。
概要は以下の3点です。
- 公式チケットサイトでの新規チケットの販売は9月30日で終了*1。
- 会場の東西ゲート前のチケット引換所での当日券の販売は9月26日で終了。
- 9月27日から10月12日まで、東ゲート前のチケット引換所で、未利用チケットを当日券へ交換する。来場者1名につき未利用チケット1枚に限り交換を実施。1日あたり数百枚程度。
2.と3.はつながっている話で、つまり、これまで当日券を新規に販売していた代わりに、未使用チケットから当日券への引き換えを行うということです。
そして、引き換えが始まった9月27日以降、引き換えを求める人が会場に殺到し、当日早朝には上限に達して列が打ち切られるという状態になっています。
この件、そもそも誰も被害を訴えているわけではない未使用チケットの話を、複数のメディアが根拠のない数字を挙げて問題だ、問題だと言い出し、博覧会協会が現状でできる範囲の対応を行ったところ、上限に達した後に会場に到着して引き換えができなかった人の不満をまたクローズアップして報じるということが起こっています。
つまり、本来何もなかったところにメディアが火をつけ、煽っているという、なぜそうなっているのかよくわからない事態になっているのです。
チケットは死んではいない。今でも新規予約は可能
未使用チケットについて産経新聞が「死にチケット」、読売系メディアが「死に券」というインパクトの強い言葉を使って表現していますが、10月3日の時点で、未使用チケットは死んではいません。予約枠は激しい争奪戦になってはいるものの、「死」という強い文字まで使って表現するのは明らかに過剰です。
未使用チケットで予約を行う方法は、大きく分けて2つあります。
まずはキャンセル待ちです。来場予約がキャンセルされたら、その分は新規に予約が可能になります。実際には、キャンセルされたのを確認できた段階で予約しようと操作しても、操作を終える頃にはもう取れなくなっていることがほとんどなのですが、それで取れたという人もいるし、可能性はゼロではないということです。
より現実的なのは、毎日7時ごろ(時間はある程度変動あり)に、2日後の予約枠が一定数開放されるのを狙う方法です。予約システムが多数のアクセスを同時に処理できる性能がなく、アクセスの順番待ちになってしまったり、エラーで予約できないことも多々あるため、まずそこにたどり着くのが大変ですが、開放された直後にエラーなく操作できれば、それなりの確率で予約を取ることができます。
今、新規予約が困難になっているのは未使用チケットでも、使い古した通期パスでも同じです。産経や読売系の表現は、実態に即した適切な表現ではない、ということは指摘させていただきたいと思います。
「未使用チケットでも予約できる」ということについては、万博について特集してきたWebメディアですら誤って「通期パスでのみ予約できる」と書くなど、正しく認識されていないことが残念です。このあたりにも、マスメディアによる「死に券」という表現の影響があるのではないかと考えてしまいます。
もともと、この毎日朝7時の予約枠の開放は、Osaka Metro中央線での来場者が想定よりはるかに多く、中央線からの入場に使う東ゲートが混雑しているという問題への対応として、6月16日来場予約分から実施されてきたものです。
それが、今では新規に来場予約を行えるほぼ唯一の手段となっているのは、開幕から常にさまざまな形で変化し続けたこの万博を象徴しているような事例だなと思ったりもします。

大阪・関西万博のチケットの特殊な考え方。「来場予約の権利」の購入
本来、チケット購入時に「払い戻しはしない」と書いてあれば、来場者の都合により利用できなくても払い戻しはしません、で済む話なのです。
今回、なぜか燃えている理由はおそらく、万博のチケットの形態が少し特殊で、それが理解されていないためでしょう。
まず、今回の万博で販売されたのは、入場する権利ではなく「来場予約をする権利」です。1回券(1日券、平日券、夜間券など)の場合は1回分だけ来場予約をして入場することができます。予約した日程は3回まで変更が可能です。
通期パスは同時に3日まで来場予約ができて、会期末まで繰り返し使用できます(当初はいろいろな制限がありましたが、開幕直前に撤廃されました)。
夏パスの場合は同時に2日分の予約ができ、繰り返し使用できるものの、予約可能な日は7月19日から8月31日までという制限がありました(当初の制限が撤廃されたのは通期パスと同様)。
チケットを買うだけでは入場確約にはなりません。来場予約をして初めて確約になります。
あくまで「予約をする権利」でしかなく、しかも予約は先着順です。権利をいつまでも行使しなければ、いつかは使えなくなったとしてもそれは当然の話です。
未使用チケットの数を考慮した予約数の管理は可能なのか
「未使用チケットがあるなら、それがいつでも使用できるように予約状況を管理すべきだ」という主張もあります。
でも、それをやるとどうなるでしょうか。
現実には、9月16日~17日ごろに来場予約が殺到したといわれ、閉幕までの予約枠はその時点で埋まりました。
でも、未使用チケットが仮に100万枚あるとして、その分の予約枠を常に確保しておかなければいけないのだとしたら、もっと前の時点で新規予約を打ち切らないといけなくなります。
そして、仮に一日の上限が20万人だとしたら、会期の最後の方は「来場予約された5万人」+「未使用チケットのために確保した15万人分」というような形で、実際に来場できる人が大きく減ってしまう日が出てきます。
こんなことがあっていいはずはなく、今回の販売形態において、未使用チケット数を考慮した予約数の管理は成り立たないのです。なのに、マスメディアも、メディアに煽られて協会を批判する人たちも、それが成り立つはずだと思い込んでいる。ここに根本的な問題があるように見えています。


追記
はてなブックマークで、いい例えをしてくださった方がいました。
人気ラーメン店が「前売りチケット」をネット販売して、チケット持って並んでた客に「スープ売り切れ、あなたの権利は行列並ぶだけで、ラーメン食うこと確約してない」って言うようなものってことか。情弱殺しね。
なるほどと思いましたが少し違います。
人気ラーメン店の入口で食券を買ったものの、「まだ微妙にラーメンの気分じゃない」と、席に着いて注文せずにそのまま店を出た。夜になってラーメンが食べたくなったので店に行ってみたら、スープが切れてすでに閉店していた。
という方が今回の件に近い例えだと思います。
*1:「公式チケットサイト」と限定しているのは、コンビニや旅行代理店などでのチケット販売、入場確約の旅行ツアーなどは、各社に在庫があれば行われる、という意味だと思います。