
4月13日に開幕した大阪・関西万博。
期間中いつでも入場できる「通期パス」を買ったので、こまめに訪ねていろいろと巡りたいと思っています。
8度目の訪問は5月6日。4連休の最終日となりました。この日は天気が微妙でどうしようかと思っていたのですが、昼から雨がやみ、どうも19時ごろまでは持ちそうな感じだったことと、夜に用事ができたため、20:30から予約していた水上ショー「アオと夜の虹のパレード」はキャンセルして、夕方ごろまでをめどに行くことにしました。
入場は13:30ごろ。この日は悪天候のせいか来場者も少なめで、その分待ち時間なくいろいろと回ることができました。

フィリピンパビリオンにオープンしたテイクアウトショップ
入場したらまずは昼食です。以前、フィリピンパビリオンを訪ねた時には料理のテイクアウトの店はまだ準備中だったのですが、その後オープンしたとのことで訪ねてみました。
注文したのはバム・イ・ギサド(BAM I GUISADO)(1,900円)とウコイ(UKOY)(800円)、そしてココナッツジュース(BUKO JUICE)(700円)の3品。

バム・イ・ギサドはビーフンに豚肉やサラミやエビ、野菜などを加えて炒めたもの。日本でよく売られている焼きビーフンに近い感じですが、味付けが東南アジアテイストでした。
ウコイは、パリパリした細麵ベースのかき揚げという感じ。カボチャやサツマイモと思われる細切りも含まれているので、ホクホクした甘みがありました。1個が一口大の大きさなので、スナックとしてつまむのに適した形になっています。
ココナッツジュースは名前の通りですが、ココナッツらしい瑞々しさがある風味です。なんかストローがやけに詰まると思ったら、中に白く細かい果肉が入っていました。なお、ココナッツはフィリピンではブコ(BUKO)と呼ばれるようです。
日本でよくある料理と似ているけど、ちょっと違う東南アジアらしさ。そんな感じの料理を楽しめました。
「凍ったまま食べられる」というより「凍らない」今川焼
そこから西へ歩いていき、冷凍食品のニチレイフーズが出展している「テラスニチレイ」で、「凍ったまま食べられる」と宣伝していた今川焼を購入しました。店内利用は7~8人ほど並んでいましたが、テイクアウトならすぐに注文ができました。



今川焼の焼き印は5種類あるそうです。
「凍ったまま食べられる」というのはどういうことかと考えていて、なんとなく、カチカチに凍っているのではなく生地がシャリシャリした感じで、シャーベットに近いような感じで食べられるのかな? などと思っていました。
そして一口食べてみて、氷の食感がまったくないのでむしろ拍子抜けしました。でも、とても冷たいので夏に食べるスイーツとしてはすごくよさそうです。
要は、「凍ったまま食べられる」というより、「冷凍庫でも凍らない」今川焼ということなのだと思います。
後で調べたら、生地も餡も凍りにくいようにしているのだとか。
「大地の広場」近くの長屋パビリオン巡り
大屋根リングの西側の方にある、「大地の広場」と呼ばれる広場前には、博覧会協会が建設した長屋のような施設に、国や団体が出展する「タイプB」のパビリオンが並んでいます。この日はこの辺のパビリオンはほとんど待ち時間なしで入ることができたので、一気に巡ることにしました。
工芸品メインのカンボジアパビリオン

カンボジアは工芸品を中心に民族性を強く打ち出した展示でした。
最初に牛や漁業の場面を表現した作品があり、そして出迎えるのはヒンドゥー教のシヴァ神とビシュヌ神の立像。中央にはちょっと庭園風になったスペースがあり、コの字型の回廊を進んでいくと、後半は織物や金属加工などの多様な工芸品の展示があります。
全般的に、人々の暮らしと宗教、そこから発達した数々の工芸、といったストーリーが描かれていたように思います。









最後には、日本の不動産開発会社(谷忠)の現地企業が建設した、カンボジアで最も高い333mの超高層コンドミニアム「J-Tower 3」の模型が展示されていましたが、これはまあおまけみたいなものですね。

「光」をテーマにしたアルジェリアパビリオン

アルジェリアはアフリカ大陸の北端、地中海に面した国で、国土の大半はサハラ砂漠です。そうした国のさまざまな特徴を映像で紹介するのがメインです。
パビリオン外観の柄は面白いなと思ったのですが、内部の展示とはあまり関係がなさそうな感じでした。映像を見るだけだとちょっと印象には残りにくい感じです。


