上記の記事の続きになります。
草津温泉といえば「湯もみ」。木の棒でお湯をかき回すシーンは、私のように特に温泉に興味がない人間でも知っていたりします。
草津の源泉は場所によっては100度近くなるそうですが、水を混ぜるのでは効能成分が薄れてしまうため、木の棒でかき回して空気と触れさせることで温度を下げるのが「湯もみ」だそうです。
湯治というのは、今まで、世間から離れて温泉地にこもり、心と身体を休めて気の赴くままに温泉に浸かり、温泉の効能による回復を期待するもの、だと思っていました。
草津には「時間湯」と呼ばれる湯治の方法があり、それは以下のようなものだそうです。(参考:草津温泉の湯治 時間湯オフィシャルサイト)
- 1日3~4回、決まった時間に入浴を繰り返す。
- 1回のルーチンは、まず「湯もみ」を20分ほど行い、湯温を48度程度まで下げる(それでも熱い!)。そして、熱湯に身体を慣らすために30回ほどかぶり湯をし、その後、湯長(湯治を取り仕切るリーダー)の号令のもと、一斉に湯に入り、3分間身じろぎをせずに我慢する。みんなで入っているという連帯感が、3分間耐える力になる。
- 時間湯を開始してしばらくすると、体質が変わり始め、熱湯によって皮膚のただれができ、体調の悪化も見られるようになる。それでも、「身体は湯で治す」という信念の元、湯長と相談しつつも入浴は続けていく。
- 45日ほど続けると快方に向かい始め、75日ぐらいで完全に生まれ変わった身体になる。長年の持病も快癒する。
もう、これは完全に修行です。身も心も休めてリラックスして湯に浸かる、というイメージを完全に打ち砕くものです。
今でも、一部の温泉ではこの伝統的な時間湯を継承しているそうです。
湯もみショーとキレッキレのゆるキャラ
さて、この伝統的な湯治法に由来する「湯もみ」を、草津温泉独特のショーとして上演しているのが「湯もみショー」で、毎日6回行われています。
詳しくはこちらをご覧いただくとよいかと思います。
- 午前の部:9:30・10:00・10:30
- 午後の部:15:30・16:00・16:30
下調べの時、この時間設定を見て、「なんで昼間にやらないんだろう、やってくれたら最終の特急に間に合うのに」などと思っていたのですが、結局、前の記事に書いた通り、「草津にやってきた人が、宿泊する前に湯もみショーを見る」もしくは、「チェックアウトした人が、湯もみショーを見てから草津を出る」という移動形態に合わせて設定されているということなのでしょう。
湯もみショーが行われているのは、湯畑を取り囲む一角にある「熱乃湯」という観光施設。
午後の部の入場券の販売は15:00からということで、その10分ほど前、数人が列を作り出していたのを見てそこに加わります(後で知ったのですが、ここは割と大事なポイントでした)。
15:00になると、2階の踊り場から午後3時を告げる笛が吹き鳴らされ、入場券の販売が始まります。
そして、購入したらそのまま、すぐ隣にある入口に通され、舞台へと案内されます。
観覧席は1階・2階あわせて250人程度入れるそうですが、用意されている椅子は早い者勝ちで、後で入ってきた人は立ち見になります。
つまり、入場券の列に並ぶというのは、そのまま椅子争奪戦に直結しているわけで(午前・午後それぞれ初回だけかもしれませんが)そういう意味では結構重要なのでした。
入場してから、開演までは何本かの動画が流されていたのですが、その中の、草津節をアレンジした「湯もみダンス」の動画にすっかり心を奪われてしまいました。
ゆるキャラの「ゆもみちゃん」が全然ゆるくない。被り物をしてこれだけのダンスができるというのは相当ただ者ではないと思います。
古くからの民謡を、骨格を残しながら、草津の魅力が伝わるようにアレンジするという意味でもとてもよいと思います。
三味線をベベベン、とかき鳴らしながら謡う民謡も、それはその当時の流行の形式であって、時代が変わっても受け継いでいくなら、当時の曲を尊重しつつも、今の流行に合ったものに積極的に変容させていくべきだと思います。
片岡鶴太郎が、草津の四季を描いたという絵の1つ。西の河原公園へ向かう道の途中に、片岡鶴太郎美術館が設けられています。
さて、いよいよショーが始まりました。このショーでは湯もみダンスはなく、伝統的な草津節、草津湯もみ唄によるショーになります。
「湯もみガールズは写真撮り放題、SNSアップし放題!」だそうです。
写真の左から2人目の子がかわいかったのです。
前半は、木の棒を左右に動かすだけの動きでしたが、観客の湯もみ体験を経て、終盤には水を大きくすくいあげる動きになり(大もみ)、最後に大きく水しぶきを上げて、ショーは終わりになります。
午後の部の3回のショーが終わるともう17時。
湯畑をはじめ、町はライトアップされ、昼間は開いていなかった飲食店や飲み屋がオープンし、草津温泉はいっぺんに宿泊者の街に変わります。
初めて訪れた草津温泉でしたが、その印象を一言でいうなら「温泉テーマパーク」という感じで、情緒を残しながらも活気に溢れた、楽しい空間でした。泉質とかはさっぱりわかりませんが、いて楽しいというのは重要で、全国的に有名なのも頷けると思いました。
さて、私が乗車券を買っておいた新宿行きの高速バス「ゆめぐり号」は17:30発です。バスターミナルの売店でお土産を買い、発車を待ちます。
車内は2×2の4列シート。車内後方にトイレがあり、充電用のUSBポートとWifiが使えるだけで、その他はこれといった特徴はありません。
普段、こういう時は鉄道一択なのですが、今回は
- 在来線で帰ってもバスと同じぐらいの時間がかかる。
- 長野原草津口と、新前橋か高崎での2回の乗り換えがめんどくさい。
- 来る時が新幹線だったので、往復とも新幹線はさすがに避けたい。
- いつもスマホの充電が少なくなって悩まされるので、充電できる移動手段はありがたい。
- そういえばバスタ新宿は行ったことがなかったので一度見てみたい。
と、もろもろ考慮した結果、高速バスを利用してみることにしました。
ただ、まあ、今回についていえば、関越道が事故渋滞で40分以上遅れた上に、隣席や周囲の利用客に恵まれなかった感じで、運が悪かったというか、やっぱりバスはやめときゃよかったと後悔することになりました。
次に同じようなケースがあったら、この時のことを思い出して鉄道にするかなあ…という感じ。
到着した3Fから2Fに降りたら、目の前にJRの改札がある、というのはありがたいですね。