緑のカラーがすがすがしいラトビア・リトアニアパビリオン

バルト海に面したラトビアとリトアニアが共同で出展するパビリオン。イメージカラーはすがすがしさを感じる緑です。
内部にあるパネルを操作すると、数種類の木をラトビアやリトアニアに植えられるのだそうです。万博会場で操作された数に合わせて、実際に植樹も行われているのだとか。
水滴がついたパネルに向き合い、思うまま自由に描くことで心をリラックスさせる、的な場所がありましたが……。雨の日のガラス窓と変わらんやんと思いつつ、もしそういう効果があるとすれば、緑色のおかげなのかもしれないですね。
全部見れたわけではないのですが、インタラクティブな要素が多いパビリオンだったと思います。



理念を前面に打ち出したEU(ヨーロッパ連合)パビリオン

EU(ヨーロッパ連合)は、西ヨーロッパ諸国を中心とした連合体で、統一通貨としてユーロがあり、連合としての議会を持っているなど、国家間の協力関係というより、それらの上位に位置する連合体であるのが特徴です。内部は天井の板をつけずに空間を広く取り、そこに植物や円形のオブジェなどを配置して立体感を感じる演出となっています。
内部のところどころに配置されたデジタルディスプレイは、おそらく手前の植物に取り付けられたセンサーと連動していて、葉を触ったりするたびに、植物が成長するようにいろいろな情報が表示されていきました。
全体として、EUを構成する国や統一通貨ユーロみたいな知識は前面に出さず、理念のようなところを押し出す展示でした。



屋外のキッチンカーでは、「EU FOOD FESTIVAL」として、ヨーロッパの食材と日本の食材を組み合わせた料理の試食が行われていました。1時間おきに、毎回異なる料理の配布が行われていたようです。
15:30になって配られたのは、ゴーダチーズと大根の浅漬けを組み合わせたもの。チーズのまろやかさと、大根の清涼感、浅漬けの酸味が調和していて美味しかったです。

バングラデシュパビリオンはまた改めて
バングラデシュパビリオンについては、後日、カントリーデー(5月11日)の式典を見たので、そちらとまとめて書きました。

2026年ユース五輪開催地、セネガルパビリオン
セネガルパビリオンの外観は、建物上部の看板を左から見るとライオンの絵が、右から見ると自然風景が見えるのが特徴です。



セネガルは、アフリカ大陸の北西部、大西洋に面した国です。入口から入ってすぐに見えるパネルに、「公正で豊かな、そして揺るぎない価値観に基づいた主権国家であるために」とあり、その「主権国家」という言葉がちょっと気になりました。
「主権」とは、国家においては領土内の意思決定を他国から独立して行うことができる権利のことです。日本の場合は、1945年に戦争に敗れ、1951年にサンフランシスコ講和条約を締結するまでは主権がない状態でした。この言葉を強調するということは、そうでない歴史があるんだろうな、という気がしたのです。
セネガルの歴史を調べてみると、1960年にフランスから独立して植民地支配を脱し、その後は主権を保ち続けています。近隣国との国境紛争を抱えたり、また近隣国で政情不安が続くといった状況の中では、比較的安定した政治を続けているようです。2050年という少し先の未来まで、主権を守り抜いていく、という意思表示なのかもしれません。
実は、このパネルのすぐ近くにそうした歴史についてのパネルもあったようなのですが、大半の展示が英語のためその場ではちゃんと読めておらず、大事なところを撮ってなかったのが残念です。
後半には大きな芸術作品や木工品、布製品などの展示がありました。この辺の色彩感覚に、国や地域の特徴がよく表れるように思います。





セネガルの首都ダカールでは、2026年にユースオリンピックが開催されます。これは15歳~18歳を対象としたオリンピックで、対象人数が少ない分、小規模な都市でも開催できるということらしいです。当初は2022年に開催予定だったのが、コロナ禍の影響で4年延期されたのだとか。
内部のデザインが印象的なチリパビリオン
最初に見た時には結構長い列ができていたのですが、周辺の他のパビリオンを一通り見て、改めて見てみるとすぐに入れました。ちなみに、外観は撮り忘れました。
外周のパネルを縦のラインで区切り、中央の木造の骨組みと織物を組み合わせた構造物も縦のラインを強調したデザインで、そういった面が印象に残りましたが、展示内容はさほど目新しい物はなかったです。
たまたまタイミングが合って、果物を使ったスムージーの振る舞いがありました。



神秘的な空間で、ガラス作品と民族音楽に触れるハンガリーパビリオン

16:00から予約していたハンガリーパビリオンへ。パビリオン前には少し早い時間に到着したのですが、係の人に、予約時間にはまだちょっと早いことを話したら大丈夫だということで、10人ほどだった予約済みの列に並びます。1回15分で、予約済みの人を入れた後に、空いている分だけ予約なしの人を入れるという運用をしている感じでした。
入るとまず目にするのは、ガラスによって自然を表現した神秘的な作品。1枚のガラスに描かれているのではなく、立体的に重なって配置されたガラスに描かれているように見えます。特に「水を満たす」が描き出した奥行きのある光景に感銘を受けました。




その先にあるステージの前室は、たくさんのグラスを吊り下げたようなシャンデリアが美しく、前のショーが終わるのを待つ間も飽きずに眺めていられます。

そして次のステージでは、中央にハンガリーの衣装に身を包んだ女性が微動だにせず立っています。最初は人形かなと思っていたのですが、音楽が始まるとそうではないことがわかります。
最初は穏やかな曲、そしてアップテンポな曲に変わり、光の表現とともに広げられたショーは、短いながらも強く印象に残りました。
全般的に「闇を照らす光」といった神秘性が感じられる素晴らしい演出でした。



ショパンの歌曲やピアノ曲が披露されたステージ
その後、17:30からは東ゲート近くのポップアップステージで、ポーランドのソプラノ歌手アルドナ・バルトニクさんと、日本人ピアニストの川口成彦さんによるステージへ。普段からお二人で演奏活動をされているようです。
言語がポーランド語であるため、日本ではあまり演奏される機会がないというショパンの歌曲を中心に、数多くの曲が披露されました。
川口さんは1843年に作られたという、ショパンが愛したピアノ(プレイエルというフランスのメーカーのもの)を持ち込むことを考えていたそうですが、野外ステージのため断念し、その音色を再現したというKORGの電子ピアノでの演奏となっていました。
ショーが行われた東ゲート近くのポップアップステージは、よく見るとステージを覆うドームの中にも木が植えられていて、この自然に取り込まれたようなステージでショパンというのもまた一風変わった趣があるように思います。
川口さんは「屋外で演奏するのは高校の文化祭以来」と仰っておられましたが、強くはないものの風があり、譜面がめくれて少し苦労されているような場面もありました。






ショーは、アルドナさんによる歌唱と、川口さんのピアノソロ演奏を織り交ぜて進んでいきます。
あまりショパンの曲に詳しいわけではないのですが、途中にはよく知られたワルツ(華麗なる大円舞曲)も演奏され、ショパンの世界を堪能した1時間強のステージでした。
マレーシアパビリオンで夕食、そして楽しいダンスショー
ステージが終わったので、夕食を食べて帰ることにし、ステージから近くにあるマレーシアパビリオンに行ってみました。
買ったのはミーゴレン・カンポン(1,728円)とアイス・テータレ(800円)。ミーゴレンは日本でも名前が知られているマレーシア風焼きそばですが、「カンポン」とは「田舎風」みたいな意味のようです。唐揚げとポテトが付け合わせになっています。
テータレ(ミルクティー)はアイスで。以前にホットのテータレを飲んだ時とは違い、茶葉の瑞々しい香りが強く感じられてこちらの方が好みかなと思いました。

パビリオンに入った時、表のステージでは何も行われていませんでした。
マレーシアパビリオンはいつも何かしら踊っているというイメージがあり*1、さすがに天気が悪いから休みなのかなと思っていたのですが、パビリオン近くのベンチで食べ終わった頃にステージが始まりました。この日は(いつもそうなのかどうかわかりませんが)男女がペアになった情熱的な踊りがメインで、そして最後は来場者も一緒になってのダンス。
いつ見ても楽しく、そして来場者を巻き込んでいく陽気さは、これこそが世の中を平和にするのではないかと思ってしまいます。もちろん、世界はそんなにシンプルではないのですが。




5月6日のまとめ:夢洲で世界を巡る旅へ
この日体験したパビリオンやイベントを振り返ると、下に列挙したように、広い世界の表現や価値観に触れていたことに気づきます。こういうのも万博ならではの体験なのでしょう。
- ヨーロッパ:EU、ラトビア・リトアニア、ハンガリー、ポーランド(イベント)
- 南米:チリ
- アフリカ:アルジェリア、セネガル
- 東南アジア:フィリピン(昼食)、カンボジア、バングラデシュ、マレーシア(夕食・ステージ)
演出に関しては、刺さるものもあればいまいち刺さらないものもあります。特に、映像を見るだけ、というような展示は結構スルーしやすい感じ。ただ、そこで表現されているものから、それぞれの国の価値観や、今その国が重視しているものを知るのも貴重な学びだろうと思います。
*1:例えば5月3日は昼も夜も踊ってました。